第9話

「見つけたわ!…けど、二匹いるわね」

 人の頭くらいの緑っぽい塊が二つある、いや二匹いるわね。

 あんなに側に居て、ケンカしたりしないのかしら?


「何もしてないうちは近寄っても平気だぞ?けど、どっちかに攻撃した時点で両方から敵認定されるからな。気をつけろよ?」

 あら?ケンカどころか仲間思いなのね。いいヤツじゃない。でも、これから倒しちゃうんだけどね。


「気をつけるって、どうすればいいのよ?」

 ダンジョン初日の新人にも分かる様に、易しく、そして優しく伝えてちょうだい。


「一匹目を確実に倒したら、二匹目にやられる前にやれ。それだけだ」


「何だか適当ね…まあ、いいわ。やってやるわよ!」

 ずいぶんと大雑把だけど、ごちゃごちゃ難しい事を言われるよりはまだマシね。

 要するに速攻でやればいいんでしょ?


「スー、ハー、スー……えいっ!」

 一匹目は上手くいったわね。ナイフとは違って軽い衝撃が伝わってくるわ。

 二匹目も速攻で片付けるわよ!一匹目を叩いた反動で腕を振り上げて、そのまま二匹目に…


「えいっ!……上手くいったわね!」

 一瞬、縮こまって動き出しそうだったけど、間に合ったわね。


「いいんじゃねえか?スライム相手ならそれで充分だろ」

 ケイトの合格が出たわね。それは良かったんだけど…


「……変ねぇ」

 おかしいわね?このスライム、第一階層のと違うのかしら?


「何だ?何かあったか?」

 何かあったと言うか、どちらかと言うと何も無いと言うか…


「魔石が出ないんだけど…」

 出るはずの物が出ないのよね。


「ああ、それが普通だぞ?」

 えっ!そうなの!…でも、おかしくない?


「でも、朝は出たじゃない?」

 そうよ、朝はでたのよ。スライムを20匹倒して、20匹全部から魔石が出たのよ?


「朝がおかしいんだ。あれは多分、引率の奴がよっぽど運がいいんだろうな」


「運がいい人が周りにいると、私の運も良くなるの?」

 それなら運がいい人とお近づきにならないといけないわね。

 運がいいって大事よね。顔がいいだけじゃどうにもならなくても、運が良ければどうにかなりそうな気がするもの…偏見かしら?


「運が良くなるかは分からねえが、魔石は出やすくなるらしいぞ?」

 あら、そうなのね。そうすると今、魔石が出ないって事は…


「それなら、ケイトもそんなに運がいい訳じゃ無いのね」

 ケイトの運が良ければ、魔石が出てるはずだもの。私も人の事は言えないけどね。


「うるせーよ!次行くぞ、次」

 分かってるわよ。次のスライムは何処かしら?

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