第5話

「…ケイト、おはよう」

 ふぅ…ついつい、ごきげんようって言いたくなるわね…


「ああ、おはよう」

 朝なんだから、そんなに難しそうな顔しないで欲しいわ。


「…早くご飯食べに行こうよ」

 ご飯で良かったかしら?飯?飯がいいの?


「まあ…いいだろう」

 合格したわ!この喋り方でいいのね?


「やったぁ!これで今日はギルドに行けるのね」

 昨日は前を素通りしたものね。今日こそは冒険者になるわよ!


「まだ不安だけどな。考えなくてもその喋り方が出来るまで気い抜くなよ?」


「分かってるわよ!早く食堂行こう」

 冒険者になる前にしっかりご飯を食べておかないとね…やっぱり飯の方がいいかしら?


「しょうがねぇなぁ。ほんとに分かってんのかよ、まったく…」

 何をぶつぶつ言ってるの?早く行くわよ!




「はぁ…はぁ…やっと着いたわ」

 ギルドから遠い宿に泊まったんだもの、宿からギルドも遠いわよね…ちゃんとご飯食べといて良かったわ…


「大丈夫か?お前…まあ、体力はレベル上げればつくからな。さあ、行くぞ」


「ここが…冒険者ギルド…」

 思ったより綺麗なところね。いえ、ピカピカで埃ひとつ落ちてないって訳じゃ無いんだけど…もっと、汚れてて騒がしいところかと思っていたわ。


「ほら、受付で冒険者登録するぞ。ゆっくりしてる暇はねえぞ」

 待って、ケイト。置いてかないでよ。


「冒険者ギルドへようこそ。本日はどういったご用件でしょうか?」

 あら?綺麗な人…よく見たら窓口の人は皆んな綺麗ね。ギルドの決まりなのかしら?


「こいつの冒険者登録を頼む」


「お客様はよろしいですか?」


「俺は……冒険者だ」

 そう言って取り出したカードを受付の方に見せてるけど…ケイト、冒険者だったのね。


「Sランク!失礼しました」


「気にしなくていい。それより書類をくれ」

 勝手に話が進んでいくわね。何も分からないから助かるけど…


「はい、こちらにご記入をお願いします」


「メグ、その書類の書けるとこだけでいいから書いとけ」

 この書類ね。えーと、名前と出身地と…


「引率が空いてれば頼みたい。空いてる奴はいるか?」

 引率?ダンジョンに行くには引率がいるのかしら?あ、書類を書かなきゃ…


「一人空いてますが…」


「何かあるのか?」


「今日が初めてなんです」


「あー、初めてか…まあ、いい。引率を頼む。俺もついていくのは構わないよな?」


「それは構いません」


「出来ました!」

 書き終わったわ。これでいいのよね?


「では、書類と登録料を頂きます…少々お待ちください」

 登録料はケイトが払ってくれたわ。そういえばタナカ商店でも宿でもお金払って無いわね。今まではそれが当たり前だったけど…これからは自分で払える様にならなきゃ。

 …でも、今は貸しといてください。いつか返すから…


「お待たせしました。こちらのカードに魔力を流してください」


「これでいいの?」

 触手以外のスキルは無いけど、魔力を動かす練習はしといて良かったわ。


「おめでとうございます。これで冒険者登録完了です」

 これで…これで私も冒険者ね!さあ、私は生まれ変わるのよ!頑張るわ!

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