煙草 矛盾
「そろそろ辞めたら?」
ここ数年、彼が煙草でコホコホと咳き込むようになりその度にこの台詞を吐いてきた。
「辞めれるもんならもうやってないよ。」
決まり文句を返してまた煙草の先は赤く光る。
「最近はそんなに吸ってないし。」
煙を吐いてからそう続けた。
「でも今日はここまで。」
もう1本取り出そうとしたところで灰皿を没収した。彼は灰皿が無ければ吸わない律儀な人間であるという事を利用した。もう1本と懇願する彼にはのど飴を差し出してやると渋い顔をして受け取った。
でも実は私はこの時間が好きだ。煙草を吸って落ち着いた声で喋る彼が好きだ。煙を吐く時の大人びた顔が好きだ。格好つけて煙草を吸う彼が好きだ。そんなジレンマを知らずに彼は口の中の飴玉をコロコロ転がして遊んでいる。
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