1ページ小説

鷲山電気屋

秋 帰り道 焼き芋

 女心と秋の空って誰かが言った。女心は秋の天気のように移り変わることを皮肉っぽく言っているらしい。全く同意しかねる。女心は金輪際見えてこない。移り変わりを感じる以前の問題だ。だから不思議で仕方ない。


「また遠く見てる。」


 こうして自分に好意を向けてくれる女性がいることが。彼女は焼き芋を半分に折って少し大きい方をこちらに寄越した。


「さつまいもって、栗に味が近いことから栗を九里くりとして八里半っていうらしいね。」

「栗より美味しい九里四里くりよりで十三里とも言うらしいよ。」

「じゃあ二人で食べる時はそっちにしよう。」


 熱い熱いと言って焼き芋を齧る君は夕陽に照らされ赤く染まる。雲ひとつない西の空は、天気がしばらく変わらないことを示していた。

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