もう一度大怪盗目指す舞月の怪盗ライフ

#I

プロローグ 異世界へのゲートを潜ろうか!


 この世界では、魔法が少し使えたりする。ファンタジックで、物語に出てくる勇者や大魔法使いの真似ができてとても楽しかった。


 今から行く世界では、魔法がなく、本も物語も今の比じゃないくらい多く、娯楽も沢山あって快適に暮らせるのだとか。ちょうど新しい、自分がまだ見たことない世界を見たくなった所だ。


 ワクワクしてしょうがない。


 怪盗バトルで一時間ほど前まで争っていたところで今はまだ根城にいる。あちらの世界に行くための準備中である。汗を洗い流すためにお風呂に入った。


「ついにこの世界ともおさらばする時が来た!」


 長年住んでいたわけだが、心残りがあるとすれば相棒ともさよならすること。シャワーで汗も心残りも流そう。そしてワクワクで塗り替えるのだ。


 火の魔法で水を四十度ほどに温める。頭からかぶったお湯は身体を伝って汗と一緒に流れ落ちていく。


「気持ちよかった!待ってろ新しい世界!」


 心も体もさっぱりしたところでお風呂を飛び出した。必要最低限の物は持ち込みが可能と言われた。武器はナイフや剣は、ある程度の本数は持っていけるとのことだ。


 この世界で武器は所持可能。あちらの世界で武器を所持していても問題ないのかと思ったが、怪盗バトルの主催者が言うには何とかなるらしい。


 ナイフ二本と足の付け根から膝下くらいまでの長さの剣を二本、計四本を装備する。三日分の食料と水を持って勢いよく扉を開ける。お得意の走りでゲートまで疾走していく。木の枝や岩を避けながら走る。完全には避けられていなかったようで葉がカバンや頭についている。


 数分後にゲートに到着した。


「お待ちしておりました、イリス様」


 ゲート前にいたのは主催者だった。


 名乗り忘れていた。私の名前は「イリステン・バレンシア」略してイリス。よく独り言を言ったりする。


「今からイリス様には、異世界に通じるゲートを通ってもらいます……その前に、あちらで使えるお金と、身分証明書を差し上げましょう!」


「助かるよ」


 お金五十枚と身分証明書を受け取り、カバンに放り込んだ。なんと書いてあるかは読めない。


 この主催者はあっちの世界に行ったことあるのかという疑問もワクワクによりどうでも良くなってしまう。


「注意事項はありません。それではイリス様、どうぞ異世界をお楽しみください!」


 ゲートに足を踏み入れる。ゲートの中は薄暗くて寒い。一定の間隔で天井に常夜灯がついている。常夜灯に照らされているところだけ白色の床が見える。少し不気味な場所だが何も問題はないだろう。


 こうして私の異世界ライフが始まった。

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