第25話 マラソン中の小話
ライトお姉ちゃんのエチエチエピソードは封印ということになりました。
わたしたちは40階からお姉ちゃん提唱の『よーいドン! 先に階段についたら1勝。勝ち星の多いほうがエンディングトークで相手に1つだけ好きなことを要求できるゲーム』というのをやることにした。
でも、エッチなのはいけないと思います。
* * *
「お姉ちゃん速すぎズルい」
55階を過ぎたところだけど、今のところ1勝15敗なんですけど……。もうぜんぜん無理なんですけど……。
「実力ですよ。ズルはしてないです」
「ズルー。妨害してくるじゃーん」
「それも作戦のうちです」
ライトお姉ちゃんは勝負事になると絶対手を抜かないからなあ。
「お姉ちゃんが勝負事になると意地汚くなるエピソード語っちゃおうかなー」
チラチラ。
よーし、とくに強い反対はなさそう。
「この間ねー、ちょっと日本に帰る機会があったんだけど、1時間ほど空き時間があったのね」
“お、なんだ?おもしろい話?”
“≪京都に行ってみたい≫”
“京都はいいぞー。ぜひ一度はおいでやす”
“アクア様もたまには日本に帰っておいで”
「お姉ちゃんがね、『せっかく日本にきたのですから、日本っぽい遊びがしてみたいです』って言うから、カラオケに連れて行ったんだ。まあ、日本っぽいでしょ?」
“日本が発祥の地なんだっけ?”
“≪カラオケ!我が国にもあるぞby合衆国≫”
“≪カラオケ週3でいくよ≫”
“≪アニソン縛り≫”
“外人ニキにもアニメオタクおるんかw”
“≪カラオケは良い文化だ≫”
「わりと世界でも普及してるのね。あ、そうそう、それでね。カラオケって採点システムがついてるじゃない? あれで勝負しようってなったんだけど」
「あれはアクアが!」
「わたししゃべってるから、お姉ちゃんは静かにしてて!」
“オチまで聞いてからお姉ちゃんの言い分を聞こうじゃないかw”
“それでそれで?”
“≪どんな汚い手をつかったんだい?≫”
“きめつけw”
「わたしが92点出したらさー。お姉ちゃん、なんて言ったと思う?」
“≪この機械は壊れている≫”
“プロが歌うと点数が伸びない”
“お姉ちゃんはアレンジして歌ってるから”
“≪簡単な曲を選ぶのはずるい≫”
“今のは練習で次からが本番”
“その曲ならお姉ちゃんは93点出せる”
みんな一生懸命考えてくれてる。
いいねいいね。
ライトお姉ちゃんのほうを見ると、つまらなそうな顔をしながら前だけを向いてダッシュしていた。
ふふ。かわいいんだから。
「ブブー。今のところみんな不正解だよ。さあ他にいないかなー?」
“店員を買収している”
“機械をハッキングしている”
“点数を書き換える魔法を使った”
「そんなことできるわけないじゃないの! もっと違う方向だよ」
“≪日本のカラオケだから日本人が有利≫”
「あ、それ正解に近いかも!」
“アメリカのカラオケなら自分が勝つ”
“日本語の歌は点数が出やすい”
「それおまけで正解にしちゃう! 正しくは、『日本語は母音が少ないから機械で採点すると点数が高く出やすいのでズルい』でした! 正解した方拍手ー!」
“なるほどねー”
“一理ありそうではあるなw”
“お姉ちゃんも日本語で歌えばいいじゃないw”
“≪ライトの日本語はきれい≫”
“ライトお姉ちゃんの歌聞いてみたいな”
“どんな歌を歌うの?”
「あれはアクアが採点システムのことを教えてくれないから、お姉ちゃんが音域の広い曲を選んでしまったことが敗因です。もう一度勝負したら次は負けませんよ」
「そうねー。お姉ちゃんは歌うまいもんね。今度カラオケ配信する? みんなも聞きたいよね?」
“聞きたい!”
“世界No.1の歌声をぜひ”
“アクア様も歌う……ってさんざんVの配信で歌ってるか”
“≪ライトの美声を聞かせてくれ≫”
「アクアがSランク冒険者に認定されたら、お祝いの歌を歌いましょう」
ライとお姉ちゃんは一瞬だけカメラ目線でにっこりと笑った。それからすぐに無表情に戻ってマラソンに戻る。
でもそれはちょっとうれしいかも。
「みんな聞いた? わたしがSランク認定受けられるように応援してね!」
“応援してる!”
“実力は十分Sランクだと思うよ”
“最近Sランク認定者って出たっけ?”
“≪5年ほど出ていない≫”
“最後が日本のタローさん?”
“そうなると、次は日本以外から出る暗黙の了解があるとか?”
“さすがに実力で決まるんじゃないか?”
“≪世界の冒険者たちを見てるが、今一番注目はヒイラギアクアだよ≫”
“外人の有識者ニキのお墨付きだ”
「みんなありがとうね! わたしも早くSランクになるようにがんばるからね!」
ホントにがんばるよ。
ここのダンジョン主はわたしが仕留めるね!
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