第22話 ライトお姉ちゃん……もう少しで30歳!

 胸の大きさについては、結局ライトお姉ちゃんの悪質な冗談ということがわかり、罰として、夜のデザートは抜きの刑に決まりました。


「胸の大きさじゃないとしたら……なんだろ……何が足りないのかな……」


 強さ、知名度、世界各国を回って高難易度のクエストも受注しているし、貢献も足りていると思う。

 あとは何が……。


「最終的な信頼感、ですね」


 ライトお姉ちゃんが器用に箸を使って、西京焼きを切り分けていく。


「最終的? 信頼感?」


 とても抽象的。

 どういうことなんだろう。


「これはもしかしたら、これは本当にお姉ちゃんが悪いのかもしれません……」


「お姉ちゃんが悪い? もうちょっと説明して?」


 何を言っているのかちんぷんかんぷん。


「マイカと私はペアを組んでいますね」


「うん」


「では、私たちの役割分担を考えてみてください」


「役割分担……。えっと、わたしが崩して守って、お姉ちゃんがとどめを刺す?」


「そうです。ほとんどの場合このパターンで戦っていますね」


「うん、それが効率よくモンスターを狩れるからね」


 何も問題ないような?


「効率が良いのはすばらしいことです。でも、マイカ単体の実力を見ようとした時、能力は高いのにアシストしかしていない人。お姉ちゃん以外と組んだら戦えないのではないか、と思われているかもしれない、という仮説が立てられます」


「あー、言われてみればそういうふうにも見えるかも……」


 お姉ちゃんが強いから、最後はお姉ちゃんが処理するように立ちまわっている。このペア構造が問題なのかもしれないってことなのね。

 そっかあ。なるほどね。


「そこで、次の審査までに完全なソロ討伐の実績を作っておくのが良いと思っています。お姉ちゃんに匹敵するくらいの殲滅力を持っていることを証明しましょう」


 ライトお姉ちゃんはたくわんを口に入れ、食後の日本茶をすすっていた。もう朝食食べ終わってる! 早い!


「なるほど! それで今日の予定が空白なのね。急いで準備するね!」


 わたしは慌ててご飯を食べ始めた。

 新米おいしい!


「それは違います。お姉ちゃんも詳細を聞いていないクエストの依頼があったので、このあとイングランドへ飛びますよ」


「緊急クエストかな? イングランドね、了解」


「内容次第ですが、マイカが1人で依頼を受けるのが良いと思います」


「できるならそうしたいかも! どんなのかなあ」


「まずは話を聞いてからですね。もちろん一緒に行きますから安心してください」


「ありがとう! イングランドの協会にかっこいい人いるといいね?」


「マイカ……お姉ちゃんは結婚相手を探して世界を回っているわけではないですよ」


 そう言いながらため息をついた。


「だってー。お姉ちゃんもう30歳になるし、そろそろ良い話があったほうがうれしいなって」


「お姉ちゃんはまだ29歳です!『20歳の頃から見た目が変わらないですね』とみんな褒めてくれますから、まだまだいけます!」


 ライトお姉ちゃんがテーブルをバンと叩いて立ち上がる。

 目が怖いよ……。年齢のこと、めっちゃ気にしてたのね……。


「そ、そう……。でもお姉ちゃんの恋人って一度も見たことないし、わたしと毎日ディナーも一緒だし……軽い気持ちでたまには誰かとデートしたりしないの?」


 義妹として心配だよ……。


「いつか運命の人が現れたらお姉ちゃんもデートしようと思います」


「え……お姉ちゃんって……これまで誰かとお付き合いしたりとか……」


「運命の人が現れたら考えようと思います」


 静かに日本茶をすする。……それ、何杯目?


「お姉ちゃんあんなにモテるのに……。芸能人やムービースターにも求婚されてなかった?」


「彼らはそうするのが社交辞令なんですよ」


「そんな感じじゃなかったけどなあ。わざわざ毎日家にきたりするかなあ」


「マイカが1人前になるまでは」


「またそれー? わたしは大丈夫よ。もう立派な大人なんだから」


 料理だってできるし、掃除や洗濯もできる。英語はしゃべれるようにならないけど、たいていのことは1人でできるようになったもん。


「お姉ちゃんがついていますから、大丈夫ですよ」


 そう言っておいしそうに日本茶をすすっていた。


 お姉ちゃん……それでいいのかな……。日本茶にお漬物って……もうやってることおばあちゃんだよ……。誰か良い人いませんか?

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