第18話 コボルトリーダーはどこ?

 5階のコボルトリーダーは、正直拍子抜けだった。


 違うの。溜め斬りの威力を落とす練習をしようと思っただけなの……。

 それが半分くらいの力で攻撃したところ、あっさりと吹き飛んで跡形もなくなってしまって……。


「ごめんなさい……。なんか盛り上がりどころを作れず……」


 ドローンカメラに向かって謝罪会見をする羽目に。

 どうしてこうなった……。


“コボルトリーダー弱すぎわろたw”

“相手が悪すぎたねwww”

“練習台にすらならないw”

“もっと強い敵連れてこーい! ワクワクすっぞ”

“サイヤ人かw”

“ライトさんの顔www”


 ハッとしてライトお姉ちゃんのほうを見る。

 まぎれもなくあきれ顔だった。


「お姉ちゃんごめん……」


「アクア様……強くなりすぎましたね。もう大剣は一区切りにして、次の武器にいきましょうか」


「はい……」


“大剣卒業早いw”

“この調子でいけば1週間も経ったらやることなくなりそうw”

“次は何にする?”

“武器の基礎講座としてめっちゃ参考になるからな”

“違う期待が膨らんでるww”

“アクア様の上達ぶりが異常すぎてそこは参考にならんなw”


「次は盾が良さそうですね」


「盾、ですか?」


 意外な選択だと思った。

 遠距離攻撃系の武器か、攻撃魔法を予想していた。

 なんでだろう。


「アクア様はこれまでの速さに加え、圧倒的なパワーを手に入れました」


「はい」


「次に必要なのは何か。そう、絶対的な防御です」


 なるほど、言っていることはわかる。

 でも。


「わたし、これがあるので防御は足りていると思ってて」


 アクアグローブとミスリルグローブを見せる。

 そう、アクアグローブで魔法攻撃を吸収し、ミスリルグローブで物理攻撃を吸収できる。


「それはあくまで双剣を使う時の簡易的な盾にすぎません」


 まあ、たしかにそうだ。

 アクアグローブは大魔法の吸収ができることは確認しているけれど、ミスリルグローブがどこまで実戦に耐えられるのかは検証できていない。


「同じ素材でも体を隠せるほどの大盾を持てる。これに勝る安心感はありませんよ。何よりパーティー戦になった時に自分以外の誰かを守ることができます」


 自分以外の誰か。

 大規模討伐になった時、わたしだけが助かっても仕方がない。討伐に参加する人全員と生きて帰る。そしてもえきゅん☆を奪還しなければいけない。


「ですが、盾はお姉ちゃんも持っていないので、調達するところからですね。明日は配信をお休みして、心当たりをあたって盾の調達をしようと思います」


「え、あ、はい! じゃあ明日は配信をお休みします。みんなそういうわけだから!」


“了解”

“またあさって会いましょう”

“盾を持ったアクア様にお会いできるのを楽しみに! ¥2000”

“今日は終わりかな?”

“ものたりなさはあるけど、世界随一の威力を見ただけで満足 ¥3000”

“盛り上がり所なー”

“苦戦するところも見てみたいw”

“ぜいたくな悩みw”


「盛り上がりが足りませんでしたか。そうですね……。お姉ちゃんに良いアイディアがあります」


 ライトお姉ちゃんがそう言うと、デスサイズを装備し始めた。


「お姉ちゃん?」


 いやな予感。


「模擬戦ですよ」


「模擬戦……ですか」


「寸止め1本勝負。アクア様は何をしてもいいです。お姉ちゃんはデスサイズだけで戦います。大きな武器を振り回す相手にどう立ち向かうか、実戦形式で学びましょう」


“おお!いいじゃんいいじゃん!”

“こういうのが見たかった!”

“お姉ちゃん最高!”

“ゴリラ対死神 ファイッ”

“覚えたての大剣がどこまで通用するか⁉”

“コボルトリーダーくん前座扱いw”

“どれくらいやれるかな。1分持つか?”

“さすがにもう少し健闘するんじゃね?”


 どこまでやれるか、か。

 ライトお姉ちゃんは世界No.1と言われてる。

 まだまだ敵わないのはわかってる。でも、いつかは上回らないといけない相手だ。

 通用しなくても、攻略の糸口くらいは見つけたい。


 やはり双剣主体で、崩せたら大剣の溜め攻撃がいいのかな。でもそれだと見え見えかもしれない。

 あえて近距離戦に持ち込んで大剣で勝負を挑む。

 デスサイズで近距離の敵と戦うのは厳しいはず。昨日見せてもらった戦い方も、中距離以上の間合いを持って、間接攻撃が主体だった。


 いける、かな?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る