第15話 鎌倉A1ダンジョン攻略開始

「さっそく鎌倉A1ダンジョンの攻略を始めていくわ」


 わたしは聖剣レーヴァテインを背負う。

 ちょっぴり得意げにね。


“おいおいマジか”

“レーヴァテイン?”

“初心者の武器じゃねーぞ”

“がっつり聖剣でわろたwww”

“初心者なら鉄の大剣をイメージするじゃん?w”

“アクア様ぱねーっす”

“おかねもちー!”


「あ、えっと、これは違うのよ。ライトお姉ちゃんがちょっと貸してくれただけで……」


「最近はあまり使っていなかったものなので、かわいい義妹に貸しました♡」


 ライトお姉ちゃんがフォローに入ってくれる。

 さすがにお金持ちキャラのイメージは困る……。実際金欠で鉄の大剣を買うのが精いっぱいなんですよー。


「武器のレアリティが高すぎて、みんな驚いちゃうかもしれないけど、わたし、ちょっと金欠で……ライトお姉ちゃんに頼み込んで貸してもらったのよー」


“金欠! ¥10000”

“露骨なスパチャタイムw ¥10000”

“いまだ ¥5000”

“≪ドル箱≫の力が試される ¥200000”

“いくねーw ¥30000”

“こんにちは ¥1000”

“スパチャもしないでアクアに話かけるなんて、子分のオークに襲わせるわよ! ¥10000”


「あああああ、違うの違うの! スパチャがほしいわけじゃなくて!」


 やっちゃった……。

 庶民アピール大失敗……。もえきゅん☆みたいにかわいらしくできないなあ。


「まあまあ、いいじゃないですか。アクア様は私が責任を持って指導します。指導の一環で武器も用意します♡」


「ありがとう! ライトお姉ちゃん!」


 ライトお姉ちゃんとハグする。

 もうわたしにはうまく説明できないから助けて。


“こまってるぞ、もっとだ! ¥10000”

“いえーいみてるー? ¥1000”

“やっふ~ ¥2000”

“乗るしかないこのビッグウェーブに! ¥3000”


 コメント欄のテンションがおかしい。

 ありがたいけれど、感謝すればするほど煽っているみたいになっちゃう。どうしたらいいの……。


「さあ、アクア様! コボルトがやってきましたよ。アクア様の実力をみせてあげてください」


「は、はい!」


 そうだ、今は戦闘に集中。

 そのためにここにいるんだから!


「アクア、行きます!」


 目指すは前方のコボルト1体。

 犬の顔をした小型の妖精だ。すばしっこいし知能も高いらしい。

 でもわたしのほうが足が速いし、かしこいもんね!


 あ、後ろにもう3体いた。まとめていく!


 まずは先頭の1体に距離を詰める。

 

 間合い外からの右から横薙ぎ!

 剣の風圧でコボルトが腰から真っ二つになる。


「次!」


 後ろの3体が戦闘態勢で散開する。

 まとめては無理か。それなら!


 左のコボルトと真ん中のコボルトをまとめて左から横薙ぎ、ラスト右のコボルトに縦斬り!

 流れるように攻撃がつながって、すべてのコボルトを撃破した。


「おみごと! でもやりすぎですね」


 ライトお姉ちゃんが褒めつつもあきれ顔になっていた。


「え?」


「後ろを見てください。ボロボロですよ」


 言われた通り振り返ると、剣圧やら縦斬りの衝撃やらでダンジョンの通路がめちゃくちゃに破壊されていた。コボルトも素材が取れないほど細切れになってしまっている。これだと魔石も回収できない……。


「やっちゃった……」


「基本の型に忠実なのは良いことですが、相手を見て、もう少し威力を落とした攻撃にしましょう」


「はい……」


“怒られ案件www”

“強すぎて草w”

“いったい何を見せられているんです?”

“今日から大剣デビュー? あれ?”

“いやもうむしろ完璧に使いこなしてないか?”

“何が起きているんだ”

“≪これがライトの弟子かい?≫”

“うわ、外人ニキおるやん”

“なんて言ってるんだ?”

“ライトの弟子かってさ”

“海外にも注目されるようになったのか”

“≪ライトが日本で活動すると発表したので見に来た≫”

“初心者大剣講座で良いのかw”



「ライトお姉ちゃん……もしかして何か宣伝したの?」


 海外の人が見に来ることなんてこれまでなかったよね。

 気づいたら視聴者数15万人を超えてるし……。


「SNSでつぶやいただけですよ」


「何をつぶやいたの?」


「日本で義妹を育てます♡」


 それはもう、清々しいほどニッコニコのスマイルだった。

 わたしは頭を抱える。

 そんなの絶対おもしろすぎて人来ちゃうじゃないの……。


「ほらほら、みんな見てくれてますよ。どんどんアクア様の強さをアピールしていかないといけませんから、先に進みましょう。Let's go♪」


 いや、うーん。

 なんかもう、考えても仕方ないか……。

 かっこ悪いところ海外の人には見られたくないなあ。


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