第13話 配信終了~ライトお姉ちゃんの提案

「双剣を捨てずに圧倒的なパワーを身に着ける方法を教えましょう!」


 ライトお姉ちゃんが自信満々に言った。


「ど、どどどどうやって⁉」


 そんな方法があるなら知りたい!


「簡単ですよ。パワーのある武器“も”持てばいいだけなのです」


 えっと?

 パワーのある武器も持つって?


「あれ? わからないですか?」


「わからないです……」


 素直にそう言うと、ライトお姉ちゃんは一瞬驚いた後、小さく微笑んだ。


「簡単なことですよ。単なる合理性の問題です。速さが必要なモンスターには双剣で戦い、耐久力があるモンスターにはロングソードや斧などの力を乗せやすい武器で戦えばいいということです」


「うん、はい……。それはわかるんだけど。わたし、双剣スキルしかなくて」


「新しい武器を持って、スキルを手に入れましょう!」


「うーん、でももえきゅん☆からスキルは厳選しないと、その人が習得できるスキルの上限がきちゃうって」


『アクア様にはアバターを作り出すユニークスキルがありますね?』


 なんでプライベート通話?

 ああ、ユニークスキルの話を配信に乗らないようにしてくれてるんだ。


『アバターごとに使用する武器を変えてスキルを習得していけば、スキルの上限は気にする必要がない問題のはずです』


 え、そう言うことなの⁉

 今あるAvatar 01、02のほかに、03、04と作っていくってことなのかな。それごとに持つ武器とスキルを変えていく……。


『スキルの習得上限と言っているのは、同時に使えるスキルのキャパシティのことでしょう。アバターを1つの人格としてとらえれば、アバターごとにスキル構成を変えるのは自然なことです』


 なるほどね。

 あ、そうか。そういえばもえきゅん☆をコピーして作ったアバターではヒールとキュアーが使えるけど、アクア様のアバターでは使えないんだった。

 それと同じ理屈なのね。


“放送事故?”

“映像は来てるけど音声が来てない”

“なんだ?内緒話か?”

“2人で何話してるの~?”


「あ、ごめんなさい。ちょっとスキルのことを考えてて」


 わたしはとっさに言い訳した。

 不自然な間だったよね。


「わたしのスキル習得上限ってどれくらいなんだろうって」


「一般的にはまだまだ取れると思いますよ。上限に達したらその範囲内で戦えばいいだけですから、先にあまり深く考えるのはやめましょう」


「なるほど。了解!」


「今日の配信はこれくらいにしておいて、次回の配信の時までに大剣か長剣あたりを用意して、スキル習得に励みましょうね」


 まずは大剣か長剣かあ。

 まったく使ったことないからがんばらないと……。


「お姉ちゃんが良い武器をプレゼントしますよ♪」


「ライトお姉ちゃん!」


 ホント泣きそう。

 配信機材を買ってお金がなくて、どうやって新しい武器を買おうか悩んでたの……。


「私自身の予備の武器もありますし、知り合いに頼めば良品も手に入ると思うので大丈夫ですよ」


「うれしい! ライトお姉ちゃん大好き♡」


 わたしはライトお姉ちゃんの首に抱きつく。


 そう、エンディングの時間だ。

 エンディングの時のもえきゅん☆を真似してみたの。


“今日はサプライズがすごかったなー”

“まさかライトザリッパーが乱入してくるとは”

“スールの契りも結ぶし”

“展開がよめねえw”

“これから毎日配信見られるのか?”


「明日はわりと早い時間から配信しようかなって思ってます。みんな夜更かししないで早めに寝てね」


「アクア様、明日も朝から突っ走っていきましょうね♪」


「お、お手柔らかにお願いします」


 初めての武器でガンガン攻めるのはちょっと……。


「じゃあ、みんなまた明日ねー」


“おつかれっしたー”

“アクア様、ライトさんおつかれー”

“今日も楽しかった ¥2000”

“剣で戦うアクア様楽しみー”

“ライトお姉ちゃん!”

“ありがとうございました!”


 わたしとライトお姉ちゃんはそろって手を振り、配信を終了させた。


「ありがとうございました!」


 配信終了を確認してから、ライトお姉ちゃんから体を離した。


「マイカ~! よくがんばりましたね♡ さっそく明日の準備をしましょう!」


「は、はい!」


 準備? 新しい武器の?


「武器はとりあえずこれを使ってください」


 そう言いながら、ライトお姉ちゃんが一振りの刀を手渡してくる。


「ありがとうございます! 助かります!」


「ちゃんとしたものは近いうちに用意しますからね」


 ライトお姉ちゃんがニコニコしていた。

 うんうん、初心者のうちは練習用の刀でいいよね。そのほうが気が楽ー。

 

 と、装備情報を見て唖然とした。


「これ……」


 刀を持つ手が震える。


「レーヴァテインって……」


 たしか北欧神話に出てくるガチガチの聖剣じゃないですか……。

 これのどこが初心者用の練習武器なんですか⁉


「攻撃力は高いですけど、少し重量があって初心者には取り回しがしづらいかもしれないです」


 なるほど?

 武器の形状によって戦い方が変わってくるのかあ。


「でも筋力を鍛えて、力のある一撃を出していくなら、まずは大剣がおすすめですよ」


「もったいなすぎる武器! わたし、がんばります!」


 こんな神話級の武器を持たせてもらえるなんて!

 でもどんなアバターを作ってレーヴァテインを使おうかな。やっぱり筋肉ムキムキな感じ?

 悩むなあ。


「マイカ~! 今後の方向性について、1つ提案があります」


「なんでしょう⁉」


「アバターはすべてアクア様の見た目をコピーしましょう!」


「というと?」


「アクア(双剣)、アクア(大剣)、アクア(長剣)、アクア(弓)、アクア(盾)、アクア(魔法)、アクア(支援)のようにアバターごとに武器とスキルをそろえておいて、瞬時に切り替えていくと良いと思います」


 なるほど?

 武器ごとにアバターを切り替えていく……。


「アバターの切り替えは視聴者にはわかりませんから、アクア様が1人で何役もこなしているように見えます。どうですか? ワクワクしませんか?」


「ワクワクします!」


 1人何役も!

 それってかっこよすぎる!

 

「えーすごい! それってすごいアイディアですね! アバターが変わらなければユニークスキル使ってるってわからないし、攻撃も支援も1人でできる、かもしれない!」


 わたしがどこまで習得できるかによるけど!


「順番に1つずつ武器とスキルを増やしていきましょうね」


 がんばります!

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