第12話 エンジェリックリリィ戦

 わたしは単独でエンジェリックリリィに対峙する。

 

 エンジェリックリリィ。

 ちいさな天使の見た目をしたモンスターだ。

 光属性魔法と召喚魔法を主に使ってくる。単独の時は光属性魔法で攻撃をしてきて、召喚モンスターがいる時は、そいつらを補助したり回復したりするやっかいなモンスターだ。


 いかにして召喚モンスターを素早く倒し、エンジェリックリリィだけにするか。それが勝利への鍵だ。


 まずは先制攻撃で削れるだけ削る!


「燃! 焔! いくわよ!」


 焔を投擲。

 わたしは燃と一緒に飛行して距離を詰める。


「焔! ファイヤーブレス!」


 焔が巨大な火球を吐き、エンジェリックリリィの周囲をまとめて燃やしにかかる。


「≪rebirth≫からの回転乱舞斬り!」


“出た~!アクア様オリジナルコンボ!”

“先制攻撃いったー”

“やったか⁉”

“(フラグ)”

“完璧に入ったでしょう”


 手ごたえはあった!

 

「まだですね」


 ライトお姉ちゃんの冷静な一言。

 見れば、エンジェリックリリィは無傷だった。

 

 なんでー?


「身代わりですね」


 わたしの攻撃が当たる寸でのところで、自分そっくりの影モンスター召喚を成功させていたのだ。


「くっそー」


 やったと思ったのに!


「次、きますよ」


 エンジェリックリリィは3体のデビルリリィを召喚。

 すかさず3体が同時に襲い掛かってくる。


 デビルリリィがダークストライクを仕掛けてくる。

 闇属性魔法攻撃。暗黒精霊を複数召喚しての多面攻撃だ。3体同時だとかなりの手数になる。


「でも! これを待ってたのよ!」


 わたしは左手のアクアグローブを構えて、ダークストライクを吸収する。

 これよこれ!


“あれがうわさのアクアグローブ!”

“まじで魔法無効かよ”

“無効じゃなくて吸収な”

“貯めておけるらしい”

“貯めておけるってことは下ろせる?”

“貯金じゃねーぞ”


 よし。もう十分貯まった。


 影のデビルリリィをスラッシュで消滅させる。

 影は弱い。楽勝!


「さあ、覚悟なさい!」


 取り巻きがいない今がチャンス。

 燃と焔、両方の尻尾につかまって全速力で接敵する。


 エンジェリックリリィがホワイトストライクを唱える。

 召喚はなし。いける。


 闇属性を滞留させたアクアグローブを解放してホワイトトライクを無効化。

 無防備な本体に回転乱舞斬りでとどめを刺した。


 今度こそ終わったね?


「アクア様、お見事でした」


 ライトお姉ちゃんが拍手で出迎えてくれる。


“あざやか~”

“さすがAランク!”

“アクアグローブがあればそこそこ単騎でやれそうだなー”

“魔法主体のモンスターも楽勝か”

“単純に攻撃してくる奴ならな”

“精神攻撃はきついか”

“精神攻撃は基本パーティー組まないとな”


 そうなんだよね。

 今の攻撃パターンは汎用的なんだけど、精神攻撃や間接攻撃してくるモンスターの対策にはなっていない。そのあたりがこの先の考えどころかなー。


「なかなか良かったですよ。素早さ、アイディア、立ち回りどれも素晴らしいです」


 おお、べた褒め。照れます。


「ありがとうございます。でも、足りないんですよね?」


 課題はわかっているつもり。

 でも、どうしたらいいのかはわかっていないの。


「そうですね。足りないです。圧倒的に足りないです」


 ただ戦っていてもダメなのはわかる。

 

「ソロでダンジョンを攻略していくには、圧倒的なパワーが必要です」


“力こそパワー”

“力こそパワー”

“力こそパワー”

“おまえらもうそれ言いたいだけだろw”

“今は手数でなんとかしてるところあるもんなー”

“実際耐久型のモンスターが出てきたら苦戦するだろうよ”

“お前ら厳しいな”

“Sランクを目指すなら、ってことだろ?”

“ああ、それな。Aランクとしては今のままでも十分すぎるからな”


 そう、Sランクを目指すなら、特質的な何かが必要なのだ。

 ライトお姉ちゃんはそれを『圧倒的なパワー』だと言った。

 それも1つの答えなんだと思う。


「わたしが今から圧倒的なパワーを身に着けることってできると思いますか?」


「双剣のスタイルは確立されてますから、今のままではかなり難しいでしょうね」


「ですよねー」


 わたしは深くため息をつく。


 わかってた。

 予想通り過ぎる答え。

 双剣ではパワーは出ない。当たり前の答えだ。


 じゃあ、双剣を捨てるしかないのかも……。

 でもこれはもえきゅん☆との絆だ。絶対捨てたくない。


 でも強くなるためには捨てないといけない。

 うーん、やっぱり嫌だよぉ。


「迷ってますね?」


「はい、迷ってます」


「その双剣は大切なものなのですね」


「もえきゅん☆からもらった武器なの……。わたしはこれで戦い続けたい」


「わかりました。お姉ちゃんにお任せあれ! 双剣を捨てずに圧倒的なパワーを身に着ける方法を教えましょう!」


 ええ、そんな方法が⁉

 教えて、お姉ちゃん!

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