第44話 テレビ出演~スタジオにて
「本日は、新種のゴーレム『アクアゴーレム』を発見されたお2人をスタジオにお招きしております。早速お話をお聞きしたいと思います」
CM明け、わりと若い男性アナウンサーがフリップボードを片手に宣言した。
このコーナーは新人の局アナが受け持っているみたい。
「まずは『アクアゴーレム』という名前の由来にもなった柊アクアさん、お話を聞かせてください」
「はひっ!」
いきなりわたしの番!
どうしようどうしようどうしよう!
「私の調べによると、『魔法攻撃の効かないミスリルゴーレムということで調査をされていたが、予想以上の数のゴーレムに襲われ反撃。その際、柊アクアさんが単独でゴーレムのコア破壊に成功。そしてその残骸を調べていく中で、新種のゴーレムであることが発覚した』となっていますが、こちらいかがでしょうか?」
「はひっ! 最初はミスリルゴーレムの亜種ということで討伐をですね、はい、その……」
なんだっけ、何を言えばいいんだっけ……。
あーーーー……。
「はい♡ 私たちは普段ペアでダンジョン攻略をしておりまして、定期的にダンジョン攻略の生配信をおこなっているんです。配信チャンネルへのリンクはこの下に……って、生放送だから出ないですよね。やだ~、モエったら痛恨のミス♡ えっと、今回は冒険者協会からミスリルゴーレム異常発生の調査と討伐の依頼を受けまして、それを生配信していたんです」
もえきゅん☆が間に入って話を巻き取ってくれた。
助かりましゅ……役立たずでごめん。
「もえきゅん☆さん、補足ありがとうございます。生配信もされていたんですね」
「そうなんです。調査依頼の場合、記録映像を残すことも重要なので、生配信か録画か、どちらにしても撮影して進めることにしているんですよ」
もえきゅん☆がていねいに説明していく。
ここから配信に興味を持ってくれる人もいるだろうし、大事なことだよね。
「倉敷A5ダンジョンの20階につくとですね、辺り一面、こう~、見渡す限りミスリルゴーレムの群れで、あとで討伐個体を数えたらミスリルゴーレム、アクアゴーレム合わせて510体いたみたいなんですよ~」
「1フロアーに510体ですか⁉」
「そうなんですよ~。もう着いた瞬間、満員電車かなって♡ 通常のミスリルゴーレムは魔法が効くのでモエの魔法で倒したんですけれど、200体くらいピンピンして立っているゴーレムがいたんですね」
「実はそれがアクアゴーレムだった、と」
「そうですそうです♡ 魔法攻撃を吸収するので、モエの魔法で余計に元気になっちゃっていたみたいで。それを双剣使いのアクア様が単騎で突っ込んでいってですね。ですけど、最初はまったくダメージを与えられなくて焦りましたよ~。対峙していたアクア様が、魔法をエンチャントした武器ではダメージを与えられないことと、逆にモンスターを強化していることに気づきまして」
「アクアさん、すごい勇気ですね……。得体のしれない相手に一人で突っ込んでいく。しかも冷静に相手を分析されて……」
「そうなんですよ♡ アクア様はうちのブレーン担当でもあるので。モエはいつも後ろで震えながら支援しているだけで……」
テレビで何さらっと大ウソついてるのさ……。
配信見てる人はみんな大爆笑しているところ……はっ、そういう笑いのポイントをニュース番組でも提供しているの⁉
「アクアゴーレムを覆うアクア金属もミスリル金属に匹敵するくらいの硬度がありますから、生半可な物理攻撃では傷一つつけられないんです。でも、アクア様はトルネードスラストという技で……こう、頭の上に双剣を構えて、竜巻のように回転しながら電動ドリルのようにアクアゴーレムのコアがある胸のあたりを貫いて倒したんです♡」
もえきゅん☆は説明に熱が入りすぎて、イスから立ち上がり、クルクルと回転しながらクライマックスを解説していた。
夢中で解説するもえきゅん☆かわいすぎる!
「すごい……。『トルネードスラスト』とは冒険者の中ではメジャーな技なのですか?」
「双剣スキルの1つではあるのですが、わりとマイナーな部類ですね。双剣スキルの中でも威力は最上位クラスに強いのですが、命中させるのが非常に難しい技なのであまり実用的ではないんですね」
「と言いますと?」
「自分が竜巻のように高速回転しながら敵に突き刺さらないといけないので、命中させるために姿勢を制御する難しさがあって、さらに技を維持するのに非常に体力を消耗する技でもあります」
「その難しい技が今回有効だったのはなぜなのでしょうか?」
「それはアクア様のアイディアによるところが大きいですね。ただ、トルネードスラストを発動してもアクアゴーレムは倒せなかったと思います。しかし、アクア様は事前にオリジナルコンボ技を発動していて、アクアゴーレムをあおむけに転がして身動きが取れない状態にしていたんです」
「なるほど! 動けない相手なら大技のドリルでコアを狙うこともできる、と」
「そうなんですよ~。あの一瞬でそこまでの判断ができる。アクア様はまだとても若くて、最近Cランク冒険者になったばかりなのですが、この活躍ならあっという間にBランク、Aランクと上がっていくこと間違いなしです♡」
ちょっと、その話、ここで必要だった⁉
「アクアさんはまだ学生とのことですが、日本の未来を背負って立つ存在になるかもしれませんね。将来が非常に楽しみです。今後のご活躍に期待しています!」
「はい、ありがとうございます♡」
もえきゅん☆がお礼言っちゃった!
「さて、この後は、アクアゴーレムからとれるアクア金属について、モンスター研究の第一人者、帝都大学の橋本仁名誉教授もお迎えして、詳しくお話をお聞きしたいと思います」
CMに入った。
うう、緊張する……。
テレビって怖い……。
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