第24話 わたしのステータス壊れました
わたしがモエカー像に頬ずりしていると、もえきゅん☆がなにやら汚らしい布を見せてきた。
「あとはこれを贈呈、かな♡」
「なんです、その布。妙に煤けてますけど」
わたしにはこのモエカー像があるので大丈夫です!
「これは~エルダーリッチのローブだぞ♡」
エルダーリッチのローブね。なるほどー……えっ⁉
「ま、まさかのボスからレアドロップ⁉ 装備品が直ドロ⁉ 現実にあるんですか⁉」
オークロードは何も良いもの落とさないのに、エルダーリッチは1回でデレたんだ……もえきゅん☆ってばすごい!
「アクア様運がいい~♡」
「え、わたし倒してないし、そもそもわたしLuck≪幸運≫最低値ですけど……」
「え~そうなの? Luck≪幸運≫最低なの? ホントにぃ?」
もえきゅん☆がニヤニヤしながら顔を覗き込んでくる。
なんです、そのかわいい顔は!
「え、だってほら、Luck≪幸運≫1だからオークロードからスキルストーン落ちてこない……。って、Luck≪幸運≫1じゃない⁉」
念のためチラ見したステータス値がバグりまくってる⁉
Luck≪幸運≫9999って、これ……数値が反転? なにこれ、壊れたの? 未知のウィルス感染⁉ はっ、まさかまだファントムで幻覚を見ている?
「この間ね、ちょ~っとステータスのほうもいじっておいたんだぞ♡」
もえきゅん☆が耳元で囁くように言う。
「えっ、もえきゅん☆がいじれるのってスキルの吸出しとスキルポイントの付与なんじゃ?」
「モエがステータスもいじれることは誰にも言ってないからナイショだぞ♡」
もえきゅん☆が耳打ちで囁いてくる。
いやちょっと、ついでに耳たぶを甘噛みしないでぇ。あひぃ。
「ちょっ。ええ……もうなんでもありですか。そもそも人にはスキルポイントのほうも言えないでしょ……」
もえきゅん☆ってば、やっぱりチートキャラじゃん。
あーあ、普段ステータスなんてまったく見ないし、ぜんぜん気づかなかったけど、わたしのステータスぶっ壊れちゃってたわー。
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Strength≪力≫:238 Vitality≪体力≫ :240 Dexterity≪器用さ≫:312 Agility≪敏捷さ≫:345 Intelligence≪知力≫:305 Luck≪幸運≫:9999
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DEX≪器用さ≫とAGI≪敏捷さ≫が上がるように訓練はしてたけど、どっちもやっとこさ100いったところだったはず。それなのにいまやDEX≪器用さ≫は312でAGI≪敏捷さ≫345って化け物じゃん! ちょ~っとフェニックスちゃんたちのおかげで速くなったなと思ってたけど、わたし自身が化け物級のステータスになっちゃってたんだ。
他もSTR≪力≫238だし……ゴリラかよっ! そりゃオークロードの足首吹き飛ぶわ。
うっわ、INT≪知力≫が305って東大に入れそう!
VIT≪体力≫240ってボディービルダーの大会にでも出たほうがいいんですかね?
ちなみに前はこんな感じだったと思う。うろ覚えだけど。
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Strength≪力≫:70 Vitality≪体力≫ :30 Dexterity≪器用さ≫:101 Agility≪敏捷さ≫:102 Intelligence≪知力≫:60 Luck≪幸運≫:1
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「ねぇ、もえきゅん☆……能力のほうのステータスも訓練でしか上がらないし、スキルと同じで生涯やり直しは利かないはず、だよね……」
「そうね~♡ モエだって1人1回しか振りなおせないんだぞ♡ ポイントの付与だけは何度でもできるけどね♡」
「吸出しは1回だけど、付与は無制限ですか……そうですか……」
「なあに? ステータスポイント足りないの? 欲張りさんなのね♡」
「ちがいますぅ。こんなに鬼上げされたら周りの人ビビりますって」
「モエの……ほしい?」
もえきゅん☆が頬を赤らめ、恥じらうように言う。
ポイントよねっ⁉ ねっ⁉
「ふ、普通の冒険者って、Bランクでもオール200くらいだって聞きましたけど……。前からわたしを知ってる人が怪しむ……って、わたしボッチだったわー」
悲しい1人ツッコミさせないで……。コミュ障ボッチVオタをなめないでいただきたい!
「アクア様はアクア様だから大丈夫なんだぞ♡ モエの相方なんだから強くたって誰も怪しんだりしないよ~♡ ステータスだけならAランクかもうちょっとでSランク認定レベルはあるね♡」
にっこにこのもえきゅん☆だけど、もえきゅん☆のステータスはオール9999かな、やっぱり……。
怖いから考えるのやめとこ。
「これもナイショなんだけど~、Luck≪幸運≫が高いとモンスターを倒した時に、ステータスもスキルもボーナスポイントが追加されることがあるんだぞ♡」
「あー、この数値が中途半端になってるのってもしかして……」
「モエが付与したのはLuck≪幸運≫だけだから、たぶん付与した後にボーナスポイントでアップしてる分だぞ♡」
だとしたら上がりすぎぃ。Luck≪幸運≫1だったわたしが冒険者やる意味って何だったのってレベルでぶっ壊れてるぅ。
「これから一緒にダンジョン回ればどんどん強くなれるね♡」
「う、うん……そうですね。あっという間に人ではなくなってしまいそう……」
「かわいければ大丈夫なんだぞ♡」
まあ、中身は化け物でもめっちゃかわいいもえきゅん☆が言うと説得力あるー。
「あ、それと9999は協会が計測可能な表示上のカウンターストップだから、実際には上限がないってうわさだぞ♡」
Aランク冒険者でも、オール500くらいあったら相当上位って聞いたことあるから、4桁行ったらもはや人じゃないよね。気にする必要なさそうな情報をありがとう。でも、9999以上があるってどこ界隈でうわさになってるのよ。やっぱりSランク会議とか? Sランク認定されている冒険者で今活動中なのは、世界に5人だっけ? 日本にいるのはもえきゅん☆と確かあと1人……勇者……なんだっけ。
「は~い、そろそろエルダーリッチを倒して30分経ちました~♡」
「もうそんなに?」
周りを見渡す。
完全攻略できてるのかな? 特に変化がないような。
「アクア様、あそこを見て」
もえきゅん☆が指さすには、エルダーリッチが立っていた場所。十字架のところだ。
「十字架?」
「そう、あれがエルダーリッチとつながってたダンジョンの心臓なんだぞ♡ すっかり輝きを失ってるでしょ~」
うん、言われてみればたしかに。
最初見た時は光り輝いていたのに、今は何千年か経過した歴史の遺物みたいに錆びついて見える。
「これが完全攻略の証?」
「そうよ~。あと半日もしたらダンジョン内のモンスターは消滅するかな~」
「そういうものですかー」
「ダンジョン主がいなくなると魔力供給が止まるから、自然とね~」
モンスターたちが餓死するみたいなことなのかな。
ちょっとかわいそう。
でも、トンネルの外に出てこられると困るからごめんね……。
「じゃあそろそろ帰ろっか♡ 無事ダンジョンの機能も停止したみたいだし、北陸支部に報告入れて~、報酬もらって~、おいしいものを食べて東京に帰ろ♡」
「わ~い、おいしいもの食べたい♡」
Aランクダンジョンを1時間半ほどで完全攻略完了。
今回も、もえきゅん☆のすごさを見せつけられただけのわたしなのでした。
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