第22話 エルダーリッチ戦

 50階につく。ボス部屋だ。

 そこはわりと狭い空間で、古めかしい教会のような作りだった。天窓には色とりどりのステンドグラスがはまっていて美しいデザインだ。

 エルダーリッチは、教会の最深部、十字架にかけられたキリスト像の前に立っていた。

 十字架で勝手に浄化されたり……はしないですよね。はい、がんばります。


「アクア様、作戦通りいくわよ♡」


「イエス、もえきゅん☆!」


 わたしはエルダーリッチに向かって右手の剣を投擲する。フェニックスちゃん(右)は、右方向から弧を描くようにゆっくりと飛ぶ。

 続けて左手の剣も投擲。わたしはフェニックスちゃん(左)の尻尾につかまり、左から弧を描くように接近する。

 左右同時攻撃だ。


「エルダーリッチの攻撃くるわ♡」


 もえきゅん☆の注意と同時に、エルダーリッチが咆哮する。

 エルダーリッチの召喚魔法。周りに7体のリッチが出現した。


「ターンアンデッド♡」


 後方からもえきゅん☆が唱える。

 2体のリッチがターンアンデッドに巻き込まれて消滅。


 わたしはリッチを無視してエルダーリッチにフェニックスちゃんによる左右同時攻撃をする。それぞれ1撃を入れて離脱。ヒットアンドアウェイ方式だ。


「アクア様その調子♡ ターンアンデッド♡」


 また1体リッチが消滅して残り4体。


 と、エルダーリッチが再び咆哮する。


 インターバル短い!


 リッチが追加召喚されて7体に戻ってしまった。


「ちょっとペース上げないとダメね」


 といってもターンアンデッドもクールタイムがそれなりにあるから、そんなに連発できる系のスキルじゃないよね。


「アクア様、リッチをまとめて灰にできる?」


「OK。一旦無力化するだけなら余裕よ!」


 標的を変更。

 リッチ7体に向けてフェニックスちゃんたちを向かわせる。

 尻尾の炎でリッチ7体すべてをあっという間に灰にすることに成功した。


「ありがとう♡ Soul Absorption♡」


 もえきゅん☆から発生した霧の手が、エルダーリッチの7つある魂を抜き取りにかかる。巨大な霧の手がエルダーリッチと交錯してその体を通り抜けた。

 お願い、うまくいってー!


「アクア様、大丈夫♡ モエのほうが精神抵抗がず~っと高いから、失敗はしないんだぞ♡」


 なんだってー、魔法系のボスモンスターよりも精神抵抗値が高いなんて!

 さっすがもえきゅん☆かっこよすぎるぅ!


「あと6つ♡ 作戦変更で、アクア様はリッチを掃討しつつ、エルダーリッチの隙を作って♡」


「了解もえきゅん☆」


 いくぞー! フェニックスちゃんたち、GO!

 リッチが出現するまでは、エルダーリッチにヒットアンドアウェイ。リッチが出現したら、真っ先に掃討する。

 よし、うまくいってる!


 もえきゅん☆は、2つ目、3つ目と順調に魂を抜き取っていく。


 4つ目の魂を抜き取った時、エルダーリッチの攻撃パターンが変わった。


「アクア様、逃げて!」


 エルダーリッチが≪Soul Absorption≫を詠唱している。


 やばい、逃げなきゃ!

 ≪rebirth≫してフェニックスちゃんたちを戻す。すぐに投擲しなおして、尻尾につかまってその場を離脱する。


 エルダーリッチの霧の手がわたしに迫ってくる。

 でも、フェニックスちゃんたちの速度のほうがずっと上だ。

 霧の手はわたしの体に触れることはなく霧散した。


 なるほど、一定時間経つと霧の手の攻撃は消滅するのね。


「逃げるタイミングさえ間違わなければ大丈夫そう!」


「さっすがアクア様♡ ここからは定期的に≪Soul Absorption≫が来ると思うから、それだけは絶対避けるんだぞ♡」


「ラジャー!」


 他の魔法はもえきゅん☆のレジストで半減するから大したダメージはない。


「5つ目の魂消滅確認♡ あと2つ~♡」


 これなら倒せる!

 そう思った瞬間、エルダーリッチがこれまでにほどの大きな叫び声をあげた。


 あ、これやばいやつじゃ……。


 エルダーリッチから大量の霧が噴出する。

 霧の手が1、2、3、4……やばい7個も出現した!

 これがもえきゅん☆の言っていた不可避の7連続攻撃なの⁉

 急いで離脱しないと!


「≪rebirth≫フェニックスちゃんたち、戻って!」


 急いで投擲しなおして、全速力で離脱する。

 

 ここまで逃げればなんとか圏外……あ、これやばい⁉

 霧の手が3個しかこっちに向かってきてない! 他4個が一斉にもえきゅん☆に向かってる!

 早く離脱しすぎてこっちにヘイトが向いてない⁉


「もえきゅん☆逃げてーーーーーーー!」


「アクア様っ!」


 もえきゅん☆が悲しそうな目でこっちを見てる!

 やばいやばいやばいやばいやばい!


「もえきゅん☆!」


 絶対助ける絶対助ける絶対助ける!

 フェニックスちゃんお願い! 間に合って!


 力いっぱい右手のフェニックスをぶん投げる。

 もえきゅん☆を炎で焼いてもいい。霧の手より先に、そのくちばしでもえきゅん☆を咥えて逃げて!

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