Epiphyllum oxypetalum

玉響結

本題

神崎花恋かんざきかれん藤咲千春ふじさきちはる渡辺結梨わたなべゆうりの三人は幼馴染である。

小中までは一緒だったが、高校になってからは三人が三人とも別の学校に通いだした。

そのため三人で遊ぶのもなかなか予定がかみ合わなかった。

が、今回は久し振りに予定があって一日中遊べるようになった。

渡辺結梨は自室で一年ぶりに会えるのを楽しみにしていた。

いつも通りチャットアプリで、藤咲千春に電話をかけた。

(今の時間だと花恋電話出れないし…あと、明日この子に久しぶりに会えると思ったら…楽しみだな)

そう思いながら千春が電話に出るのを待っていた。

『あ、ゆーちゃんだ〜』

「久しぶりだね、千春」

声を聞いた結梨は声が裏返らないように気をつけながら喋りだしたら。

ちょくちょく電話で声を聞いてるとはいえ、やはり片思いしている子の声を聞くとワクワクするのは必然だろう。

結梨は千春に片思いしているのだ。

いつなのかははっきりとしていないがいつの間にか好きになっていたのだ。

けれど…

(ちーちゃん、鈍感だし…)

そうなのだ。

藤咲千春は超ド天然でかつ鈍感なのだ。

人の好意には疎いし、クイズで正解に近いようなヒントを出しても…というか最早正解と言っても過言でもないようなヒントを出しても答えは出てこないような子だ。

こんな子に好意を伝えてすれ違いを起こして後で発狂していた男子たちを数々見てきた結梨からしたら

(…どしよ)

躊躇ちゅうちょしてしまうのだ。

これを数年間やっていたので明日こそはと意気込んでいる。

『どしたのゆーちゃん?無言だけど…?』

「あ、いや、何も無いよ…あ、そだ!明日楽しみだね〜って話したかったんだよね〜」

(あっぶな…気づかれては、ないでしょ)

だってちーちゃんだし、と付け加え苦笑しながらそんなことを思っていた。

「そだ!最近花恋と会った?」

『ん〜?花恋?こないだ会ったよ〜』

(…ん?)

「なんで…?」

『あれ〜花恋言ってなかったんだ〜

あのね、わたし実は花恋と付き合ってるんだよ〜』

それを聞いて結梨は


スマホを落とした。

(え…)

『どしたの、ゆーちゃん?』

「え、あ、い、いや…な、何もないよ…」

明らかに誰にでもわかるように困惑していた。

普通の人ならば電話越しでも気づくだろう。

けど気づかないのが千春クオリティだ。

「じゃ、じゃあ…ま、また明日ね…」

『おやすみ〜ゆーちゃん』


…なんで?

なんで花恋と千春なの??

…なんで?

いつの間にくっついてたの??

なんで?

なんで?

明日告白しようと思ってたのに…。

明日…花恋来て欲しくないな。


花恋はその日部活帰りに恋人の千春に電話をかけた。

(いや〜まさか私が千春と恋人になれるなんてな…まぁ…うん。

そういえばまだ結梨に言ってなかったな。ま、いっか。)

「もしもし〜千春〜?」

『ん〜花恋ちゃんかぁ〜どうしたの〜?』

「いや〜声が聞きたいな〜って思ったから電話かけたんだけど…大丈夫だった?」

自分ながら恋人っぽいことしたなと思いながらそう言った。

まだ付き合って間もないのだ。

ウブだと言われてもしょうがない。

『今日は部活だったの〜?』

「そうなんだよ〜大変なんだよね〜」

そんなこんなで取り留めもない話をしながら帰っていた。

そんな時に後ろから肩を叩かれた。

花恋の部活の後輩だ。

「どしたの?」

「あの〜先輩…明日の部活 、ヘルプで来てもらってもいいですか?」

「え。」

(明日は久しぶりに三人で遊べるんだけど…)

「あ、明日…一年私以外抜けちゃうんで…」

「…ん。了解。」

さすがに自分のプライドが許してくれなかったので部活を優先させてしまった。

(ごめん…結梨、千春。この埋め合わせはどっかでやるから…今回は許して)


ピコン

枕元に放り投げたスマホから通知音がした。

「はぁ…何」

気だるそうにしながらもそのスマホを取る、結梨。

画面を見ると

『明日部活のヘルプで行けなくなった。ごめんね〜』

そう一言書かれてた。


…勝ちじゃん!

明日は…どうせ私の家に来てもらうって約束だったし…そこで告白して…って行こう。そうしよう。

それで夜泊まってもらおう。

明日はちょうど家の人全員いなくなるし。

ていうわけだ、私。

頑張ろう!!


「おまたせ〜!」

「お〜千春じゃん!」

駅からでてきた千春は結梨の方を見るとブンブンと手を振りながら向かってきた。

「じゃあまずは…」

「今日ね、花恋からおつかい頼まれたの〜だからそっち先行ってもいい〜?」

「いいけど…どこ行くの?」

そう千春に問いかけた結梨。

そうすると千春からはいつものゆるふわな空気は消え失せ出てきたのは歴戦の戦士のような覇気だ。

「…コラボカフェ。」

「あ〜あれね。予約は取ってるんだよね?」

「当たり前でしょ…?何言ってんのよ。」

そうして千春は結梨の手を取って先に歩いて行った。

「いや〜にしても花恋もかわいそうだね〜」

「…確かに」

二人で歩きながら花恋のことを話していた。

(やっぱり…千春は花恋のこと好きなんだなぁ)

結梨は二人がつきあっているのを再度認識した。


はあ…やっぱり二人って付き合ってんだなぁ。

にしても…千春の横顔可愛いな〜

うん。

なんで好きになったんだろうな…

確か…なんかの本で

『好きっていう気持ちを告白しないと伝わらないよ』

って書かれた気がする…気がするだけでただの捏造な感じもするけどさ…確かそれがきっかけだった気がする。

あとは…

『一番横顔が出てきた人…それは好きな人』

っていうのもきっかけかな〜

…ていうかこれが一番かもしれない。

花恋もたしかに横顔出てきはするけど…千春の横顔には負けるね。

だから好きって感じか…。


「ゆーちゃん、着いたよ」

千春にゆさゆさとゆすられて現実世界に戻った結梨。

とりあえず現状把握をしようとするが

「…ん〜何時間待ちやねん、千春さんや。」

慣れない関西弁をひねり出してそういった結梨。

たしかに前には数える方が馬鹿みたいな人数の女性客がいるのだ。

今日はある有名アニメのコラボカフェがあるのだ。

そのアニメ設定上は学園恋愛系アニメとなっているのだが、アニメ公式が何故か男子同士の恋愛を前面に出していたり女の子が出てきても男子に一切興味を示さずイケメン王子様風の女子とくっつけるとかいう謎ムーブをかましてるのだ。

そんないい意味でタイトル詐欺をしてきた作品。

有名になってきたからコラボカフェを始めた訳だが…なんとも言えないコラボ商品を発売していたり、コラボメニューを出したりしている。

「とりあえず〜…えーっとねカフェがあと一時間待ちでしょ…で、お店の方は…あ〜、ん〜四時間待ちだって〜」

「…まじか〜」

「大マジよ、ゆーちゃん。

ていう訳で、ゆーちゃん…一緒にがんばりましょ〜!」

「ん。」

(千春近くにいるだけで今日めちゃ幸運。ありがと神様。)

この時ばかりは結梨も神様に感謝したとかしてないとか…


話は変わって花恋の元へ。

ヘルプに呼ばれたもののあんまりすることがなく…今は後輩とアイスココアを飲んでいる。

「先輩…大丈夫だったんですか今日?」

「あ〜大丈夫だよ」

(まぁ全然大丈夫じゃないんだけどね〜)

彼女である千春に会いたいって訳では無い。

(はあ〜いつになったら結梨に告白できるんだろうな…ダメだな私。)

本命は結梨だ。

花恋は結梨が好きなのである。

じゃあなんで千春と付き合ってるのかってツッコまれるだろう。

それは…結梨にヤキモチを焼いて欲しいと思っていたからだ。

…なんでわざわざそんなことをしたのかって?

ただ一言

そっちの方が萌えるから。

(まぁ…ただの私の性癖なだけだし…千春には悪いことしてもらってるなぁ)

アイスココアを一緒に飲んでいる後輩はというといつも通りSNSを開いている。

(これ放置して今から行ってもいいよね…?)

「…先輩、ダメですよ?」

「…心でも読めるのかい君は…」


「というわけで…戦利品チェックと行きますか〜」

ホクホク顔の結梨がそういった。

コラボカフェから帰って今は結梨の家。

千春も一緒にいる。

今日は千春が泊まってくれるらしいのでいつもよりテンションが上がっている。

(夜に告白しよう)

そう意気込んだ。

「花恋って何がいるって言ってたの?」

「アクリルスタンドと〜クリアファイルと〜」

自分のぶんと花恋のぶんを分ける作業に入った。

その間に結梨は台所から二人分のコップを用意し、コーヒーメーカーにコーヒーフィルターをセットしておいた。

(んーと千春は濃い方が好きだから…いつもより粉は多くていいか〜)

結梨の両親がカフェイン中毒と言ってもいいぐらいコーヒーが好きなので幼い頃から自分もコーヒーを作っては飲んでいた。

千春は結梨とは違って濃い方が好きだ。

エスプレッソ…までは行かずともそれなりに濃いので結梨はあんまり飲まない。

まぁ強いて言えば…創作活動で切羽詰まって徹夜をせねばならない時に飲むぐらいだ。

(ま、今日はこれ飲みますかね〜)

コップはわざわざペアルックのを買ってきており…それにコーヒーを注いだ。

「千春〜、牛乳っているっけ?」

「あったら嬉しいな〜」

「りょ〜」

とりあえずめんどくさいのでお盆に二人分のコーヒーが入ったペアルックのコップを置き、自分の部屋に戻った。

「あ、コーヒーありがと〜」

「ふ、とりあえずブラックで飲んでよ。

前までの私じゃないからね」

「ふふふ、ならいただいちゃうわ」

一口飲んで…意外そうな目で結梨を見た千春。

「どう?」

「…ゆーちゃんこっちおいで。」

「??」

とりあえず千春のそばに行く。

そしたらいきなりガバッと抱きつかれ…ヨシヨシされていた。

「…なんでヨシヨシするの?…ちょ、ちょっと恥ずかしいんだけど」

いきなりのスキンシップに赤面する結梨。

そりゃ赤面するに決まってる。

だって片思いしているんだもの。

しかも結梨と千春は10センチぐらい身長が違う。

そのため千春の胸が結梨の頭に当たっている。

(…ちーちゃんの胸や…。)

「私の好きな味覚えてたんだね〜」

「あ、う、うん。だって最初入れた時喜んでたじゃん。そりゃ覚えてるよ」

「偉いね〜」

「あ、ありがと。」

「すごい美味しいよ〜」

千春の気が済むまで胸元でヨシヨシの刑にあっていた。


時間が過ぎるのは早いもので…もう夜になった。

どちらも一緒に夜ご飯を食べ終わりリビングでダラダラと過ごしていた。

「千春、お風呂どうするの?」

「ん〜…じゃあ一緒に入る〜?」

「!?!?」

そう言われて目を白黒させた結梨。

「冗談よ?」

一気に理性やら羞恥やらが戻ってきて赤面した。

「まさか…ちーちゃん私の事好きなの〜?」

「え!?い、いや!!ま、まさか…ねぇ?」

「そお〜?」

千春はカマかけでこう聞いてる。

他に好きな人がいるなら花恋に言うし、いないのならば花恋に発破をかけるだけだし。

(まぁ…いちばん困るのは…ないだろうけど私のことが好きになることなんだけどね〜)

どこかで『立った!フラグが立った!』っと聞こえた。

(ん…なんか聞こえたような)

「…きなんだよな〜」

「…なんて言った?」

「…言うよ。

好きなんだよ、うん。

結構前から千春のこと好きだったんだけどさ、…言えなかったんだよね。

…ずっと前から好きでした。付き合ってください。」

(あ゛〜もう流れで言っちゃったけど…もういっか。)

(…やっぱりこう来たか…はぁ…どうしよっかな〜)

「…とりあえずさ…一緒にお風呂行く?」

「なんでそうなるかねぇ!?!?」

告白後の大事な余韻をぶち壊した千春は結梨の手を引いてお風呂に一緒に行った。


「…で、今どういう状況なのさ」

『ゆーちゃんに告られた。』

「…それはわかったけど…今結梨どこ?」

「お風呂行ったよ」

『はぁ…』

「とりあえず…何とかしとくけど明日は花恋が誘うんだよ?」

『…前向きに検討しますし善処します…』

「…アクスタとクリアファイルあげないけど?」

『…うっ。私の推し〜…』

「なら誘いなさいよ」

そうピシャリと告げ電話を切った。

(あの子もヘタレね〜)

千春はお風呂の中でオーバーヒートした結梨を放置して花恋に一連の流れを報告していた。

結梨はお風呂の中で千春に体を触られて…オーバーヒートした。

まぁ…つまりはのぼせて今はエアコンの真下で溶けている。

聞こえてはいないはず…だ。

「いや〜にしても花恋も思い切ったことしたね〜

性癖をリアルにあてはめるのはちょこっと謎なんだけど…」

苦笑しながらそう漏らした。

ぶっちゃけ最初そんなことを相談された時はさっさと付き合えと思っていたが…結構楽しかった。

けど恋愛感情ではなく湧いたのは…庇護欲。

(…この感情ってどっちかと言うと保護者じゃないかな?)

って思った時は自分でもおかしいなとは思っていた。

(…ま、この子達がさっさとくっつけば私も好きな子にようやく構ってあげれる…♡)

実際の千春は好きな人がいる。

いるが…二人には話していないので今回は伏せよう…。


…ほえ?

なんで…エアコンの真下にいるんだ?

…私何があったんだっけ?

んーと…千春と一緒にお風呂行って…んで……あ、…あれだ。

思い出した、うん。

千春の裸見て若干のぼせて…追撃だと思うけど…胸で背中洗うって言われて倒れたんだっけ…。

……アホだ、私。

どっからどう見ても…アホだわ。

「ゆーちゃん大丈夫〜?」

水を持ってきてくれた千春がそう言ってくれた。

「うん。…その〜ありがとね。」

若干まだ顔がほてっているのかな…めっちゃあつい。

…こんな顔見せたくないな。

手近なとこにクッションあったからそれで顔を隠しとこ…。

「なんで顔隠すの〜?」

「…今の顔見られたくない」

そう言ったらクスクスと忍び笑いをしてきた。

「…何?」

「ん〜可愛くて今すぐヨシヨシしたいな〜って思ってるの〜」

「…あんたそれ母性でてない?」

「…何言ってるか分からないけど〜明日花恋に会ってね〜」

「…は?」

コイツナニイッテルンダ?

さっき告白したはずだよね…?

あれ?

ま、まぁ千春が言うならそうするか。

「わかった?」

「え、あ、う、うん」

結局この日は一緒に寝た。

寝たんだが…あまりにも千春が無防備すぎたので私も何もする気にならず、何も起こらなかった。

なんか起こってもいいはずなんだけどね…。


次の日

花恋は駅前でポニテを弄りながら結梨を待っていた。

(…結梨と会うのいつぶりだっけ?)

「…お、おまたせ。」

「…ん。」

(…あれ?花恋ってこんなキャラじゃないような…)

「…じゃ、じゃあ行こっ、結梨。」

「…うん。」

とはいえ突発でデートに誘ったのでどこに行くかも決めていないのだ。

「…はてさてどこ行こうかね、結梨。」

「キャラブレッブレよあんた。…ん〜とりあえずコーヒー飲みたいな。」

「…やっぱ無理あるか。」

「そりゃそう。」

「…うし 、なら行きますかね」

とりあえず…コーヒーを飲みに静かな喫茶店を一緒に探しに行った。


…とりあえず誘えたし…隣に結梨いる。

ん〜…匂いが…好き。

しかも…鎖骨…綺麗。

…あとたまに聞こえる吐息。好き。

「花恋…?」

「え、?な、なに?」

急にキョトンとした顔でそう言ってきた。可愛い…

「…なんで今日呼んだの?」

「昨日行けなかったからってのもあるし

あと単純に会いたかった」

「へ!?」

(…え!?)

めちゃくちゃ驚いている結梨。

可愛い…やっぱり可愛い。

さっきから可愛いって言葉しか出てこないんだけど…って思ってるだろうけど…しょうがないじゃん。

可愛いんだもの 。

多分…一目惚れなんだろうな〜。

そうじゃないとこんなに『可愛い』って言わないもん。

なんでなんだろうね…。

「…花恋、何飲むの?」

「え、えっと…アイスココアがいいな。」

「あんた今日ぼーっとしすぎよ?大丈夫?」

そう言って結梨は顔を近づけてきた。

ちょ!?え!?も、もう…き、キス するの!?!?

…そんな訳もなく花恋のおでこに結梨のおでこをくっつけただけだった。

…さっきから結梨の整った顔を見て可愛いな〜とぼーっとしていたので結梨は心配してくれたのか…。

やっぱり可愛いな、結梨は。


にしても…花恋、今日ぼーっとしすぎなんだよね。

いつもこんなにボケっとする子じゃないと思うんだけど…何かあったのかな?

今日は何言っても何してもぽえ〜ってなってるし…。

「あ、そうだ結梨。」

「どした?」

「久しぶりにさ…私の家泊まらない?」

「…ほんとにどしたの?」

…昨日、千春に告白したんだけど…結局なにもなかったし…むぅ。

「別にいいじゃん」

そう言ってぷいっとそっぽを向いた花恋 。

…可愛いって一瞬だけ思ったぞ。

ということで花恋の家に今日は泊まることになった。


「じゃまするで〜」

「…ノッかれと?」

「そりゃそうじゃん。千春いないんだし」

「なら仕切り直しで…」

take2

「じゃまするで〜」

「邪魔すんやったら帰って〜」

「あいよ〜」

そのまま花恋宅を出ようとした結梨を後ろから…案の定追いかけてきた。

「…あの?なんで帰ろうとしたのか教えて?」

「…邪魔するなら帰れと言われたので」

そう真顔で返すと普通に叩かれた。

「いたっ」

「…はぁ、ほら行くよ?」

「了解。」

手を引っ張られて花恋宅に行くのであった。


久しぶりに素を出した。

やっぱり結梨も私の前では素でいる。

…千春の前で素でいると、千春のペースに巻き込まれるのであんまり出せていない。

「んで…コーヒーないんだよね?」

「当たり前じゃん。」

私、神崎花恋はコーヒーが好きではない。

なぜなら…小さい時に飲んだらすっごくまずかったからだ、以上。

…お子ちゃま舌だって言われるけどしょうがない。

「はぁ…エナドリで我慢しようかな〜」

「やめときな、結梨」

…いつか同棲とかするんだったらやっぱり結梨の好きな物は慣れといた方が良さそうだな…。

…にしても…私の服着てる結梨可愛いな。

やっぱりまた可愛いって単語しか出てこない…。

あの馬鹿なやり取りをしてる最中、夕立にあったので先に結梨をお風呂に入れた。

着替えがないって言ってたけど私のジャージを貸しといた。

けどやっぱり…可愛い。

萌え袖とかはないんだけど可愛い。

人形みたいにちょこんと座ってるんだよね今。

…さてどのタイミングで告白しようか?

寝る前…。

…これで行くか。


「ん〜作業終わり!」

「おつかれ〜

まぁ…紅茶しかないが許せ」

「…では一口いただく…美味いから許す」

二人でそんな小芝居をしながらも…夜になっていた。

結梨は溜まっていた作業を花恋宅でちょっとやるって言ったが普通に集中してめちゃくちゃバリバリにやっていた。

(まぁ…作業してる時の結梨って…メガネ付けてるからな〜)

花恋からしたらものすごく眼福だったからなんでもいい。

とりあえず可愛かったらなんでもいいのだ。

「…もう夜じゃん。」

「気づいてなかったの?」

「…そりゃ創作意欲湧いてたから文章化してたのと絵のラフ描いてたし…」

「大変だね」

そう言ったら結梨はまとめていて髪を解きながら

「だって楽しいもん。」

清々すがすがしい笑顔でそう返してきた。

(やっぱり…私この笑顔が好きなんだな〜)


…ご飯も食べゲームのログボを取ったり他愛たあいも無いことを話していたら深夜になっていた。

とりあえず…洗面台で自分の顔を洗いながらぺちぺちとビンタしている花恋。

(…今回はまじでやらなきゃいけない。

そうしないと…千春が言ってくれた意味ないし…こんなんだと絶対怒られる。)

「…よし、…ほな行きますかね〜」

この時の花恋は不思議と緊張していなかった。

どっちに転がっても…泣かないと決めていた。


「ねぇ、結梨。」

「ん?」

「…。」

ポロポロと涙が出てきていた花恋。

いきなりのことで何があったのか一切わかってない結梨。

声をかけられたと思ったら途端に泣き始めたのだ。

「…どしたの?」

隣で寝転んでいたので肩を寄せてくっついた。

「…あのね…何言われても怒らない?」

涙ながらにそう言う花恋。

電気は一切付けてないので月明かりで涙がつたっているのがわかる。

「…言って。怒らないから。」

「…ゆうりのこと好きなんだよ…いつからかはわかんないんだけどね…なんか、好きだったの…」

「うん。」

「…けど…ゆうちゃんはちーちゃんが…好きなんでしょ?

けどね...わ、わたしはゆうちゃんがすきなんだよ

…ねえゆうちゃんダメ?」

「…んそくだよ…かれん…。」

潤んだ瞳でそう言われ…断れるはずもなく。

そのまま二人でキスをした。

安心した二人は一緒に手をつなぎながら寝た。


結局キスして寝た。

千春も好きだったけど…あんなのされて断る方がおかしいと思ったので断ってない。

けど...やっぱり私は千春のことは諦めてない。


結局キスして寝た。

…私のことを受け入れくれたので嬉しい。

けど…これはたから見たら私が結梨寝とってるようなもんじゃん…。

ま、私はそっちの方がいいんだけどね。

結梨は帰ってくれた。

今は私だけが家にいる。

…千春が好きなのは変わってないらしく…私との関係はいつまで続くか正直分からない。

...私ってこんなに独占欲強かったっけ...?


なら…わからせるしかないのか、

誰が結梨の彼女かって。


「...待っててね結梨。」

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Epiphyllum oxypetalum 玉響結 @tyuunizuki1005

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