第4話 村
一旦家に帰り、再び三人を送り出した。
今度は腹が減っても大丈夫なように、ちゃんとお弁当を持たせる。
しかし、俺の金は溶けるように無くなってしまった。
二部屋分の宿代と飯代と馬車代と......まぁそんな事を言うのも野暮ってものだけど、なんだか納得がいかなかった。
腹が減ったからと言って、サナティオを全部食べてしまうだろうか。
まぁ、まだ子供だし、誰だって腹が減っては動くことも出来なくなってしまうだろう。
今は、無事でいてくれただけでも良かったと思うべきなのだろう。
「ふぅ、なんだかもうひと仕事終えた気分だ」
まだ村に着いていないというのに、もう俺は何かを成し遂げたような気分になっている。
安心は出来ない。
ちゃんとミッシェルが帰って来て、無事に送り届けられたことの報告を受けてからだ。
「よし。今のうちにサナティオの研究でもするか」
減って来た......と思っていたサナティオは、増えずとも減らないような数を保っていた。
だがこのまま収穫し続ければ、いずれ無くなってしまうことは確実だ。
ここ以外に生えている場所は分からないし、ミッシェルもこんな植物は知らないと言っていた。
なら、ここで育ててしまおうという訳だ。
「サナティオ量産計画」
開始だ。
まず、種と思わしき物を植えてみよう。
サナティオの実は、梨のように実の中に種がいくつか並んで入っている。
それらを取り出して、俺の庭に植えてみた。
植物を育てた経験なんて、小学生の時に苺やミニトマトを少しぐらいだ。
「ふむ......」
何となく地面を耕し、等間隔に種を植える。
こんなのでちゃんと育つのだろうか。
水は一日二回ほどで良いか?三回は何だか多いような気がする。
「たっぷりやるからな。早く大きく育つんだぞ」
取り敢えずいくつか種を植え、今日一日は終わった。
相変わらず練習は続けているが、強くなっているような感じはしない。
正直、今の俺にはこの実だけが頼りだ。
どうかサナティオが、俺の武器となってくれることを祈る。
......悔しい思いはあるけどな。
俺があれだけ必死に練習していたのに、この果実は俺よりも優れた効果を持っている。
たた食べるだけで、どんな状態異常も治してしまう。怪我だって一瞬だ。
だが果実に嫉妬しても仕方がない。
利用出来るものなら利用する。それが、勇者パーティーを追い出された俺の生き方だった。
──────────
「......それで?」
「えっと......その......途中で落としてしまいまして......」
翌日の昼。
俺は、また驚かされていた。
コンコンと扉が叩かれる音がし、もうミッシェルが帰って来たのかと期待していた訳だが......確かに帰っては来ていた。
シャノンとモーナを連れて。
「はぁ......どこまで行けたんだ?」
「にゃはは......森は抜けたぜ。けど、ちょうど魔物に襲われてしまってな」
倒すことは出来たが、実をほとんど落としてしまったらしい。
それでは、村に帰っても病気を治すことは出来ない。
だが、毎度帰ってくるなんてまるで中間地点の無いゲームのようだ。
途中でミスをしたら、また最初からになる。
それで困るのは、ずっとスタート地点にいる俺もなんだがな。
「分かった。すぐに収穫してくるから少し待っててくれ」
まったく、世話の焼ける。
ミッシェルにはどんなお礼をしようかと考えていた所なのに、このままだと呆れてしまいそうだ。
二人を守ってくれているというのは分かるし、同行してくれているだけでもありがたい。
だが、二人に好き勝手させるのは少し不満だな。
サナティオはまだ残ってはいるが......というか、減るどころかどんどん実っている訳だが、それでも無限に発生する訳では無い。
ここ以外にまだサナティオの存在を確認出来ていないのだから、大事に扱って欲しいものだ。
「もう二度と無駄にはしないでくれよ。頼むから、無事に村まで送ってくれ」
「にゃは。任せろって」
任せた結果がこれなのだがな......シャノンとモーナも申し訳なさそうな顔はしているが、何だかな。
もっとしっかりしている子達かと思っていたのだが、実はドジっ子だったりするのだろうか。
「じゃ、行ってらっしゃい」
──────────
一日経って、庭の様子を見に行った。
すると驚くことに、もう芽が出ていた。
「嘘だろ......昨日植えたばかりだぞ」
流石にこんなに早く育つ植物は、俺の世界でも存在しなかっただろう。
変なことは何もしていない。ただ水をやって、俺はいつも通り回復魔法の練習をしていただけだ。
異世界の植物は育つのが早いなどという話も聞いたことがない。
サナティオが特別なのか、それともこの環境が特別なのかは分からないが、とにかく異常な早さだった。
「んー、この調子だと一ヶ月ぐらいには実りそうだな」
「なっ、そんなに早いのか!?」
「にゃは。私も驚いている。けどこの成長速度から考えるとな」
農業というのは楽じゃないと聞いていたが、こうも簡単に育ってくれると楽しいものだ。
だがここまで来ると怖いくらいだがな。
しかし、ミッシェルがそう言うのならそう......ミッシェル?
「......なぜここに?」
「にゃはは......えーっと、その......ごめん」
後ろにはシャノンとモーナの姿が見えた。
おいおい......おいおいおいおい、まだ昨日送り出したばかりだぞ。
しっかりしてくれよ......これで帰って来たのは三回目だ。
二度あることは三度あるとは言うが、ここまでとはな。ミッシェルは一体何のためについて行っているのだろうと考えてしまう。
「......分かった。俺もついて行こう」
「んなっ、それは......」
「いいや。ついて行く。シャノンとモーナのご両親も心配しているだろう。いい加減、帰らなければならない」
そうだ。
もういっそ皆で村へ向かおう。
そうすれば、俺が迷子になることも無いだろうし、ミッシェルがまた帰ってくることも無い。
どうせ家に居たってやることも無いしな。
「そうと決まれば明日からまた出発だ。今度こそ村へ向かうぞ。家にはいつでも遊びに来てくれていいが、それは村の人達を安心させてからだ。いいな?」
「はい......」
「すみません......」
「ごめんな」
やれやれ......まぁ事故を咎めても仕方がないが、流石に三回目も戻って来るのは無いだろう。
そんなに俺が好きなのか?などと冗談も言えないくらいだ。
俺としては、いつまでもここに居てもらっても良いのだが、それはご両親に顔を見せて安心してもらってからにしてほしい。
──────────
村までの距離は遠い。
まず、俺の家を囲んでいる森を抜けなければならない。囲んでいると言っても、すぐ側に森がある訳ではなく、ある程度平地が続いてから森が出てくる感じだ。そうでなければ、魔物にいつ襲われてもおかしくないような環境になってしまうからだ。
それに俺の家はちょっとした丘の上にあり、若干の坂道になっている為魔物も襲って来にくくなっている。
が、それは俺が遠出した際の帰り道を辛くしている原因でもある。
「出発だ」
家の近くの森は背の高い木が多く、朝になってもまだ暗い時間が長い。
魔物は、夜中活発に動く種が多いが、森の中は木漏れ日などの影響で暗くとも襲って来る魔物は比較的少ない。
しかし襲われない訳では無い為、やはり警戒が必要な訳だが。
そこは、ミッシェルと俺で何とかすることが出来る。ここはまだローテリトリーで、弱い魔物しか居ないからだ。
だが森で気を付けるのは魔物だけでは無い。大型の肉食動物や、それらを捕食しようとする植物などもある。
まったく、異世界というのは気が抜けなくて疲れる。
「よし。ここらで一旦食事にしよう」
森の中で休憩を挟み、朝食を済ませるとまた歩き出した。
何回か休憩を繰り返し、戦闘も二、三回した所でやっと森を抜ける。
街へ向かうならもっと早く森を抜けられるのだが、今回は少し違う道だ。
街に寄り道をして回るルートもあるのだが、その分時間もかかるし、どうせ街周辺の森には魔物が居ないのだから行く必要が無かった。
何より、金も無いので街によってもやることが無い。
もう一泊する程の金もないし、達成した依頼も無い。まぁそれは、シャノンとモーナを無事に送り届けてから帰りに依頼を達成して行けばいい。
「にゃは。大丈夫か?」
「あぁ、俺は問題ない。二人も......もう慣れてるって所か」
流石は三回家に戻って来た事はある。
お陰でこういう険しい道には強くなっているようだ。
道中怪我をしても、俺の魔法やポーションタイプのサナティオで治すことが出来るし、ミッシェルもいるから戦闘になっても安心だ。
初めからこうしておけば良かったな......まぁ結果論に過ぎないか。
「アクルさん......その、サナティオを少しだけ食べちゃっても良いですか?」
「え?」
良いわけ無いだろ。村に持って行く用なのに、ここで食べたら元も子もない。そんなだから、ずっと村まで行けないでいるんだ。
と、言いたいところだが......
「そう言うと思って、少し多めに持って来たんだ。だがもう食うなよ?これ以上は無いからな」
「ありがとうございます!!」
ミッシェルとモーナにもやった。
三人は、とても美味しそうにサナティオを食べる。
回復アイテムとして持っていたつもりなんだが、いつの間にか、おやつになってしまったようだ。
俺も少し食べるか。三人は物凄く気に入ってくれたようだが、俺はそこまでハマってはいない。
まぁ美味しいとは思うが、常に持ち歩いていたい程では無い。
「とても美味しいです!」
「それは良かったよ」
森を抜けると草原がしばらく続いた。木が極端に減り、花が増えた。俺が元いた世界では見たこともないような花だ。白く、そして美しい。
風によって舞う花びらは、幻想的な風景を魅せてくれる。
もう少し歩くと、大きな湖があった。空のように綺麗な青色をしている。
上からでも魚などの生物が見える程の透明度だ。
こんなに透明なのは、人がゴミを捨てて汚したりなどをしないからなのだろう。
魔物も居らず、蝶々が飛び回るほどに平和だ。
最初の冒険は、ここから始めたかったものだ。
「あれです。あの岩の向こうに、村があります」
遠くに見える岩。あの背の高い岩が生えている場所は、大きな丘になっている。
いや、丘と言うよりちょっとした山だ。
まだ向こう側がどうなっているのかは分からないが、回り道が出来るようなルートは無い。このまま素直にまっすぐ登るしか無さそうだ。
「よし......頑張るか」
しかし随分と歩いたな。
また村にまで辿り着けていないが、既にクタクタだ。
よく二人で、あんな遠くまで来れたものだ。
素直に尊敬する。
丘を登る前から、俺の足はもう感覚を失い、気力だけで歩いている。
流石のミッシェルも少し疲れているようだが、獣人なだけあって人族の俺達よりは体力が残っている様子だ。
肝心の二人はと言うと、もう無意識下で歩いていると言った感じか。
段々と口数が減って来ていたが、もう一言も喋らなくなっていた。
俺の回復魔法で、体力も少しづつ回復させながらここまで来たが、俺自身の魔力が尽きてしまってはどうしようもない。
魔力を使って魔力を回復させることは出来ないのだ。
「はぁ、はぁ、はぁ......遂に見えたな......」
丘というには少々大きな丘。その頂上の岩の上で、俺達はやっと村を見ることが出来た。
ここから後は下るだけ。登りに比べれば幾分かマシだ。
そこまで大きな村では無いが、120人の村なだけあってそれなりの広さがある。
多分、俺が通っていた学校よりは大きな土地だ。
「転ばないように注意しろよ」
ゴールが見えたからと言って油断していてはいけない。
下り坂の方が転ぶ確率は高いんだ。
俺達は十分に注意しながら、山を降りた。
「やっと......辿り着いたな」
「はい......」
「疲れた......」
村。
シャノンとモーナが来た場所。
村は四、五メートル程の大きな壁で囲まれており、人や魔物は簡単には入ることが出来ないようになっている。そして何台か設置してある高台で、弓を持った見張りが監視しているという仕組みだ。
二人が案内してくれたのは、大きな門だった。
人が出入りするならこんなに大きい必要は無いだろうと思ったのだが、巨大な生物を狩った際に運び込めるようにおおきくしてあるそうだ。
門の目の前で、シャノンが大きな声で叫ぶ。
「シャノン、モーナ、ただいま帰りました!!」
見た目によらず大きな声を出すシャノン。意外と体力もあるようだし、元気が良い子のようだ。
それもそうか。
そうでなければ俺の家付近まで捜索しに来ることも無かっただろう。
シャノンの声を聞きつけ、門が開いた。
ゴゴゴゴゴという音がして、まるで城の門でも開いたかのような雰囲気がある。
中からは、数人の男が出てきた。
ただ一人、猛ダッシュで駆け寄る人が。
「モーナ!!」
「お父さん!」
優しそうな人だ。
数日ぶりに帰って来た我が子を、涙ながらに抱きしめていた。
「ごめんなさい......ごめんなさい......」
「良いんだ。お前が無事なら......それで良い......」
モーナも、子供らしく泣いた。
さっきまでクタクタだったのに、まだ泣く気力は残っていたようだ。
しかし、シャノンの迎えは来ないようだ。
「シャノン!!」
俺は、少し驚く。それほど大きな声が、村の奥から響いて来た。
村の人達が続々と集まってくる中、道を開けて一人の男が歩いて来た。
この人がシャノンの親だろうか。
顔は強ばり、怒っている様子にしか見えない。
一歩一歩シャノンの元へ近づき、上から見下ろす。
ピリピリとした空気。いつ引っ叩かれてもおかしくない。
これはまずい。俺は思わず声を出していた。
「あ、あの......」
ガバッと、男は一瞬でしゃがみ込む。
そして同時に、シャノンに強く抱き着いた。
「シャノン......心配したんだぞ」
「すみませんお父様......私......」
「お前まで居なくなったら俺は......」
モーナの父親程では無いが、よく見るとこちらも涙を流している。
良かった。二人とも、ちゃんと愛されているのだな。
家族との再会を熱く済ませた後、俺達は村へと案内された。もしかしたら勘違いで捕らわれてしまうのでは無いかとも考えていたが、その必要は無かったみたいだ。
シャノンとモーナの説明もあって、俺とミッシェルはあっさりと歓迎された。
「アクル殿、この度は本当にありがとうございます」
「なんとお礼をしたら良いのやら」
「いえ。困っている人を助けるのは、当然の事です」
ちょっと言ってみたかった台詞を口走ってみたが、ミッシェルはそんな俺を見て目を細めた。
何だよ。別にこんな時くらい格好つけても良いだろ。
「せめて、出来る限りのおもてなしをさせていただきたい」
シャノンの父親は、この村の村長だった。
村長の一人娘。そのとても大事な子が、親友と一緒に内緒で村を飛び出して行ったのだ。
心配しない訳がなく、大人達は今までずっと捜索をしていたそうだ。
そんな時に突然、捜していた娘達が帰って来た。
お礼のひとつもしたくなるものだ。
まぁ俺もミッシェルも疲れているし、ここで少し休ませて貰うつもりではあるが、お礼というのも受け取った方が向こうとしても嬉しいのだろう。
「ん......なら、その前にもう一つ」
俺は、待って来たサナティオを出した。
見様見真似で覚えていた氷魔法。かき氷をひとつ作れる程度の氷しか出せないが、サナティオが腐らないようにするには十分だった。
「村で、病が流行っているとお聞きしました」
村の奥まで俺達を案内せず、なるべく住人たちと合わせないのもそのせいだろう。
「どうかこれを、試して貰えませんか?」
結論から言うと、サナティオの効果は絶大だった。
みるみるうちに村の人々は元気になり、すっかり病気からは開放された。
どうやらサナティオに治せないものは無いようだ。
俺達はこの上ない程歓迎され、ちょっとしたお祭り騒ぎだった。
料理は美味しく、転生したばかりの時に城で食べたよく分からない高級料理なんかより俺の口に合うようだった。布団もフカフカだったしな。
お礼の更にお礼という形になってしまうが、ここまで持て成されるとこっちも何かお返ししたくなってしまう。
確定では無いが、サナティオの栽培方法を教えた。
本当は俺しか栽培方法を知らないというのが一番嬉しいのだが......また取りに来られても困るからな。
いっそ栽培してもらっていた方が、こっちとしても助かる。
これも人助けだと思い、方法をメモしながら教えた。ミッシェルによると一ヶ月程で収穫出来るようだし、シャノンとモーナが俺の家まで押しかけて来ることは無いだろう。
「もうなんとお礼を言えば......」
「良いですって。例を言うなら俺じゃなくてシャノンとモーナに言ってください。二人と出会わなければ、ここへ来ることは無かったでしょう」
まぁ悪い気はしないが、それでも実際に治したのは俺じゃなくてサナティオだ。
見つけたのは俺とはいえ、何とも言えない感情になる。
泣きながら礼を言われても、少し胸が痛くなってしまうのだ。
「そうだ。アクル殿、つかぬ事をお聞きするが、配偶者はおられますかな?」
「い、いえ......俺は独身ですが......」
独身というか、まだ高校生なのですが。
ここに来て結構経ってはいるが、年齢的にはまだ高校生だ。
この世界の結婚制度がどうなっているのは知らないが、まだまだ若いのでは無いだろうか。
「もし宜しければ、うちのシャノンなんてどう─────「ちょっと、お父様!!」
え?
今のは何だったんだ?
まさか、娘と結婚してくれだなんて言わないだろうな。
シャノンも顔を赤らめて、明らかに照れている様子だ。
「どうだろうか。娘を貰ってはくれないか?」
「は、はっはっは......か、考えておきます」
冗談だと思いたい。
どうか冗談であって欲しい。
いや、俺だってこんな可愛い娘さんを頂くだなんて、そりゃあもう嬉しい限りだ。
だが、だからこそよく考えたい。
冷静になれ俺。
お互いまだ若いじゃないか。
もう少し歳を重ねて、成長してからでも遅くはないだろう。
でも、今すぐじゃなきゃ駄目だと言うのなら仕方ない。
「......」
ふと、視線を感じた。
ミッシェルが、冷たい目でこちらを見つめていた。
俺は、少し冷静になった。
「そ、そろそろ俺達は出発します。ここにいつまでもお世話になる訳にもいかないので」
「こちらは構わないが......いつまでもいてくれて良いんだぞ?」
「いえ、やりたいことがありますので」
そうだ。
俺には勇者パーティーを見返してやるという目標があるのだ。
その為にはサナティオが必要だし、それはここではなく家にある。
ここに住むにしても、家を放置することは出来ない。
「ご馳走様でした。ご飯、美味しかったです」
「アクル殿は、我々村の住人。そして愛する娘達をの命を救ってくださった方です。いつでも、ここへ来てください。精一杯、歓迎させていただきます」
「アクルさん、ミッシェルさん。本当にありがとうございました!絶対にまたお会いしましょうね」
「もちろんだ。こちらこそ、色々と世話になった。ありがとう」
俺達は、村を後にした。
驚く事に、馬を二頭頂いたお陰で、帰りはあっという間だった。
もちろん俺は馬に乗るのは初めてだった訳だが、流石はミッシェル。手取り足取り丁寧に教えてくれて、たった一日で最低限乗ることくらいは出来るようになった。
始めから馬を持っていれば、大変な思いをせずに済んだ訳だが、何せ金がないからな。
この馬だって、貰ったは良いが世話出来るかどうか正直怪しいところだ。
まぁ貰ってしまったものは仕方ないので、何とかしよう。
今日はまた誰かの役に立つことが出来た。
俺のヒロイン候補も出来たわけだし、もしかしたら俺の人生でも一二を争うほどの出来事だったかもしれないな。
異世界に来て良かったと心の底から思ったのは、今日は初めてだった。
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