13.女勇者は、伝説の剣(非減価償却資産)を手に入れた!

■冒険者ギルド・受付窓口にて――


女勇者「――というわけで、これを見て下さい♪」

男商人おっさん「またいきなりだな……」

エルフ「あら、ひょっとしてそれは――?」


女勇者「ふっふっふ、なんと大冒険の末に、

    あの【伝説の剣】を手に入れちゃいました!」


男商人「おっ、それは本当にすごいじゃないか!」

エルフ「伝説の剣と言えば、精霊が”奇跡で鍛えた”と云われる聖剣です。

    その価値は測り知れません」


女勇者「にひひぃ~もっと褒めてもくれていいですよ♪

    なんせドラゴンの鱗でも一刀両断できるほどの切れ味で、

    しかも自動修復機能があるから、刃こぼれ一つしないんですよ!」


男商人「……え?」

エルフ「……あら?」


女勇者「はい? あの、だから自動修復機能があって鍛冶要らずで――」


エルフ「……そうでございますか」(視線をそらす)

男商人「……あちゃー」(頭を抱える)


女勇者「ちょ、何ですか急にその反応はっ!?」



エルフ「自動修復機能があるという事は・・・

    資産価値が減少しないという事ですよね?」


男商人「つまり”減価償却できない”って事だなぁ・・・」


エルフ「伝説の剣、減価償却できないとは情けない」


男商人「もう使わない方がいいんじゃないか?」


女勇者「あぁ~この感じ久々だな~って、何でですかぁ!?」



 ◇◆ ◇◆◇ ◆◇



エルフ「減価償却できる方が、節税になるのです」


男商人「例えば、女勇者が『4000万円の家』を買ったとしよう。

    そうすると、所有する家屋には毎年【固定資産税】が掛けられるんだ」


エルフ「仮に固定資産税率を1.4%として、毎年56万円を納税する事になります」


男商人「家を買った直後はそれで良いとして。例えば、数十年後に

    この家の価値は4000万円だから、今年も56万円を納税するようにって

    言われたらどう思う?」


女勇者「えっ、家なんて数十年も住んだらボロボロじゃないですか!

    それじゃ税金が高すぎますよ!」


エルフ「その通りです。そこで『資産価値の経年劣化』を加味して、

    固定資産の評価額を減ずる――それが【減価償却】です」


男商人「これを活用すれば、適正な【固定資産税額】になって節税にもなるだろ?」


女勇者「なるほど。そういう事ですかっ!」


男商人「ただ、【減価償却資産】にするには条件があってな・・・」


エルフ「建物ではなく【土地】そのものや・・・

    今回のように経年劣化しない”伝説の剣”は、減価償却の対象外となります」


女勇者「そうきたかー!?」



エルフ「ちなみに、いま女勇者様が装備している【女神の盾】――

    そちらも『芸術性が高く、経年による資産価値減少が見られないもの』

    として、減価償却の対象外となります」


男商人「あと、女勇者が装備している【妖精の鎧】も、

    『考古学的に希少価値があり代替性がないもの』として

    減価償却の対象外になっちゃうかなぁ・・・」


女勇者「そ、そんなぁ~!?」



エルフ「つまり女勇者様は、全身が【非減価償却資産】の装備という事になります」


男商人「これは装備を一つでも壊したら、損失処理が大変だな・・・」


エルフ「もう魔王と戦う際には、脱がれた方がよろしいのでは?」


女勇者「もうこんな異世界い~や~だぁ~!!」(>△<。)


つづく?

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女勇者は「個人事業主」だから確定申告しなさい!? 書記係K君 @key-kun

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