12.ペガサス「レギュラー満タンで!(餌ください)」
女勇者「じゃあ、ペガサスの餌代って、経費にできないの?」
男商人「むう。ペガサスを従業員として雇用してれば、
現物給与(の食事支給)として、【給与手当】に計上したり、
【福利厚生費】の法定外福利に含める方法もあるが」
女勇者「ペガサスは友達だよー。
主従関係でも雇用関係でもありませんよー」
男商人「友達をタダ働きさせるなよ・・・。
んじゃーちなみに、女勇者はどうやって経費にするつもりだったんだ?」
女勇者「例えばですけど、【仕事で使用した自動車のガソリン代】は
問題なく経費になりますよね?」
男商人「そりゃ経費にできるが‥‥いや待ておまえ――」
女勇者「ペガサスの餌も、ガソリンみたいなものかと!」
男商人「友達を乗り物扱いするなよ!?」
■
女勇者「じゃあ結論、ペガサスの餌代は、経費にできないのぉ?」
男商人「少なくとも異世界で【ガソリン代】は無理だろう。
そもそも異世界のエルフ達は、ペガサスに敬意をもって接する。
地域によっては信仰の対象になってるぐらいだ。
荷馬車(のりもの)と同じ扱いにしたら、そりゃ怒られるさ」
女勇者「むむう、そういうトコだけ異世界なんですねぇー!」
男商人「まったく・・・ん、そうか。
ペガサスの餌代、経費にできるかもしれないぞ!?」
女勇者「うえ!?」
男商人「早速、冒険者ギルドに行って、ギルド職員さんと相談してみよう!」
エルフ「ペガサスに供した食事代の件ですか?
残念ながら、その件は――」
男商人「まあ待ってくれ。今回、女勇者が受託した運搬クエストは、
納品先が遠い上に、かなりの短納期だった。つまり業務遂行において、
ペガサスは・・・とても大切な協業相手(ビジネスパートナー)という事だ」
女勇者「びじねす…ぱーとな……」
エルフ「……なるほど。どうぞ続きを」
男商人「一方、物静かなペガサスは、人里の喧騒を嫌うと聞きます」
エルフ「その通りです。それゆえに、
ペガサスと親交を深めるのは、我われエルフでも至難です」
男商人「そうすると、女勇者が手渡すエサを
ペガサスが食べたというのは、友好の証と言えないか?」
エルフ「なるほど。たしかに」
男商人「俺はこれを・・・業務遂行に必要不可欠な
【親交を深める行為(コミュニケーション】だったと考えている」
女勇者「えと、つまり?」
男商人「今回の餌代は……とても大切なビジネスパートナーである
ペガサスとの親交を深めるために支出した【接待交際費】だと主張する!」
女勇者「な、何ですとー!?」
※接待交際費とは
得意先や仕入れ先など、事業に関係する者等に対する接待・供応・慰安・贈答
その他これらに類する行為のための支出を計上する勘定科目。
例:飲食代、香典などの慶弔代、お中元・お歳暮などの贈答代、見舞金など
エルフ「……」
女勇者「いやいや、いくら何でも動物に対する【接待交際費】が許されるわけ――」
エルフ「わかりました。【接待交際費】であれば経費として認めます」
女勇者「え、えええーっ!?」
エルフ「さすが商人様。ペガサス様を、ペット(動物)や乗り物と
同列に考えていては、至らぬアイディア(発想)です。
女勇者「あぁーそっか!
この異世界では、神聖なペガサスを敬い、人間と対等以上の関係で考える。
だから、異世界ならば、動物のペガサスも「接待相手」に成りえると!?」
男商人「そういう事だな。ちなみに【接待交際費】は公私混合されやすい
費目だから、領収書の裏面にでも「年月日、接待相手の氏名、用件など」を
記録しておくと良いぞ」
女勇者「でもそしたら、ペガサスを連れて遊びに行けば、
なんでも【接待交際費】できちゃいますね?」
男商人「むやみに【接待交際費】を積み上げるな。
さもなくば、魔王よりも恐ろしい、税務調査が来るぞ?」
女勇者「やっぱり最後は税務署(だいまおう)ですか……」
エルフ「今、何か仰いましたか?」
女勇者&商人「何でもありません!」
つづく。
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