11.ペガサスが仲間になりたそうにこちらを見ている! 「減価償却資産」にしますか?[→はい/いいえ]

 

◆冒険者労働組合『ギルド』の食堂広間――


料理人「あいよ、バジリスクの親子丼おまち!」

女勇者「はいはーい♪」


料理人「お次ぃ、ミノタウロスのタン塩定食おまち!」

男商人おっさん「あ、俺です」


女勇者「……」

男商人「……」


女勇者「いやぁ~すっかり異世界こっちの料理にも慣れちゃいましたね?」

男商人「いや待て、この食材はどうかと思うぞ……」


女勇者「あ、この作品は異世界グルメジャンルではありませんのであしからず♪」

男商人「誰に説明してんだ? しかし、女勇者が俺に昼飯をご馳走してくれ

    るとは珍しいな……なにか企んでるのか?」


女勇者「ちょっと失礼ですよ、たまには私だって食事ぐらい驕ります!」

男商人「あぁ~そうだな、すまんすまん」


女勇者「……ところで相談がありまして」

男商人「やっぱり企んでるじゃねーか!?」



◇◆ ◇◆◇ ◆◇



男商人「ペガサスの餌代が、経費で落ちなかった?」

女勇者「そうなんですよ。せっかくペガサスと使い魔契約を締結したのにぃ~!」


男商人「でも、あの人見知りの激しいことで有名な幻獣ペガサスと

    よく仲良しになれたな?」


女勇者「ふふん。女勇者わたしはチートの塊ですからね、幻獣からも大人気モテモテなのです♪」

男商人「女勇者の異世界生活ライフはイージーモード全開だな……」


女勇者「いや、ところがですね……この領収書レシートを見て下さいよ!」

男商人「どれどれ――うわ、天翼馬ペガサスの主食は青薬草ブルーハーブなのか?」


女勇者「はいぃ……もともと青薬草ブルーハーブ高級薬品ハイポーションの原材料だから高価なのに、

    今年は暖冬だったから収穫量も減少して、最近はさらに値上がり

    しちゃってて……せめて経費にしたい!」

男商人「さすが幻獣、希少レア度とエンゲル係数は比例するのか……」



男商人「ところで、そのペガサスとの使い魔契約は

    就業期間を定めた『登録型派遣』なのか?

    それとも女勇者の所にずっと駐在する『常用型派遣』なのか?」


女勇者「え~と、仕事(クエスト)の時にだけ召喚するから『登録型派遣』ですね。

    本当は『常用型派遣』にして、お家でペガサスを飼いたかったなぁー」


男商人「おいおい幻獣種レアモンスターを「ペット」扱いするなっての……。

    まあ、日本あっちでは飼い犬ペットを「番犬」という防犯設備上の「器具及び備品(生物:

    耐用年数8年)」として「減価償却資産」扱いにして、餌代や診療

    代を経費に計上した事例もあるらしいけどな」


女勇者「うひぃ~。動物ペットにも耐用年数があるとか、簿記の世界もえげつない

    ですねぇ……。動物ペット関連の費用を、経費にする方法は他にないの?」


男商人「うぅ~む、調教テイミング難易度A級の仔竜プチドラを「使い魔ペット」にした冒険者が、

    冒険業の受注拡大に著しく貢献した「看板竜マスコットドラゴン」だと主張して、

    エサ代などを「広告宣伝費」に計上した事例もあるが……基本的には

    ペットショップ業界や牧場・農場経営のような「動植物」を収益源

    としている事業でないと、経費にするのは難しいだろうな」


女勇者「なるほど、つまり冒険業との関連性を証明こじつけできれば良いんですね♪」


男商人「こらこら、ちゃんとルールを守らないと……魔王の進軍よりも恐ろ

    しい『税務調査』がやって来るぞ?」


女勇者「知らなかったのか、税務署だいまおうからは逃げられない!?」



 ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称などは架空であり、

  実在のものとは関係ありません。税務署だいまおうはとても素晴らしい御方です。



男商人「で、そのペガサスの餌代ってのは冒険業に関係あるのか?」


女勇者「もちろんですよ。数日前、仕事(クエスト)の遠征でペガサスに乗って

    移動したので、その時にペガサスに食べ物をあげたんです。

    これが業務依頼書(クエストブック)だよ」


男商人「ふむ……かなり短納期の運搬系案件クエストだな。これなら業務遂行のため

    にペガサスの移動能力が必要だったと考えて良いだろう。そのペガサス

    の餌代は『使い魔契約』に基づく「労働の対償」なんだろ?」


女勇者「やだなぁ~違いますよ。女勇者わたしとペガサスの『使い魔契約』は、契約

    した相手の窮地には馳せ参ずべし――という古き良き相互扶助ボランタリーの精

    神に基づく異世界ファンタジーっぽい契約です♪」


男商人「……えっと、つまり?」


女勇者「女勇者わたしのためなら、ペガサスは報酬なしタダで働いてくれます♪」


男商人「逃げろペガサス、女勇者こいつはブラック企業だぞ!?」


つづく。

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