第23話 鈍体と鑑定結果

 いぎッッ—


 2日間依頼のために山中を歩き回った上、帰り道に余計な重荷を運んだおかげで全身が酷い筋肉痛になってしまった。


 

 「リュウシンあんたの体は貧弱ねぇ〜もうすぐご飯食べるわよ」

 

 テーブルにだらっと体の上半身を乗せて朝食を待っているところ、横の椅子に座っているユイに脇腹を指でツンツンと突かれる。


 いっっっ


 くすぐったくて体を捻って避けようとしたために上半身の筋肉痛を激しく刺激してしまった。体が思うように動かせない、まるで他人の体みたいだ。


 「や、やめて…」


 「ふふ〜ん、次はここよっ!」


 僕の反応を面白がったユイは他の部位もターゲットにし始めた。


 も、もう無理、誰か助けて—


 「全く何やってるんですか2人とも、はやくご飯食べますよ」


 後ろから朝食を運んできたティエリが呆れた様子で2人を見ている。


 昨日は僕よりも疲れた様子だったのに、1日寝ただけですっかり回復したようだ。流石は金剛ダイヤ級冒険者のフィジカルといったとこなのか?


 

 ◇◇◇


 

 朝食を終えた後に、家を出て3人で街を歩く。


 人通りもいつも通りに盛んで、大きなカゴを背負った行商人も行き交っており、露店や両脇の店からの客引き声も飛び交い非常に活気がある。


 しかしどこかいつもと雰囲気が違うようだ。だがその違いに気づくことができない。 

 

 「さっきから辺りを見回してますけど何かありますか?」


 違和感の正体を把握するためにキョロキョロしながら街を観察していたところを横に歩くティエリに言われた。


 もう聞いた方が早いと思い、街の様子がいつもと違う理由についてティエリに聞いてみた。


 「それは多分『キース大聖杯祭』が1週間後に始まるからでしょうね」


 確かに言われてみれば街の装飾が華やかな物になっている気がする。街の人々もどこか浮ついているような気がするような?


 「分からないけど多分大きな祭りがあるんだね?」


 「リュウシンまさか知らないの?都市セラーナ最大規模の1年に1度のお祭りで、美味しい飲み物や美味しい食べ物のお店がいっぱいでるんだから!」


 ユイは僕が祭りを知らないことに心底驚いているようだ。しかしユイは祭りというよりかは飲食のことしか頭にないようだ。


 僕はスラム街育ちだったから祭りに行く機会がなかった。だからちょっと楽しみだな。


 「大昔にセラーナを襲った魔の軍勢をたった1人で退けた大魔法使いキースを讃える祭りですね。キースが使用していた魔道具の聖杯を、1年に1度だけ宝物庫から出して街の広場に展示するんです」

 

 「へぇ〜よく知ってるわね〜」


「ユイが興味なさすぎるだけでは…?この街に産まれたなら、子供の時から死ぬほど大魔法使いキースの物語を読み聞かせられるのに」


 そんな感じで会話をしながらしばらく街を歩いていると、ついに目的地に到着した。



 ガチャ



  扉を開けるとそこは円形の部屋だった。壁の棚一面にずらっと様々な魔道具がレイアウトされていた。


 カタカタ動くじょうろ、青白く光るランタン、くるくると回るオタマなど用途不明、多種多様な魔道具がある。


 「これは一体なんでしょう?」


ティエリが興味を持ったのは黄色く光り輝く本。


 しかし鎖で縛られた上に南京錠で施錠されていた。本を誰も開かないようにということなのだろうか?


  「なんか面白そうな本ね—」


 ユイが手を伸ばそうとしたその時、男の声が部屋に響き渡った。


  「その本に触れるな!!!」


 部屋の奥の扉から出てきたお爺さんがユイを大声で静止した。

 ユイはビクッと体が膠着した。本まで後数センチのところで指が止まっていた。


 「大きな声を出してすまない、ただその本はとんでもなく危険な本でね、誤って本を開いてしまうと死ぬまで不眠不休で読み続けてしまう呪いにかけられるんだ」


 何でそんな危険な物を店に置いてるんだ…


「ところで私の魔道具店へは何かお買い求めかな?」


 そうだ、ここに来たのには理由がある。決して危険な本を読書するために来たわけではない。


 「今日は売りたい物があってここに来たんです。見てくれませんか?」


 僕がつつみの中から取り出したのはサンダーグリフォンから取れた凝結魔石だ。


 「ふぅむ。少し鑑定させてもらおうか」


 白い手袋を付け、特殊なレンズを取り出して、ありとあらゆる角度から魔石を観察した。

 そして10分ほど過ぎたあたりで店主のお爺さんがようやく口を開いた。


 「鑑定の結果だが—」


ドクンッドクンッ


 緊張の瞬間が僕たち3人に訪れる。



 「なかなかに質がよいねこれは、135ドレールで買い取らせてもらえないか?」


 ひゃ、ひゃくさんじゅうご???

 大体120ドレール金貨くらいになるんじゃないかって話をしていたが、まさか上乗せされるなんて…


 「やったぁぁぁあ!今晩はとびきりのご馳走食べにいくんだから!リュウシンは何食べたいの?あんたが見つけたんだから選ばせてあげるわよ!」


 ユイは大喜びで飛び跳ねている。とんでもない臨時収入が入った僕たちは、豪華な晩飯を食べるべく店を出た。


 

 第23話 完



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スラム産まれの僕でも希少スキル『ガラクタ収集』で人生逆転することは可能ですか? 3代目尊大大魔王サン🐕 @sochandai

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