第21話 宝探しと盗賊

 ピンッ!


 サンダーグリフォンの討伐を終え、もうすぐ帰還をするぞといったときに、僕は第六感的な何かを感じた。


 「なにグリフォンの死体見てるのよ、今日中に帰れるように時間のかかる剥ぎ取りはしないって決めたじゃない」


 リュウシンがじっとサンダーグリフォンを見つめていたところ、ユイが肩を叩いて声をかけた。


 「こっちから何かを感じたんだよね」


 サンダーグリフォンは厄介な魔獣だが、革などの素材の価値はあまり高くない。


 肉に関しては味、食感ともに食べれたものではないらしい。そのため時間を費やして解体、剥ぎ取りを行うのはやめたのだ。


 そうなんだけど、何かを感じたんだよな…この感覚はどこか覚えがある。

 

 だが思い出せずにモヤモヤしながら悩んでいたところ、ティエリが言葉を発する。


 「もしかしてあなたのスキルが反応してるんじゃないですか?」


 確かにと少し納得した。スキル『ガラクタ収集』でサーチした時にのある物を見つけた時と同じような感覚だ。

 

 だけどこのスキルはパッシブスキルではない。

 スキルを発動したわけじゃないのにどうして感じ取ったんだろう…


 「はやくスキル使ってみなさいよ」


 目を輝かしたユイが急かす。宝探しスキルが何かだと思っているのだろう。


 まあいいやとりあえず使ってみよう。


 『ガラクタ収集』


 目の前にパネルが現れる。そこには半径30メートルをサーチしたアイテム名が羅列された。

 その中を少し探すと、それと思わしきアイテム名を見つけた。

 

 【凝結魔石】


多分これだ…物体の位置を探るとやはり、サンダーグリフォンの亡骸の方角から感じる。


 呼び寄せを行うとサンダーグリフォンの体内からこぶし大の物体が飛び出してきた。


キャッチして眺めてみる。見た目は赤黒く透け見える鉱石のようだ。


 「なんなのよこれ?」


 覗き込んだユイだったが、この物体の正体は分からないようだ。一方でティエリは何か思い当たる物があるようだ。


 「こ、これはおそらく魔石です。…モンスターの中でごく稀に生成される、体内で何十年もの間、魔力が澱のように蓄積し凝縮された物です」


 「でこれ高いの?ねえ?」


 「見た感じ綺麗な石ころにしか見えないけどな〜」


 ティエリはどこか緊張した様子で語る。ユイはこの物体の価値に興味津々だが、僕にはあまり凄いものには見えない…

だけど『ガラクタ収集』が反応した物だからそれなりに価値があるのかもしれない。


 しかしその考えはすぐに吹き飛ばされることになる。


 「このサイズの物を魔導具店で見ましたが、値札には120ドレール金貨と書かれていました」

 

 「「ひゃ、ひゃくにじゅう!??????」」


 ティエリの金額発表に僕とユイは驚愕の声を上げた。


 凝結魔石は魔導具に用いられる物だが、大きければ大きいほど中に秘める力も大きくなるらしい。


 飛龍などから稀にとれる更に巨大なモノは、値段の桁がこれより更に1つ上がる。

 魔導飛行船の動力源や、街の守護結界の要などに使用されるとティエリが言っている。


 

 

 ◇◇◇


 「へへへ、帰ったら何食べようかな…ラメロブスターの丸ごと焼きの気分かな?」


「万能爆破の魔導書にしようか、それとも火力上昇の書に、いや魔力エリクサーを樽で買うのもいいな—」


 都市セラーナへの帰り道にユイはずっと帰ってから食べる料理のことを考え、ティエリは帰ってから買い足したい魔道具のことを考えている。


 推定120ドレールの魔石、単純に3人で割ると40ドレール金貨。


 ユイ、ティエリと違い、降って湧いたこの大金の使い道に関して僕はあまりピンとこない。

 だからこの件は一旦置いといて、帰ってから考えることにした。



 ドドドドドドドド!


 歩いていると後ろから大きな足音が複数聞こえる。目を凝らすと5匹の馬がこっちに走ってきているようだ。その上にはローブを纏った人が騎乗している。

 

 このまま通り過ぎて都市セラーナへ走り去ると思い、僕たちは道を開けた。

 しかし馬に乗った人達は僕達の前で止まり、そして口を開いた。


 「クンクンクン、お前ら金の匂いがするな」

 

 「そうだな、プンプンするぜ」


 何だこの人達…


 「私たち疲れているので、用がないなら行かせてもらいますね?行きましょう2人とも」


 ティエリは相手にせずそのまま帰ろうとする。


 「おい待てい!俺たちはドルトーネ盗賊団と言ってな、見つけた獲物は骨の髄までしゃぶり尽くすってのがモットーなんだよ」


 男達は頭まで被ったローブを脱ぎ捨てる。頬には全員お揃いのネズミのタトゥーを入れている。


 そういえば依頼を受ける時に、掲示板で盗賊がどうとかの依頼も見たような…


 「で、私たちをどうしようって言うんですか?」


 ティエリが面倒くさそうに尋ねる。


 「金目のモノ全部置いてけ、そしたら命と服だけは見逃してやるよ」

 

 盗賊の男達は馬から降りて剣を抜いた。


 「あなた達じゃ相手になりませんよ」


 ティエリがそう言った瞬間、ユイが目にも止まらぬ速さで剣を振り抜いた

 そして右端の男の手首が宙を舞った。


 ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!


 夕暮れの草原に男の断末魔が響き渡る。


 「盗賊ってたしか懸賞金がついてたわよね?」

 

 ユイは剣についた血を振り落としながら聞く。


 「このアマっ!!!」


 盗賊との一戦が唐突に始まった。


 

 第21話 完


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