第20話 ビリビリ鳥とアチアチ蛇

 次はあっちの番ってことか、まあ作戦通りやるしかないな。

にしてもティエリもとんでもないことを考えるな…


 上空では黒く蠢く雷雲が発生し始め、サンダーグリフォンはツノから発電を始めた。体軀は電気を帯びてバチバチと音を鳴らして発光している。


 あちらは様子見をやめて、本気マジの攻撃が始まる。


 「じゃあユイ、お願いします」


 そう言うとティエリがユイの背中におんぶされる形になった。

 

 はたから見るとすごい間抜けな図だ。


 「本当にこの作戦で行くの?」

「ときどきティエリって突拍子もないこと思いつくよね、まさか私が背負って相手の攻撃を避けつつティエリが攻撃するなんて」


 今までサンダーグリフォンと戦闘した冒険者によってまとめられた報告書では、序盤は爪や牙によるシンプルな攻撃を主体とする。


 しかし相手を敵と認めると本気を出して、電撃による遠距離攻撃が主体になると書かれている。


 障害物の無い開けた尾根で機動力のないティエリと、サンダーグリフォンとで遠距離攻撃の撃ち合いをするのはこちらの分が悪い。


 そこでユイの起動力とティエリの遠距離攻撃を合体させる奇策が生み出されたのだ。


 「ではこちらで気を引くのでリュウシン、お願いします」


 「じゃあ行くわよ、ティエリは振り落とされないでね!『身体強化フィジカルブースト』!」


 土煙をあげて遠ざかって行った。


 人を1人背負ってあんなに速いんだ。あのスキル僕にも使えないかな…


 ユイがスキルを発動して走り出した。山の尾根は岩などがあり足元は良くない。それでも驚異的な脚力によって猛スピードで的を絞られないように移動している。


 ティエリがユイの背中から炎の塊を撃ち出し始めた。

 サンダーグリフォンも上空で回避しつつ、雷撃をツノの先から繰り出す。


 激しい戦闘の音が尾根に響き渡る。


 よし、僕は僕の役割を果たさないとな。スキル『ガラクタ収集』を発動して、能力で収容していた『賢者の腕サージュボーン』を取り出す。


 

 ◇◇◇

 


 「そろそろ身体強化フィジカルブースト持続時間の限界よ!」


 ティエリを背負って走り続け、攻撃を避け続けているユイだが限界が近いようだ。


 「分かった。十分に気を引けただろうし、後は相手の動きを止めたら私たちの仕事は終わりです」


 ティエリは上空にいるサンダーグリフォンに杖を向けてスキルを唱えた。


 『沙羅曼蛇サラマンダー


 5匹の猛炎で形を成す蛇が柱のように天に立ち昇る。サンダーグリフォンはその危険性を本能的に察したようで、空中で錐揉みを行い回避運動を取る。


 ギュオオオオオオオオオッ!


 しかし蛇の猛追によりついに捕まった。サンダーグリフォンの全身に、灼炎の蛇がまとわりつくと大きな鳴き声をあげた。

 

 サンダーグリフォンは大量の電気を発生させて攻撃を振り払おうとしている。


 その時、別地点から発せられた強力な魔力の反応をその場にいる全員が感知した。


 「なにこの変な魔力の感じ…」


「冒険者学校で1番魔力探知が下手なユイでも流石に感じるんですね。まあ見てれば分かりますよ」


 その瞬間少し離れたところから巨大なエネルギーの塊が放出された。エネルギーが増幅されながらサンダーグリフォンに向かっている。


 バリバリッ!


 何とか灼炎の蛇による拘束を破ったサンダーグリフォンだったが、この致命的な一撃を回避するには間に合わなかった。


 ドゴォーン!と大きな音を立て、黒煙を纏いながらサンダーグリフォンは墜落した。


 「もしかしてあれって…」


 驚愕するユイにティエリが答える。


 「ユイはまだ見たことありませんでしたね。あれがリュウシンの能力です」


 「話は聞いてたけどまさかあんな強力な魔法を使えるとは思ってなかったわ、軽く金剛ダイヤ級はありそうな威力だったわよ!」


 ◇◇◇

 

 はぁ〜初めてこんな遠距離攻撃したけどかなり集中しないといけないから疲れるな…

 ただ当てるだけじゃダメだったから余計にだ


2人と合流するためにサンダーグリフォンの墜落地点にリュウシンは向かう。


 「遅かったわね、ていうかさっきのアレなによ!」


 墜落地点に到着するなり少し先に着いたユイから能力について質問されたが、それよりも先に依頼の達成を確認することが大切だとティエリに遮られた。


 黒煙が晴れると息絶えたサンダーグリフォンの姿が露わになった。左翼側は損傷が激しく、大きく削り取られたように消え去っていた。


 「良かった…頭が消し飛んでなくて」


 ティエリがそう言って亡骸の側にナイフを持って近寄った。


 そして頭部にあるツノを切り取り始めた。


 依頼を達成したことをギルドに報告するためには何かしらの証拠が必要なのだ。

 今回の依頼ではサンダーグリフォンのツノが必要となっていた。そのため頭部を消し飛ばさないようにとティエリに念を押されていた。


 「これで任務完了です!」


 ティエリは切り取ったツノを掲げると、僕はどっと疲れが来て尻もちをついてしまった。


 なにわともあれ無事、初めての依頼を達成することができた。

 僕は冒険者としての第一歩を踏み出した。


 第20話 完


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