第16話 発光と依頼受注

 「ギルドに行く前に寄りたいとこがあるんだけどいいかな?」


 「いいですがどこへ?」


朝に家を出る用意を終えた後、僕はティエリに提案する。



 昨日鍛冶屋に装備作成の依頼をした時、店主のおじさんに出来上がるまで時間がかかるから、それまで代わりの装備を貸し出すと言われていたのだ。

 

 ◇◇◇


 「よぉ、きたか坊主!」


鍛冶屋に着くと店主は朝から汗だくの様子で、熱気を纏いながら奥から出てきた。奥は作業場なのだろう。


 「よしこの中から好きなの選べ」


そう言うと店主は、肩に担いでもってきた大きな包みをドサッと地面に広げて見せる。


 中身はナイフや小さな剣や黒い鞘の刀、両刃の剣やサーベル、木こり用の斧、さらには角弓、丸弓など多種多様の武器である。


 しばらく考えたが正直なところ、決めかねるというのが本音である。何しろ剣を初めて握ったのはほんの数週間前、自分に合った武器など分からないのだ。


 よしこうなったら、迷宮で初めて武器を探し出した時と同じように…


 多種多様な武器を前に手をかざして唱える。


 『ガラクタ収集』


そうすると目の前にパネルが現れて武器の名前が表示される。


 【ナイフ 短剣 無銘ノ太刀 嵓山剣 錆びた斧 角弓 丸弓…】


 この中から前と同じように1番を放っている物を呼び寄せ—


 何故か呼び寄せる前にスキルの発動が止まってしまった。


 そのとき小さいパネルが下に現れた。

 そこには注意書きのような一文が書かれている。


 ※他の対象に所有権が発生している物は、収集することができません。

 

 『ガラクタ収集』も流石に何でも呼び寄せることができるわけじゃないんだ。ここの武器は店主のおじさんが持っている物だからか。


 ただ武器の中からすることはできた。


 僕が手に取ったのは黒い鞘に白いつかの刀。名前は確か【無銘ノ太刀】だ。


 「坊主、なかなか見る目あるじゃねえか」

「俺ぁ普段刀は打たないんだが、試しに造った言わば試作品だ。店で売る気はないが会心の出来だ」


 その後店主から魔獣の皮で作った、革の鎧一式を貰った。着ると軽くて柔軟性があるから動きやすい。



 「あの〜店主さん、これ引き取ってもらえないかな?」


 リュウシンがそう言って差し出したのはスケルトンサーベルだ。これは死神グリムリーパーとの戦闘で刃を折られている。


「それならこのくらいか?」


 店主はそう言ってこの剣の売値として6ケレール銀貨を僕に手渡す。完全な物なら5ドレール金貨の価値はあっただろうと言っている。


 ここまでしてくれたのにお金は貰えないと僕は拒んだが、俺がお前の装備を作るのは完全な趣味だから。と無理矢理押し付けられてしまった。


 「坊主、冒険者姿がさまになってるじゃねえか」


 革の鎧を身につけて、刀を腰に差した僕を見た店主が言う。


 「ありがとう!行ってきます!」


店主に感謝を述べたあと、リュウシンは店を出る。


 「へぇ〜店主も太っ腹ねぇ、装備作ってくれる上にタダで貸し出してくれるなんて」


僕の装備を見てユイが言う。ユイは前に迷宮ダンジョンで見た時と同じく、剣と軽装の鉄の鎧を装備している。


 ティエリは迷宮ダンジョンで杖を折られたので新しい杖に変えている。

 白い杖で上の方に赤い宝玉が付いている。


 3人で話しながら歩いていると、石造で三階建の立派な建物に着いた。扉の上の看板に冒険者ギルドと書かれている。


 中に入ると朝というのもあって、依頼を受けに来た冒険者達で賑わっている。

 併設された食事処では朝食を摂る人や朝から酒を飲む人、飲み物を飲みながら仲間を待つ人などが席に座っている。


 リュウシンが初めてのギルドで辺りをキョロキョロ見回していると、冒険者パーティーの男達がその様子を見てヒソヒソと会話している。


 「おいありゃルーキーか?いかにも新人って感じで緊張してやがるぜ」

「いっちょ揉んでやるか?先輩としての威厳を見せつけてやるよ」

 「おいやめとけよ、あいつの後ろにいる白髪の女。最年少で金剛ダイア級に昇格した天才、フーラ・ティエリだぜ」

 「赤い髪の女も白銀シルバーだったような」


そんなことはつゆ知らず、リュウシン達は受付へと向かう。冒険者になるには最初に受付で、冒険者登録を受けなければならない。


 「ようこそ!冒険者ギルドへ!冒険者登録ですか?でしたら5ケレールお支払いしていただいて、ここに手をかざしてください!」


 見るからに新人だなあって感じの受付のお姉さん。とても張り切っている様子だ。


 そんな受付のお姉さんが差し出したのは手型のついた石板だ。ここにかざせば個人の魔力を登録できるらしい。


 「ほら、早く手を置きなさいよ」


 お金を支払った後、ユイに手を掴まれて恐る恐る手をかざした瞬間、石板に付いた白く透明な石が眩いくらいに発光した。


 「え?なにこれっ!眩しい…!」


 突如発光した受付の方を、ギルドにいる人達が一斉に視線を向ける。


 「おい、あのルーキーの魔力量バケモンかよ」


「俺の時はロウソクくらいしか光らなかったぞ」


 登録のついでに発光の強さで魔力量も計ることができるのだが、ここまでの明るさはティエリ以来らしい。


 「迷宮ダンジョンにいた時も思っていましたが、想像以上の魔力量ですね」


ティエリが僕に向かって言うが、どこか誇らしげだ。ユイは眩しさに目をやられて転げ回っていた。


 騒ぎが落ち着いた後、受付のお姉さんが話す。


 「リュウシンさんの登録が完了しました!ランクは1番下の青銅ブロンズ級ですが、見た感じすごい魔力量なのですぐに昇級できると思います。頑張ってください!」


 銅の薄いプレートが付いたネックレスを貰った。これが青銅ブロンズ級の証だ。僕の冒険者としての第一歩!


 その後ギルドにある大掲示板の依頼の一覧を確認する。

 低難度は薬草採取や猪の退治などから、高難度になると北方にある迷宮ダンジョンに住む魔獣の捕獲依頼や、大規模盗賊団の壊滅などがある。


 「こ、これにするわよ!」 「これですか、初めての依頼としてはちょうど良いですね」

 

目が回復したユイが依頼の紙を掲示板から剥がして言う。ティエリも同意している。


 「僕にも見せて!どんな依頼なの?」


【ライメイ山に住む魔獣『サンダーグリフォン』の討伐※白銀シルバー級以上が望ましい】


…これ、本当に初めての依頼で大丈夫?



 16話 完



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