第15話 寂しさと究極の2択
「ただいま〜!…あれ?」
日が暮れた頃に家に着いた僕は扉を開ける。すると怖い顔をして立っているユイとティエリに出迎えられた。
「一体こんな時間までどこに行ってたのよ」
「まだ安静にしていないといけないって言いませんでしたか?」
口調がツンツンとトゲがついている、しまったな。
せめてティエリママと昼ごはんに出掛ける前に、書き置きでも残していけば良かった。
「そんなに怒らないであげて。私が誘ったの、昼食でもどうかな〜って」
僕の後ろからティエリママがひょっこりと顔を出して僕を擁護する。
「お母さん!」「あ!ティエリのママ!」
「やっ久しぶり!なんか最近色々あったみたいだね。まあ無事で良かったよ〜」
ティエリ達とは久しぶりの再会らしく、3人で抱擁を交わしている。
再会を喜んだ後は椅子に座って、最近あった出来事について話をしていた。
そしてティエリママの話を聞くといつもは王都に住んでいて、今回は用事があって都市セラーナに来たんだとか。
「じゃあ私はそろそろ帰るね」
ティエリママがそう言うと席を立ち帰り支度を始める。
「もう帰るの?ゆっくりしていけばいいのに…」
ティエリは少し寂しそうな顔をしてそう言う。この国のトップ冒険者【天帝八峰剣】の第六座ともなれば、冒険者として最高難度の依頼や、国からの直接依頼を受けることがあるそうだ。
常に様々な予定に追われていることは間違いない。
「そんな顔しないで、また会いに来るからさ」
ティエリの気持ちを察したティエリママは、優しく抱きしめて耳元で言葉をかける。
「じゃあまたねティエリ、ユイ、リュウシン君!次はみんなでパスタでも食べに行こうね」
ガラガラガラガラガラ
家の前に馬車が到着すると、ティエリママが乗り込んだ。国トップの冒険者にもなると、個人の移動に馬車を使うんだ。
ティエリママは荷台から手を振っている。馬車が走り出すと、十秒後には遠ざかって見えなくなった。
なんだか嵐のような人だったな。
「それじゃあ、夜ご飯にしましょうか」
ティエリがそう言うと、僕達は家に入って晩飯の支度を始めた。
◇◇◇
「リュウシン、行くわよ明日」
「え、どこに?」
ご飯を食べている途中にユイが僕に話しかける。どこに行くんだろう?
あっこのシチュー、鶏肉がほろほろで美味しい。
問いの答えをティエリが答える。
「明日冒険者ギルドに行きましょう、リュウシンは体が丈夫なのかもう十分元気そうですし」
冒険者ギルドってことは—
「僕の初めての依頼…」
僕にこなせるのかな、ちょっと不安な感じだ。
「心配しなくていいわよ、冒険者として先輩である私達がいるもの!」
ユイはドヤ顔で胸に拳をドンと当て、こっちを見て言う。
「そうです私たちがサポートするから大丈夫です」
ティエリも僕を勇気づけるように、優しい声をかける。
とりあえず僕はできることをやろう。ユイは
すごく心強い仲間、心配することなんて何も無い。そんなことを思いながら食事を再開した。
食事を終え、お風呂から上がってリビングに戻った時、ティエリとユイが何かを真剣に話し合っていた。
僕が戻ってきたのに気づいた2人はこっちに近寄ってきた。
そして2人は声を揃えて僕に聞く。
「「リュウシンは今日、どっちの部屋で寝るのよ!」寝るのですか!?」
「え、それってどういうこと…?」
この家は元々ユイとティエリの2人の家、だから寝室も2部屋しかないのだ。
僕が1週間ずっと目を覚まさなかったとき、僕はティエリの部屋で寝ていた。その間ティエリはユイと一緒に寝ていたらしい。
さすがに申し訳ないので昨日寝る時に、僕はリビングのソファで寝ると提案した。
だけど病み上がりだからダメだとティエリが否定した。そのため昨日も同じ様にティエリの部屋で寝て、ティエリはユイと一緒に寝た。
だけど今日ティエリがこう提案したらしい。私がリュウシンと一緒に寝るから大丈夫だと。理由は
それに対してユイが反論した、私には弟がいるしリュウシンも弟のようなもの?だからリュウシンとは私が一緒に寝ると。
そういうわけで僕は選択を迫られていたらしい。
すごく真剣に話し合ってたから何かと思ったら…
今日色々なことがあってすごく疲れたから眠たい。今にも瞼が落ちそうだ。
「じゃあ3人で寝ようよ…」
こうして僕たち3人は一緒にティエリのベッドで寝ることになった。
ダブルサイズのベッドなので少し狭いくらいだが寝ることはできる。
ティエリとユイは顔を赤らめて一言も発さなくなった。
「じゃあおやすみ」
明日は初めて依頼を受ける、僕の冒険者としての第一歩だ。楽しみだな〜。
第15話 完
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