第14話 予想外と新装備

 「おいおい、坊主が何かやばそうなの取り出したぞ」


  様子を見ていた鍛冶屋店主の男は、『賢者の腕サージュボーン』をどこからともなく取り出したリュウシンを見て言う。


 インベントリスキルを持っていたの?でも冒険者を始めたばかりって言ってたような。それにあの腕の骨、何かの魔道具?異様な魔力を纏ってる。


 同じく観戦していたティエリママは、リュウシンの未知の能力とについて思考する。


 しかし、あまり長い時間を思考に割くことはできなかった。



 「お願い、ちゃんと防御してね!」



  そう言うとリュウシンは腕の骨を掲げた。

 それと同時に魔力が膨れ上がるのを感じる。非常に強力な魔法を発動する前ののような。


 リュウシンからこれから放つ攻撃は多分、黒鉄アイアン級にはとてもじゃないが防げない。それどころか後ろの鍛冶屋まで巻き込みそうだ。

 

 私達に絡んできた黒金アイアン級の男はともかく、昔なじみの鍛冶屋を木っ端微塵にしたら流石に怒られる。


 その瞬間、男に向かって『賢者の腕サージュボーン』の一撃が放たれた。


 見た感じその技は巨大なエネルギーの塊、それを増幅しながら相手にぶつけるモノだとティエリママは分析した。

 

 威力だけを見れば蒼輝鉱ミスリル級に並ぶかもしれない。


 しかしその尋常じゃない威力とは別に、技自体はとてもシンプルなものだ。別方向から強い力を加えて軌道を逸らす!


 地面に両手を当てて唱える。


  『火柱ブレイジング』!


 ティエリママの発動した魔法はリュウシンのスキルの真下から激しい火柱を発生させ、巨大なエネルギーの矛先を斜め上方向へと変更させた。


 ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…


 危なかった…かろうじて攻撃は男の盾にすこし掠ったくらいで上方向へと逸れて行った。

 鍛冶屋が跡形もなく消え去ることもなくなった。


 「ひっ、ひぃっ!」


 男は腰を抜かした様でその場に尻餅をついている。


 「これに懲りたら人を見かけで判断しちゃダメだぞ!」


 ティエリママがそう言うと、男は仲間を連れて走り去っていった。


 


  ◇◇◇




 「ありがとう、あの時ティエリママがいなかったら男の人は…」


 迷宮ダンジョンでモンスターにしか『賢者の腕サージュボーン』を使ったことがなかった。だからあまり考えたことはなかったけど、あれは人に使ったらダメなものだ。


「まあ木っ端微塵だったかもね」


ティエリママが笑いながら言う。



「そう言えばさっきの件だけど—」


 ティエリママが話を切り出す。

 

 うーんさっきの件…


 あっ、思い出した。倒せなかったらパーティー抜けて、ティエリママと一緒に暮らすって話か!


 どうなるんだろうあれは。最終的に倒したと言うか逃げていったし。


 「私としては一緒に暮らしたいから残念だけど合格かな〜、私が割り込まなかったら楽に倒せてただろうし」


 よかった〜どうやらパーティー脱退の危機は免れたみたい。



 「それよりすごい聞きたいことがあるんだけど」


「そうだ俺もだ!坊主あの腕の骨は一体なんだ?」


ティエリママと店主の男が僕に詰め寄る。


 「実はカクカクシカジカで…」


僕は迷宮ダンジョンに転送されてからティエリと共に、迷宮ダンジョンを最下層まで攻略したことを話した。

 そして能力とはそこで得た物だとも。


 「うそだろ、坊主が崩朽迷宮ホウキュウダンジョンをクリアしたって言うのか?だがそれならあの意味不明な力にも納得がいくが…」


なんとかして受け入れようとしている店主に、ダメ押しで『ガラクタ収集』で持ち帰ってきた【断冥の鎌】と【浸冥の外套ローブ】をその場に出す。


 ドゴッ!ドサッ!


 巨大な大鎌と黒い外套が地面に落ちる。


 「もしかして坊主、それって—」


「うん、これ迷宮ダンジョンのボスが持ってたやつだよ」

 

 「なんだこの鎌、見たことねえ素材でできてやがる。斬れ味が良すぎる。それにこの外套もだ。一体何で出来ているんだ?製法も人間技じゃ—」


店主は鍛冶屋の血が騒いだ様で、鎌と外套ローブを見てずっとブツブツ言っている。


 一方でティエリママは何かを考えているのか、ずっと黙りこくっている。


 「どうしたの、ティエリママ?」


迷宮ダンジョンの話に出てきた魔人のことなんだけど、ソロモン十二魔将だって言ってたのよね?」


「そうだよ、名前はアスモデウスって名乗ってた」


 「ソロモン十二魔将は魔族が全盛の時代、約100年ほど前に魔王直属の幹部として君臨してたの」


「でも魔王が討たれてからは全く表には出てこなくなって、もう死んだんじゃないかって言われてたの。どうしてこのタイミングで出てきたのかな」


 「まあここで考えたって仕方ないね、邪魔者もいなくなったし引き続き君の装備探そっか」


 ティエリママと再び鍛冶屋の店内に入る。


 改めて僕は何を武器にするべきか考える。ティエリは僕に魔法の才能があるって言ってた。

 だけど現状のパーティー編成を考えると、魔法攻撃だけじゃなくて近接でも戦えた方がいい。


 思い切ってそのことをティエリママに相談してみる。


 「じゃあ近接も遠距離も両方にしたらいいんじゃない?」


 すごい提案だ、だけど無理がある様な。


 「剣と杖の両方持ち歩くのは不便じゃないかな?」


ティエリは自身の身長と同じくらいの杖を持ってた。それを器用に持ち替えて戦うのも大変そう。


 「君の持つを魔法の杖代わりにしたらいいじゃん」


 『賢者の腕サージュボーン』を指差して言う。


 聞いたところ、今まで骨に焼きついたスキルを使だているうちに魔力の伝導性が高まって、杖と同じ効果を得ているそうだ。


  『賢者の腕サージュボーン』ならいつどこでも僕のスキルで取り出すことができるから利便性は抜群だ。


 

 ガランガラン


 杖について解決したところに、店主が扉を開けて入り口から入ってくる。そして息もつかずにリュウシンに話しかける。


 「坊主、お前の持ってきたやつを元にして装備を作らせてくれないか?」


 「あれを素材にしたらきっとすげぇものが出来る。お代はいらねえ、鍛冶屋として最高の物が作りたいんだ」


店主の目がキラキラと輝いている。おもちゃを目の前にした子供の様だ。


 「彼、ラックは私の昔からの知り合いだからデキは保証するよ」


ティエリママが後押しをする。


 装備を探しにきた僕としても願ったり叶ったりだ。


 「じゃあ、お願いします!」



 

 第14話 完



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