第13話 天帝八峰剣と脱退の危機

 鍛冶屋を出た裏手には、買った武器を試す為の訓練場が併設されている。


 ティエリママが店を出て訓練場へと向かうと、男たち2人もそれに続いた。そしてそれを追いかける様に僕も向かう。


 ◇◇◇


 「で、お姉さんはナニしようって言うんだ?俺たちを外へと連れ出して」


 「もしかして俺たち黒鉄アイアン級に勝てると思ってる?」


  ニヤニヤとしながら男たちは言う。

 装備は屈強なガタイに見合うような鎧を身につけ、1人は剣と盾を待ち1人は戦斧を担いでいる。


 だけどこの2人は気づかないのかな?さっき昼ごはんを食べていた時とは違う、ティエリママの雰囲気。


フロアボス"死神グリムリーパー"やソロモン十二魔将を名乗っていた魔人アスモデウスと同じ様な圧。


 これはおそらく強者が持つ特有の雰囲気なのだろう。


 この人たちはまだにあったことがないんだ。だからティエリママとの力量差が分からない。

 

 「冒険者相手に啖呵を切る。これがどういうことか分かってんの?少し痛い目見てもらうぜ」


男は戦斧を両手で構える。もう1人の男は端で様子を見ている。しかし対するティエリママは武器を何も持たない。

 ここは訓練場のため様々なトライアル用の武器が置いてあるがそれも使おうとしない。


 「おいお前、舐めてんのか?」


その様子を見た男は明らかにキレている。



 「あちゃ〜始まっちまったか。ったくしょうがねえな、坊主もよく見とけよ」


 後ろの鍛冶屋から出て来たスキンヘッドの店主が、僕の頭をガシッと掴みながらティエリママと男の方を見て言う。


 「おい坊主、なんで魔法スキルを使う冒険者は杖を使うと思う?それはな、スキルに指向性を持たせるためだ。


「普通の冒険者は杖がないと、精度が3分の1くらいにまで下がるし威力も半減する。だけどのレベルまでいくとそんなの関係ねえ」


店主が喋り終えた時、ティエリママが男に向けて言葉を放つ。


 「早くかかって来なさい。手加減はしてあげる」


 その言葉に完全に男はキレた。


 『身体強化フィジカルブースト』!!! 


 スキルを使用し、戦斧を軽々と右手で持ちティエリママに向かって突進する。一般人には到底出せないスピードだ。

  

 ティエリママは前に手を突き出し、そして小さな声で唱える。


 『小火球ファイアボール


 小火球ファイアボールはティエリが迷宮ダンジョンで使っているのを見た。だけど全く違う。


 放たれた小さい火球が、突進して来た男の前で炸裂する。閃光と共に、激しい炎と衝撃波が発生する。


 男は爆発によって吹き飛ばされ、数十メートル離れたところで倒れている。


 すごい。おそらく初級スキルの小火球ファイアボール、それに杖も使わないでこの威力…


 

 驚いて言葉が出ない僕に、鍛冶屋店主の男が話しかける。


 「驚くのも無理はねぇ。あの人は冒険者の位で1番上の蒼輝鉱ミスリル級」


 「そして国が認めた最強の冒険者達に与えられる称号【天帝八峰剣】の第六座にいる人だ」


 天帝八峰剣はスラム街に住んでた僕でも聞いたことがある。噂では1人1人が災害級の龍を倒すことができる実力を持つと。


 その天帝八峰剣の第六座、つまりこの国で6番目に強いってこと?ティエリママってそんなに強かったの?


 「おいガイル!大丈夫か!」


倒れている戦斧の男、ガイルにもう1人の仲間が駆け寄り無事かどうか確認している。

 

 「大丈夫よ、手加減はしたから」


 ティエリママは手加減したと言っているけどそれでもあの威力なんだ。


 「てめぇ俺の相棒に何しやがる!」


 男は立ち上がり、ティエリママに向かって怒号をあげる。


 「今のを見てまだ戦意があるんだ。これ以上すると、弱い者いじめみたいになっちゃうしなあ」


ティエリママはすこし考えたあとに、とんでもない考えを口に出す。


「そうだ、リュウシン君と戦えばいいんだよ!」


 「え?僕が?」


 「ティエリちゃんは金剛ダイアモンド、そしてユイちゃんは白銀シルバー級。彼女たちとパーティーを組むなら黒鉄アイアン級くらいは倒せる実力が無いと危険だよ」


「もし倒せなかったら…」


 もし倒せなかったら…?


「その時はパーティーは抜けて、私と王都に来て一緒に暮らす!分かった?」


 ティエリママの目を見るが、決意に満ちた目をしている。


 リュウシンにパーティーに加入して2日目にして脱退の危機が訪れた。


 「おい、俺は手加減できねえぞ?」


男は仲間の仇打ちを誓った目をしている。

 

 パーティーに入って2日で抜けるわけにはいかない。僕はティエリとユイ一緒に冒険するんだ。


 僕は男と向かい合う。そして『ガラクタ収集』の力で収容していた僕の武器『賢者の腕サージュボーン』を取り出す。


 流石に人の腕の骨を街中で持ち歩くわけにはいかない、そのためスキルで収容していた。


 「おいお前、なんだそれは」


 男は驚き、警戒しつつも盾を構えてにじり寄ってくる。


 「お願い!ちゃんと防御してね!」


目の前の男を殺してしまわない様に祈りながら、『賢者の腕サージュボーン』を振り下ろす。



 

 第13話 完



 

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