第9話 再会と出会い

 痛たたたた…身体のあちこちが痛む。


 僕は今、包帯にぐるぐる巻きになり横たわっている。全身の裂傷、打撲、もしかしたら骨にヒビが入っているらしい。

 

 横には瞼を腫らしたティエリが三角座りをしてこちらを見ている。


 死神グリムリーパーとの戦闘を終えて気絶した僕はティエリに手当を受けていた。そしてついさっき目を覚ましたとこなのだ。


 「私は回復スキルの専門じゃないので、応急処置しかできません。とりあえず出血箇所は塞ぎましたが早く迷宮ダンジョンを出て、医者か回復術師ヒーラーに見てもらわないと…」


「とにかく絶対激しい動きはしないでください、傷口が開くので。絶対ですよ、分かりましたね?」


 ティエリは念を押すように言う。


 「分かった、ありがとうティエリ。ティエリがいなかったらもう何回死んでるんだろ」


リュウシンは笑いながら軽口を叩く。


 「それは…ちがっ…」


国でもトップレベルの実力、金剛ダイアモンド級冒険者の肩書き。そんなもの迷宮ダンジョンでは何の役にも立たなかった。

 それどころか足を引っ張ってしまった。彼がいなければ私は—


 ティエリのすでに腫らした瞼の内から、再び涙がこぼれ落ちる。


 「泣かないでよ、2人とも生きてるんだしさ。早くユイさんと合流して帰ろう」


「でもまだあなたは動けるような状態じゃ…!」


 うっ…!


 僕は痛む体に鞭を打ってなんとか立ち上がる。


 内心は今もずっとユイさんのことが心配だろうに、ボロボロの僕に気を遣って何も言わない。

 だからこそ僕はこんなとこで寝てられない。



 「行こう」



 ◇◇◇


 

 フロアボスがいる部屋の先に扉がある。おそらくそこに転送の古代装置オーパーツが存在する。

 


 「ちょっと待って。行く前に少しだけ試したいことがあるんだ」


 気になっていた、戦闘中では試せなかった『ガラクタ収集Lv3』で追加された能力。


 レベルアップの内容として書かれていた文章。

 半径30メートルまでの能力の範囲の拡大。これは以前の能力を単純に強化したもの。

 そしてもう一つ、収集した物3つまで収容することができるというもの。


 僕の魔力量はもうほとんど底を尽きてるけど、もう一回なら発動できそうだ。


 歩いて向かったのはフロアの中心地、死神グリムリーパーの亡骸。


 『ガラクタ収集』


僕は半径30メートルの中から呼び寄せることが可能なアイテムを探す


 【瓦礫 瓦礫 瓦礫 石ころ 石ころ 瓦礫

 冥王の骨 冥王の骨 断冥の鎌 浸冥の外套ローブ…】


 断冥の鎌。とてもじゃないが大きすぎて持てないけど使い道はあるはず。

 あと浸冥の外套。《ローブ》も鎌にも負けない存在感を放っている。これも持って帰ろう。


 2つのアイテムに手を触れ、収容しようと意識する。初めてでコツがいったが一分後にはアイテムが光となって自分の中に消えていった。


 死神グリムリーパーとの戦闘中に初めて発動した『ガラクタ再構築』。上手く使えたから良かったけどもし発動に時間がかかっていたら…


 「そのスキル、すごい便利ですね。普通の冒険者は獲得したアイテムを持ち帰るのに苦労しています」

 

 少し驚いた様子でティエリは話す。


「外付けのインベントリスキルを習得して迷宮ダンジョンに来る人も珍しくありません。」


 「そんなものがあるんだ、魔法は奥が深いな〜」


「帰ったら魔法について学んでみてください。あなたには才能があります」


 ほんとうかな?あんまりピンとこないけど。


 

 用事を済ませたリュウシンとティエリは、ボス部屋の奥にある扉に到着した。


 扉が開くとそこには歯車仕立ての巨大な機械が見える。


 「もしかしてあれが—」


「はい。あれが古代装置オーパーツです」


「ユイが無事ならおそらく20層の古代装置アーティファクト前にいるはずです。」


 「ならはやくいこう」


 ティエリが古代装置オーパーツを何やら操作をしている。

 

 しかしどうやら上手くいっていないようだ。


 「おかしいです操作がききません。というより操作を受け付けてないような感じです」


古代装置オーパーツを使えないとなったら来た道を引き返さなければならない。もうそんな体力は残っていない。どうすれば…


 しばらくティエリが粘っていたが、やはり無理なようだった。



  ギギィ〜



 2人が途方に暮れていたその時、この部屋の入り口の扉が開く音がした。


 入り口から現れたのは長身の男、紫色の髪の中からツノのようなものが生えている。


 どことなく感じる。人間とは違う異質な魔力を。


 それともう1人、赤い髪の僕と同じくらいの歳に見える女の子。だけどどこか様子がおかしい。


 「あれ、先越されちゃったかな?」


ツノの生えた男が声を発する。すごい透き通ったような声だ。


 横にいるティエリが驚いた様子で声を上げる。


 「ユイ…なんでここに!」


あの赤い髪の女の子が、ユイ?


 でも、こんなところにいるわけがないんだ。だってここはの21層以上なのだから。


 「あぁ、この子ね。上の方の階層で拾ってきたんだ。使いすぎてボロボロになっちゃったけどね」


男が淡々と言い放つとティエリは怒りをにじませながら問いかける。


 「貴方はですか?そして私の仲間、ユイを操って手駒にしてここまで来たんですか?」


魔人…魔族の一種で1000年近く人類と争い続けている。人と似たような見た目でツノを生やしていると聞いたことがある。


 「その通り!僕は魔人で【ソロモン十二魔将】の1人。名はアスモデウス。覚えてくれたら嬉しいよ」


 

 どうする、目の前に現れたのは魔人アスモデウスと名乗る男。もはや僕たちに戦う力は残されていない。




 第9話 完



 読んでいただきありがとうございます。星、フォロー、いいね貰えたら励みになります。

 あと時々近況ノートで投稿に関しての話などするのでユーザーフォローもいただかたら嬉しいです。


 迷宮編は次で最後です!

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