第7話 反撃と絶望の刃

 フロアボス"死神グリムリーパー"との前半戦は、こちらの魔力をいたずらに消耗して終わりを告げた。


 僕たち2人が最大火力のスキルを放ったことで得た成果。それはどうやら死神グリムリーパーの持つ鎌の振り下ろしは、大気を切り裂き真空を造り出すという情報。

 そしてその真空によって減少された威力のスキルで、死神グリムリーパーに与えたダメージである。


 「あの鎌のせいで僕らのスキルが弱められたみたいだね」


「そのようですね、非常に厄介な武器です。しかもまだ相手の手の内をほとんど見れていません」


「それに対して私は総量の半分の魔力を消費しています。リュウシンもおそらく半分ほどしか残っていないでしょう」


  目の前にパネルを開くと魔力量のゲージは半分にさしかかっている。


 現状の僕の武器を確認する。スケルトンサーベルと『賢者の腕サージュボーン』。そして『ガラクタ収集』。


 5メートルを超える死神グリムリーパーよりも巨大な鎌に対して、スケルトンサーベルのリーチでは心細いな。『賢者の腕サージュボーン』は撃てて残り2回。『ガラクタ収集』では前の石碑みたいに物をぶつける使い方はできるが果たして効くかどうか。


 ティエリのスキルは僕が見てきた以外にもたくさんあるらしい。しかし最大火力のスキルを抑えられた今、他のスキルを使ってもダメージが通るかわからない。


 「あの鎌の一振りによってどれだけ強力なスキルでも弱められてしまうのなら、あの鎌の防御で対処し切れないほどの手数で攻撃したらいいのです」


  『多弾小火球マルチファイアボール


そう唱えると多数の炎の球がティエリの周囲に生まれる。


 理解した僕の役割、それは死神グリムリーパーの対応が遅れたところに『賢者の腕サージュボーン』の攻撃を差し込むこと。

 

 その時、死神グリムリーパーが動きを見せる。浮遊し、ゆらゆらと近づいてくる。


 死神グリムリーパーに向けてティエリが炎の球をすべて射出する。死神グリムリーパーを全方位から炎の球が襲いかかる。


 全ての攻撃を避けるべく、死神グリムリーパーが数度と鎌を大きく振るう。

 

 「まだまだ、もう一発」


多弾小火球マルチファイアボール


 ティエリは飽和攻撃の手を緩めない。

 明らかに大量の攻撃に死神グリムリーパーの対応が遅れ始める。

 

 僕は鎌の振り終わりを狙い、腕を振り降ろす。


 『賢者の腕サージュボーン』!


 ドゴォーン!


 今回は間違いなく死神グリムリーパーの胴体に攻撃が直撃する。流石にダメージは通ったと信じたい。


 

 その瞬間、強い殺気が死神グリムリーパーから放たれるのを感じた—


 間違いなくを怒らせてしまった。


 死神グリムリーパーが鎌を振り下ろす。


 キィィィィィィイン


 真横を斬撃が通り過ぎ後方の柱に当たり、真っ二つになるのを確認できた。


 再び鎌が振り下ろされる。


 キィィィィイン


 「ティエリ!」


 ティエリは消耗状態でまともに避けられそうではない。


 スケルトンサーベルを構え、ティエリの前に立つ。前方から鋭い斬撃が飛んでくる。

 この剣で受け止めることができるのか、いややるしかない—


 ガキンッ!


 斬撃を剣で受け止める。重いッ!


 しかし、かろうじて斬撃をいなすことができた。


 前を見ると死神グリムリーパーがもう鎌を振り上げ、攻撃体制に入っている。

 表情が不気味にも笑っているように見える。


 キィィイン キィィイン キィィイン


 明らかにさっきより鎌を振り下ろす速度が速くなっている。


 今までのは予行練習だと言わんばかりに幾重いくえの斬撃が飛んでくる—


 斬撃に合わせて適切な角度、適切な威力で剣を振り下ろし、斬撃をパリィする。

 とても集中力がいる作業。少しでも切らしたらどうなってしまうのか。


 今度はこっちのターンとばかりに死神グリムリーパーは鎌を振り下ろすことをやめない。


 時間にして5分ほど。その間死神グリムリーパーの斬撃をいなし続けた結果、スケルトンサーベルは刃こぼれをして斬れ味を失い、まともに斬撃を受け切れずに余波を腕や顔、足などに喰らってしまった。


 リュウシンの身体からは大量の血が流れ落ちる。


 「リュウシン…!」


  ティエリはここまでのスキルの多用によって魔力、体力を大きく消耗し、斬撃が降り注ぐ間一切リュウシンを援護することができなかった。


 もはや反撃の力が残っていないと判断したのか、死神グリムリーパーはこちらに向けてゆっくりと前進する。


 「まだまだ…」


『ガラクタ収集』 『ガラクタ収集…』


近づいてくる死神グリムリーパーの後方から砕けた柱の破片を呼び寄せる。


 ドゴンッ ドゴンッ


 直撃するがもはや相手は意にも介さない。


 スラム街ではもがくことを諦めた奴から死んでいくんだよ。だから僕は最期まで諦めないぞ。


 『ガラクタ収集』を使い、何度も瓦礫がれきをぶつける。


 しかしもう目の前に、絶望グリムリーパーが到達していた。


 僕はボロボロになった腕、握力の入らない手で刃こぼれしたスケルトンサーベルを握る。


 今、絶望グリムリーパーの刃が振り下ろされようとしている。




 第7話 完




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 朝に投稿しようと思ってたんですが間違えて文章全部消しちゃって直してました。

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