19.リヒトの苦悩
公爵邸に戻ると自室にクロードのみを呼び付け、例の件の話をすることとなった。
「まずはこの度の襲撃を未然に防げなかったこと、お詫び申し上げます。」
「そうだな。お前が付いていながら気付けないとは…」
「ええ、思っていたより敵は手強そうです」
「…闇魔法か」
「かなり巧妙ではありましたが、調査したところ御者に使用された痕跡がありました。それと…」
「馬にも毒が仕込まれていた」
「既にご存知でしたか」
「アリス嬢が馬を宥めたのに馬が急変していたからな。相手は毒にも精通しているとは」
「なかなか尻尾を掴むことに苦戦していますが…何やら王宮が怪しいようです。」
「そうだな。とにかく完全に証拠を揃えるまでは泳がせる。それまではアリス嬢の周辺の警備を強化するように」
「畏まりました。リヒト様」
クロードは踵を返すと部屋を後にした。
―やはり黒幕は王宮か
俺は執務室の机の書類を片付けようとペンを手に取ろうとした時だった。
「リヒト様、よろしいですか?」
「何ださっきから」
クロードが静かに入ってくると一つ咳払いをして俺の方を見た。
「医者がアリス様の足の怪我を診察したところ大事をとって1週間程安静にしろとのことでした」
「そうか」
「リヒト様」
「何だクロード、話しはそれだけか?」
「それだけとは…お気づきになりませんか?」
クロードは面白いものを見るようにこちらを覗き込んできた。
「本当に気付きませんか?」
「何だ?」
「いえ、一週間安静ということはアリス様もお暇ではないかと思いまして」
「それで」
「ですからリヒト様が話し相手になれば暇つぶしにもなるのではと…」
俺はクロードが面白そうにこちらを見ているのが不愉快だったが、確かに公爵邸に来たというのに一週間も動けないのは退屈だろう。俺はにやついたクロードをまた追い返すと書類を確認しながら何か相応しいものはないかと考えていた。
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