第44話 退屈だった日々

更に過ごすこと数日、やっと森の調査が終わりを迎えた。


当然だが、結末は何の異変も見つけることができず、これ以上の調査は意味がないとして終了になった。


貴重な戦力と時間をかけて調査しておきながら、何の成果もあげられなかったギルドはこの結果に満足していないようだが、私としては無事に終わったことにホッとしていたというのが本音だ。






「森も落ち着いただろうし、今日はそっちに行ってみようか!」




(うむ、貴様のローブの中にいるのは懲りた!久方ぶりに暴れるとしようぞ!)




(僕はラルーナと一緒ならどこでもいいよー!)




スイが久しぶりに外に、この場合はローブの外に出れることに歓喜し、アスラが能天気に返してくる。




「暴れるのはいいけど、問題を起こすのだけは勘弁してよね・・」




(そんなものは我の知るところではない!)




「言い切らないでよ・・・」




そんなことを言いつつも、私たちは森へと向かった。







(魔物がいなーい!!)




アスラが自由に飛び回りながらそう叫ぶ。


そうなのだ、森に入ってから今まで魔物と接敵しないのだ。


いつもならぞろぞろと現れる魔物の姿が一匹たりとも見えないことに、スイが不満を漏らす。




(せっかく暴れられると思ってきたというのに、なんでこんなに魔物が現れんのだっ!)




「うーん・・・森の調査をした時にある程度間引いたのかもしれないね・・・」




(ラルーナ暇だよぉ・・)




風が葉を揺らす音しか聞こえない森は、いっそ不気味なほどだった。




「・・・・ねぇ、なんか静かすぎない・・・?」




(ふむっ、確かにこの静けさは異常だっ・・・生き物の気配すら感じることができんとは・・)




辺りを改めて見回してみる。


スイの言う通り、辺りには私たちだけしかいないのではないかというほど静まっており生物の気配は感じられなかった。




「っ!!」




その時だった。突然、私の後ろから風切り音が聞こえる。


私は感じた危機感にそのまま従い、その場から飛びのいた。


しかし、少し逃げ遅れてしまい足にかすってしまった。


突然の私の行動に驚いたのか、スイが私の肩から落ちてしまう。




私がさっきまでいた地面を見てみると、刃から持ち手まで黒く塗られたナイフが地面に刺さっていた。




「何よこれっ・・!スイ!大丈夫!?」




(いつつ・・・何が起こったというのだ・・)




あまりに突然の出来事に理解が追い付かず、とりあえずナイフが飛んできたであろう場所に視線を定める。


すると茂みの奥から女が悠々と歩いてくる。




「あらー?仕留めたと思ったんだけど、やるじゃない!」




笑みを浮かべながら告げられるその言葉に、全身が泡立つ感覚が私を襲う。


敵意を隠しもしないその態度に私の頭が警鐘を全開で鳴らしていた。


そんな私を見て、その女は諭すように優しい言葉で語りかけてくる。




「そう緊張しなくても大丈夫よ・・?そこの白い魔物を渡してくれればあなたにこれ以上危害は加えないと約束するわ!」




その言葉に再び頭が混乱する、


この女は私ではなく、スイを狙っているのだろうか。


だとしたら何のために、どこでスイの存在がばれたのか。


私は女から視線を外さずに、必死に頭を回転させて思考する。




(あの女は確か・・・・)




スイが何か思い当たる節があるようだが、今軽々しく声をかけることはできない。


なので迂闊な行動ができず、女を見ることしかできなかった。




「もーう、黙ってないで何か答えてちょうだい!それとも・・・私には向かってそこの魔物を守ってみる?一緒に買い物なんかするくらい大事にしているみたいだし、情でも湧いてるのかしら?」




「っ!!」




その言葉を聞いて私は目を見開いた。


この女は、私たちが町で買い物をしていたことを知っていた。


ということは、その買い物途中でスイの姿を偶然見られてしまったのだろうか。


しかし、町で買い物しているときなんかは特に、スイの姿を見られないように気を使っていた。


食べ物をあげるときだってわざわざ人目に付かない場所に移動していたのだ。


もちろん周囲に人目がないのを確認だってしていた。


誰にも見られていないと言い切れるほど気を使っていたというのに、この女は見ていたかのような口ぶりだった。


それはいったいなぜなのか、考えれば考えるほど深みにはまっていった。




「そんなに難しい顔して考えなくても教えてあげるわよ。といっても簡単なことだけどね・・」




「・・・・・・」




私は何も答えず、ただ女が話すのを待った。


ここで何か話してボロが出ても面白くないと思っていたからだ。




「もう、本当に面白くない子ね・・・まぁいいわ。私たちがその魔物を初めて見たのは、もう一月くらい前かしら・・・この森で他の魔物に襲われている所を偶然見かけたわ。その時はそのまま見失ってしまったんだけど、ずっと私たちはその魔物の行方を追っていたの。そして・・・次に見かけたのはギルドの中だったわ。」




「・・・!!」




「そうよ、私の居た場所だと、あなたの胸元から顔を出すその魔物の姿がはっきりと見えたわ!おかげで森で探す手間が省けてあなたを尾行するだけですんだわ!感謝してるわよ!」




そう言って笑う女は、更に饒舌に語り続けてくる。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

後書き


昨日は少し予定ができてしまいまして、お休みをいただいていました。

また今日から頑張っていきます。


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