第33話 応急処置
とりあえず私は、応急処置を行うことを決意する。
収納魔法の中から傷をいやすポーションを取り出す。
「もしもの時のため買っておいてよかった。」
魔物にポーションが聞くのかはわからないが、応急処置にはなるだろう。
ポーションを効率よく使うには飲用するのが一番だが、傷口にかけるだけでも効果はある。
最初は飲ませようかとも思ったが、何が起こるかわからないので、私はそれを蛇に振りかけた。
傷口が逆再生のように塞がっていく。
特に傷の深かった三本の線が塞がったことに安堵した私は、これからどうするか考える。
「このままにしておくわけにもいかないよねぇ・・・」
このまま放置していたら、またほかの魔物に襲われるかもしれない。
元より放置するのなら助けずにそのまま放っておけばいい話だ。
助けてしまったのなら、最後まで面倒を見るのが筋だろう。
でも、じゃあどうすればいいのかと考えたときにまた私はこれからどうしたらいいのかと考える。
要は堂々巡りになっていた。
「はぁ・・なんだか最近面倒ごとばかリ起こっている気がするなぁ・・」
そう言いながら、青空を仰ぎ見る。
空はいつもと変わらず澄み切っていた。
◇
結局私は、その場で解決策など浮かばず、半ばやけくそで浮かんだ案を実行することにした。
今も目を覚まさない蛇を抱いて、私はローブの中に忍ばせる。
要は隠して宿まで連れ帰り、回復するまで世話をしようというわけだ。
回復して元気になれば、また野生に返せばいい。そう思っていた。
楽観的な思考だと思うが、今の私にはそれくらいしか思いつかなかった。
「なんで魔物なんか助けちゃったんだろ・・」
私は帰路につきながら悪態をつく。
自分のしたことがどれだけ常識外れなことかくらい分かっている。
通常、魔物と人間は相容れることはない。
この言葉に決してと付かないのは、家畜化されている魔物も存在するためだ。
カームホースと呼ばれる馬の魔物がいる。
このカームホースは、魔物には珍しく気性が穏やかで比較的飼いならすことが簡単な魔物として知られている。
そのため裕福な商会などは、この魔物に荷馬車を引かせて商いをしているという話を聞いたことがある。
通常の馬よりも馬力が出て魔物除けにもなるため、商人としてはぜひとも手に入れたいものなのだ、と村に来た商人が言っていたことを思い出す。
このように人間と共存している魔物も存在しているため、一概には言えないというわけだ。
なのだが、それは言ってしまえば人間に都合のいい魔物に限った話で、私が現在連れている魔物が人間の役に立つとはとても考えれなかった。
あんなに凄い魔法が使えるくらいだから、命令を聞いてくれれば戦力にはなるだろう。
だが、何というかこの魔物には知性があり、品格があるように思った。
すべて私の主観なのだが、この魔物を飼いならせるような気は全然しなかった。
歩きながら私は、改めてその魔物を観察する。
傷がついていなければ綺麗な何の淀みもない真っ白な全身に、今は閉じられているがルベライトのように綺麗な色をした目は神聖さに満ちていた。
今は全身に土埃が付着し、自慢の鱗も欠けていて弱っているが。
「なんて種類の魔物なんだろう・・・」
こんな魔物見たことも聞いたこともない。
その魔物が纏う神聖さだけでいえば、あのラーナガルンにも匹敵するような、そんな気がした。
「まさか・・・ね。」
私は脳裏に浮かぶ記憶を頭の隅に追いやり、帰路に就く足を速めた。
私が急いでいたって、魔物たちは関係なく襲ってくる。
心なしか多い魔物の数に辟易しながら、私は魔法で蹴散らしていく。
討伐証明部位を回収できるものは速やかに回収し、できないものは魔力に変えていきながら足早に城門を目指す。
◇
城門に着いた私は、いつものようにギルドカードを提示して身分を証明する。
最初は時間のかかっていたこのやり取りも、何日かすれば伝達が周ったのか早い時間で終わるようになった。
無事に町の中には入れた私は、ここでようやく肩の力を抜いた。
いつもならまだ狩りをしている時間なので、陽はまだ高く、大通りは人が賑わっていた。
「とりあえず一回宿に帰ろう・・」
そう呟いた私は、目的地を宿へと決めて足を進める。
この時間ならまだ冒険者ギルドも空いているかもしれない、そう思った私はあとでギルドによって今日の分の素材を売りに行こうと思った。
その前に、懐に入れたままでは落ち着かない魔物をいったん宿に連れ帰ることにする。
いつもより比較的早い時間に帰ってきた私を見て、ミランダがけがを心配して私の体を確かめようとするのを必死に振り切り、何とか自室へと帰還する。
「ふぅー危なかったぁ!」
もう少しでミランダに体を触られて魔物のことがばれるとこだった。
私は自室の床に座り込むとローブの中から魔物を取り出すと、一旦備え付けの机の上に寝かす。
今だ目を覚まさない魔物は、傷が塞がって多少痛みは消えたのか穏やかな表情をしている気がした。
蛇の表情などわからないので、気がするだけなのだが。
私は自分の都合のいいようにそう解釈し、起きた時のことを考えて必要なものを揃えるために、部屋に鍵をかけて自室を後にした。
「今日の日記に書くことは決まったかな・・」
階段を下りながら呟いたその言葉は、誰にも聞かれることなく空気に溶けていった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
後書き
最近体重が増えすぎてやばいのでプチダイエットしてるんですが、人生で初めてのダイエットしんどいですね。笑
昔はいくら食べても太らなかったのに、年を重ねるごとにどんどん体重が増えていきます。
運動しないせいもあるんでしょうがだからと言って動く気にもならなくて・・
何かおすすめのダイエットありますか?
もしこの話が面白い!続きが気になると少しでも思っていただけましたらフォローと★での評価よろしくお願いします!、私のモチベーションに繋がります!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます