新しい出会いと厄介ごと

第29話 プロローグ 胎動

見渡す限りの青が広がる頭上に、影を求めて木々の間に入り込みながら休息を求める。


もう夏も終盤に差し掛かろうかという時期にもかかわらず、相変わらず照り付ける陽の光は容赦がなかった。


落ち着ける場所に身を置いたことで、ようやく強張っていた体が弛緩する。




生まれてからずっと、息つく暇もないほどに訪れる厄介ごとから逃走を続けた。


まだ非力なその体では、魔物一匹追い払うのがやっとだった。


こうしている間にも、その体は通常ではありえない速度で成長を続けている。




傷ついた体から赤色の液体が流れ出る。


体をくねらせてそれを舐めとれば、敏感な舌が不快な信号を脳に送る。


精巧に作られたあまりにも劣等な存在に、笑みが漏れる。


尤も、それが顔に出ているのかは確認することができないが。




(難儀なものだな、ここまで制約に縛られるとは・・・)




そういいながらも、この状況を楽しんでいるかのように声に悲愴は纏っていなかった。


まるで玩具を与えられた子供のように楽しむ自分を客観的に見下ろし、冷静になる。




(我は今浮かれている・・・ここまで感情に振り回されるものか・・全くもって難儀だ。)




遠くなのか近くなのか、周りの木々に反射してどこかわからない場所で魔物が遠吠えを上げて走っているのが微かに聞こえる。


それを聞いた、あるいは感じ取ったは、辟易しながら木々の隙間を縫うようにその体をくねらせながら脅威から距離をとる。




そうしてしばらく移動していると、木々が切り取られた広い空間が見えてくる。


隠れる場所がないそこには、三人の人間が座って談笑していた。


初めて見る人間に気になったは迂回せずに近くの茂みの中から観察していた。




(あれが人間・・・この世で最も繁殖している種族・・・)




初めて見る人間はこちらに気づきもせずに三人で話し込んでおり、その様子をじっと見つめる。


何を話しているのかまではわからないが、楽し気に顔には笑みが浮かんでいた。




(・・・・・・・・)




そうしてしばらく観察していると、後ろからがさがさと音が聞こえるのに気付く。


慌てて後ろを振り返れば、そこには緑の毛皮を纏った狼がすぐそこでこちらを睥睨していた。




(しまった、注意をそらしすぎたか・・!)




今にもこちらに飛び掛かってきそうなその魔物から逃げるため、必然的に開けた三人の人間がいる場所へと姿を現すことになる。




「・・・・・!!」




「・・・・・!?」




「・・!!・・・・!?」




三人は口々に何か叫んでいるが、何を言っているのかはわからなかった。


それどころではないと体をくねらせながら三人を迂回してその場から離れようとする。


狼は人間たちを一瞥するとなぜか襲うことをせずにに向かって走る。


小さい体を必死にくねらせ、近くの茂みに中に入って木々の隙間を縫うように走る。










そうしてあっという間に過ぎていった出来事に巻き込まれた三人は、呆然と立ち尽くして二匹が消えた場所を見ていた。


しばらくして立ち直った彼らは口々に今起こったことの感想を口にだす。




「なんだ今の魔物!あんなの見たことねぇぞ!」




「えぇそうね、襲われているようだったけど魔物同士が喧嘩するなんて・・・」




「一体何だったんだ・・」




その呟きに答えれるものはこの場にはいなかった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

後書き


お待たせいたしました!

今日からまた頑張って連載再開していきます!




活動報告の方でも書いたんですけど、やっぱり筋書きを決めてそこに肉付けしていくのが執筆スピードも上がって楽でいいですね!

今までその場その場で考えて書いてたんで、こんなに違うのかと驚いています。


これからは、章が終わるごとに次の展開を考えるお休みをいただこうと心に決めました。笑


ありがたいことに、お休みしてる間にもpvは増えていまして、ですが★★★★★が増えないジレンマに悩まされています。

もしよろしければ、読んだうえでこの下にあります★での評価だけでもしていってくれれば幸いです!


私のモチベーションに関わってきますので・・・・




では長くなりましたが、本日からもまた迅雷の魔女の生涯をよろしくお願いします!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る