第24話 店主の心意気

「なんだぁ?客かと思ったらまだガキじゃねぇか!」




奥から出てきた店主のような男は出てくるなりそう言って悪態をつく。


機嫌が悪そうなのを隠そうともせず、全面に出していた。




「何の用だ?冷やかしなら帰りやがれ!」




そう言ってドワーフは用件を聞いてくる。


私は雰囲気にのまれながらもなんとか用件を伝える。




「防具が欲しいんです、私のサイズに合うものありますか?」




そういうとドワーフの目の色が変わる。


私を上から下までじっくりと見た後、一言、




「冒険者なのか?」




「はい。」




同じように簡素に返した私にドワーフは、思案するように腕を組む。




しばらくそうしていたドワーフは組んでいた腕を解くと再び質問を投げかける。




「その歳で冒険者ってこたぁわけありか?」




「まぁそんなところです。」




再び私は簡素に返す。


ここで多くを語ろうとは思わなかった。


私の境遇を語ったところで、同情されるのがオチだ、私は同情してほしいわけではない。




「なるほどな・・・・使う武器は?」




私が語らないことに追及することなく話を進めるドワーフに好感を持ちながら質問に答える。




「魔法を使います。」




ずっと難しい顔をしていたドワーフが初めて顔色を変えた。


質問の答えを聞いたドワーフの顔が驚愕に変わる。




「その歳で魔法を!?はっ!大したもんだおもしれぇ!」




そう言ってドワーフは大口を開けて笑い出す。


急に変わった態度についていけず、私がどうしようか迷っていると顔の笑みを潜め、再び腕を組んだドワーフはブツブツと呟く。




「身長は百十Cってとこか・・・魔法を使うんならやはりローブか?確かマジックシープの毛が奥にあったはずだ・・となると衝撃を和らげるためにあいつも使って・・・・」




「あっあのー・・・」




急に一人の世界にこもってしまったドワーフは、こちらが呼び掛けても返事を返すことはなかった。


手持ち無沙汰になった私は店内の棚に置かれてある防具を見ることで時間をつぶした。


そうして十分ほど一人で考え込んでいたかと思うと唐突に一言だけ告げてくる。




「一日だ!」




「・・・・え?」




私は言われた意味が分からず呆けた返事を返してしまう。


それに対してドワーフは補足するように説明を続ける。




「嬢ちゃんの防具を作ってやる!一日で完成させるから明日の昼以降に取りに来てくれ!」




補足してなお足らない説明に頭が混乱するのを感じながらとりあえず防具を作ってくれるのはわかった。


しかし勝手に作ってもらってもこちらにも予算というものがあるのだ。


今朝ギルドで換金してきたことで少しは潤っているが、当然贅沢できるほどはない。


これで作ってくれた防具が高ければ払えないということも出てくる。




なので私は先に予算がないことを伝えることにした




「あの、防具を作ってくれるのはありがたいんですけど、お金に余裕がないのであまり高いものは・・・」




言いにくそうにそう言った私にドワーフは返す。




「安心しな!値段は銀貨一枚でいい。一括で払えなけりゃ分割で払ってくれてもいいぜ!」




そういってこちらに得しかない提案を告げてくる。


銀貨一枚なら今の私でも一括で払える金額だ、といっても使うお金はアルフリッドからもらったものだが。


とにかくそういうことなら文句はないため、店主の気が変わらないうちにお願いすることにする。




「それだったら何とかなりそうです、よろしくお願いします。」




「おうよ!俺の名前はラックスってんだ!お前さんは?」




「ラックスさん・・・よろしくお願いします、私はラルーナです。」




「ラルーナかよろしくな!しかしよぉラルーナその言葉遣いどうにかならねぇのか?」




「えっ?」




急に言われたその言葉に戸惑い上手く返すことができなかった。


何かおかしいところがあったのだろうか、そんなことを考えているとラックスからこんなことを言われる。




「別にかまわねぇんだけどよ、ガキがそんなかしこまった言葉で話してると気味悪いぜ。俺なんか今でもその敬語ってやつはうまく話せねぇ。もう知らない仲じゃねぇんだしもっと楽に話せよ!」




私が敬語で話すことに違和感を抱いていたようだ。


そういったラックスは人好きのする笑みを浮かべていて、最初の頃の面影は全く見えなかった。




突然そう言われても、村が滅びてからずっと使っていたものだ。


それに必要以上に他者と関わるのを避けるために、心の距離を保つために狙ってやっていた部分もあるので、直せと言われてすぐに直すことはできなかった。


ラックスはいい人だとは思う、私の過去を詮索することなく私に年相応であれと言ってくれるのだから間違いなく善人なのだろう。


私はこの店、というよりラックスが気に入ったのでこれからも防具を作ってもらうのにお世話になるだろう。




確かにいつまでも他人行儀でいるわけにはいかないか、そう思った私は、今はありきたりな言葉を返す。




「ありがとう、、ございます・・・徐々に慣らしていくことにする・・・です。」




たどたどしい言葉を聞いたラックスは一度大笑いしてから優しく返す。




「あぁ確かにそうだな!いきなり言われても困るか!じゃあこれから慣らしていってくれりゃあいいか!」




笑っているラックスに何だか恥ずかしさがこみあげてきて、私の顔は耳まで熱くなっていた




その言葉を最後にラックスの店を後にした私は空を仰ぐ。


気づけば日も高くなっており、お腹を満たそうと私は近くにあった酒場のような食堂に入ることにした。


入ると何人かが昼から酒を煽っており、下品な笑い声が響いていた。


店を変えようかとも思ったが、入ってすぐに店員にカウンターに案内されたためそれはかなわなかった。




とりあえずシチューと白パンを注文し、料理が来るまで明日の予定を考える。


明日は起きてギルドで依頼を見ながら時間をつぶし、昼にラックスのとこに防具を取りに行ってそのあと時間があれば狩りに出るとしよう。




そんなことを考えて時間をつぶしていると料理が到着する。


シチューのいい香りに頬を緩めながらパンと一緒に口の中に放り込む。


全体的に優しい味で野菜が溶けて旨味がよく出ており、肉も上あごでつぶせるくらいホロホロで大変美味しい。


私は上機嫌でシチューを頬張り、絶対また来ようと心に決めていると後ろの酒臭い席から上機嫌な男の声が聞こえてくる。




「ギャハハ!しかしあいつも馬鹿だよな!マンドラゴラの群生地なんて知らねぇのに必死に妹のために金を集めて!」




男等はすでに酔っているのか声量は店全体に響いているのに気づいていなかった。




それよりも私はつい最近聞いた話題がでてきたのに気付き後ろを軽く振り向いて男たちを見る。




四人いた男の二人はあの日マークに暴行を働いていた男たちだった。



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後書き


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