第23話 後始末と異種族
あれから、警備隊の宿舎まで向かい街道を破壊してしまったことを伝えて結局四時間ほど取り調べを受けた後解放された。
最初に話を持って行ったときには子供の与太話だと笑って信じてくれなかったので、そっちの方が都合がいいのではと思いその方向で話を進めようとしていたのだがそれは叶わなかった。
そこを通った何者かがいたのだろう、もう帰ろうと背を向けていた私たちの前から警備隊の人間が慌てて走ってきたと思ったら「街道に驚異的な破壊痕あり!何か大型の魔物が現れた可能性ありとのことです!」と叫んだことで平穏には終わることができなかった。
たった今子供の妄想と切り捨てた話が出てきたのだから警備隊もまじめに取り調べを行うしかなくなる。
嘘か本当かわからないが少なくとも何か情報は持っているだろうと思ったのだろう、そこから取り調べが始まった。
先ほど話したことをもう一度最初から話し、すべてを語り終えてなおとても信じられないと思った警備兵たちは結局、他の警備兵がその惨状を確認して帰ってくるまで信じることはなかった。
その惨状を見てきた男に聞いてなお疑念の視線を向けられていたが、証言したレッドボアの足跡が周囲に確認できたことと私たち二人らしき足跡が確認されたことでなんとか信じてくれた。
その現場検証や取り調べが長かったため、結局四時間もかかってしまったのだった。
それを終えて、現在私たちは警備隊の宿舎の前で伸びをしながら会話していた。
「でも、処罰が厳重注意だけで済んでよかったよ!」
マークがそう言って笑いかけてくる。
「そうですね、罰金とかじゃなくてよかったです。」
確かにそうだと思った私も同じく笑いながら返す。
下手をすればいくらかの罰金も頭に入れていたため、注意だけで済んでよかったと心から思った。
なんでも実際に現場に見に言った調査兵がその場で土魔法で直してくれたようだった。
その話を聞いた時は私もあの場でそうしてればよかったと後悔したほどだ。
そもそも魔力も残り少なかったのでできていたかはわからないが。
そんなことを考えていると、マークがこちらに問いかける。
「さて、ずいぶん時間を取られたし、僕は妹が心配だからこのまま帰るけどラルーナはどうするんだい?」
空を見上げればもう辺りは暗くなっており、完全に日が沈んでいるのが分かった。
私は空腹を訴える胃袋をさすりながらその質問に答える。
「私もこのまま宿に帰ります、お腹もすきましたし。」
「そっか、僕は商業区の方だけどラルーナは?」
私が止まっている宿は居住区にあるのでそれを伝える。
「私は居住区の方なのであっちですね。」
「じゃあ反対だからここでお別れだね、今日は本当に助かったよ!あらためてありがとう!妹の病気が治ったらぜひお礼させてほしい!」
「いえ、何度も言いますが自分のためにやったことですので・・・妹さんの病気がよくなることを願っています。・・・・・では」
「ありがとう・・じゃあね」
そう言ってお互いに背を向けて歩き出しマークと別れた。
その日はギルドに向かうことなく宿に直行し、晩飯を食べた後部屋で休んだ。
次の日、朝日のまぶしさに顔を曇らせながら目を覚ます。
まだ若干けだるさの残る体に鞭をうち意識を覚醒させる。
「あー眠いーおはよーアスラー。」
間延びした声であいさつすれば、アスラは相変わらず私の頭の周りを飛び回った。
徐々に起きてきた頭で昨日のことを振り返る。
危ないところだった、妖精の魔力がなければやられていたかもしれない。
あそこなら大丈夫だと思って活動していてもああいった予測不可能なことが起こるのだ、そなえはあるに越したことはない。
そう思って私は昨日の晩に星詠みを行い、今日はギルドで換金した後防具を見に行くつもりだった。
やはり接近された時の手段がなさすぎるのが問題だった。
そうやって今日やることを頭に叩き込んだ後、朝食のために階段を下りた。
朝食を食べギルドで換金した私は、現在商業区を歩いていた。
朝早くから大勢の人が行きかっており、喧騒が聞こえていた。
私は道の端っこを歩いて人の群れを避けながら、首を振って目当ての店を探す。
ニ十分ほど歩いたところで目当ての店を見つけて立ち止まり、看板に書かれている店の名前を読む。
「タートル・ピリオド・・・とりあえず入ってみるか。」
外観は石造りになっており、無骨さを感じるのだが看板の文字が青と白の可愛らしい様子で描かれているため、調和がとれておらずちぐはぐな様子がうかがえた。
そんなことを考えながら、私は勇気を出して店内に入る。
中は棚に置かれたたくさんの防具が目に入り、全身甲冑や皮の全身防具などが並べられていた。
初めて入った防具屋の様子に飲まれつつ、私は姿が見えない店員に声をかける。
「あのーすみません・・・・」
店内は私以外客は誰もいないのか静かだった。
物音ひとつしないことに(もしかしてまだ店空いてなかったのかな)などと思いながらもう一度先ほどより大きな声で読んでみる。
「すみませーーん!」
するとカウンターの奥の方から微かに声が聞こえてくる。
「なんだぁー客人かぁ?」
そう言いながらのそのそと現れた男は、立派なあごひげを蓄えており、腹の出ただらしのない体を隠しもせず、極めつけに身長が私より少し高いほどしかなかった。
初めて見るその異種族の名前が口からこぼれる。
「・・・・・ドワーフ。」
その男は何が気に食わないのか眉を吊り上げてこちらを睨んでいた。
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後書き
少し短いですが今回はここで区切らせてもらいます。
本当は昨日の話とここまでで一話になる予定だったんですけどね。笑
もしこの話が面白い!続きが気になると少しでも思っていただけましたらフォローと★での評価よろしくお願いします!、私のモチベーションに繋がります!
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