第22話 青年の独白

「い、今のは一体・・・・」




青年が呟く。


何が起こったのかわからないといった様子で呆然とした様子だった。




「はぁはぁ・・・・!」




私は息を切らしながら肩で息をする。


今ある魔力をほとんど使い切って放った魔法はレッドボアを消し炭に変えた。


辺りの被害は凄惨なものだった。


街道は捲れて整備しないと通れるような状態じゃなくなっており、森に関しては一部分がごっそりと無くなっており中の様子が一望できるようになっていた。




「ちょっと、、やりすぎたかも・・・」




そのあまりの惨状に、これから起こることを思い浮かべて頭が痛くなる。


とりあえず、今襲われればひとたまりもないため、横でいまだ呆けてる青年へと声をかける。




「とりあえず、町に帰りましょうか・・・」




青年は私の言葉にハッとした顔を浮かべ、興奮した様子で声を荒げて捲し立てる。




「い、今のは君がやったのか!?その年で魔法を!?君は一体何者なんだ!?もしかして貴族令嬢だったりするのだろうか!?そうであれば・・・・」




矢継ぎ早に飛んでくる質問に嫌気がさして私はその言葉を遮る。




「質問が多いです‥それより早く街に戻りましょう。もう魔力が残り少ないので今襲われたら大変なことになります。」




「あぁ!そうだな・・・礼を言うのが遅れたよ、ありがとう・・助かった。」




青年は礼を述べた後立ち上がって土埃を払う。


色々聞きたいことがあるのが分かったが、今は町へ無事帰ることの方を優先したようだ。


それを確認して私は先頭を歩きだす。




しばし無言の時間が続いていたが、それに耐えきれなかったのか青年は会話をしようと試みる。




「今更だが、僕の名前はマークだ!君の名前は?」




「‥‥ラルーナ」




「ラルーナか!よろしく頼む、さっきは本当に助かったよ・・僕一人なら今頃レッドボアに殺されていただろう。」




ぶっきらぼうに返した言葉にも気にした様子もなく、マークは続けて話す。




「僕には妹がいるんだけど、ちょうど君ぐらいの歳でね。両親はいないから二人暮らしをしてるんだけど、妹は病気でね、外には出られないんだ。」




両親がいないという言葉に少し同情する。


自分と似たような境遇なのだろう。


もちろん私の方が悲しい過去を持っているのはわかっているが、それを言って同情を誘おうとは思わない、


今だぽつぽつと語られる自分語りを私は黙って聞いていた。




「だから、君が助けてくれなかったら妹一人にするところだった。本当にありがとう!感謝してる。ただ、あの・・さっきも言った通り妹は病気だから・・その、金が必要なんだ。だから・・・」




急にどもりながら口ごもるマークに私は顔を向ける。


おおかた、助けてやったのだから金銭を要求されるとでも思っているのだろう。


私は自分がそんながめつい人間に見えるのかと少し落ち込みながら、言いにくく今も口ごもっているマークの代わりに言ってやる。




「私は自分の命を守るためにやっただけ、です。だから金銭の要求なんてしない。・・・・そもそも私はそんなにがめつい人間じゃない、、です。」




崩れ始めている敬語をとってつけながらたどたどしく話す。


最後に嫌みが混ざったのはやはり気にしていたからなのか、自分でもわからぬまま気づけば口に出していた。






「っ!!すまない!」




そう言って頭を下げるマークを一瞥しながら歩を進める。


マークは慌てて私の後をついてきた。




マークはまだ聞きたいことがあるのか私に質問を飛ばしてくる。


黙って歩いてほしかったが、町に着くまでの暇つぶしだと思えば少しは納得できた。




「あの、えっと・・・そうだ!ネコはあの後無事に捕まえられたのかい?」




急に予想外の質問が飛んできたことに驚いて私はマークの顔を振り返る。


マークは首をかしげて下手な笑顔を浮かべていた。


一体なぜ私がネコを捕まえようとしていたのを知っているのか。


裏道を通った時にでもすれ違ったのだろうか。


いくら考えても分からなかった私は、直接聞いてみる。




「なんで私がネコを捕まえようとしたことを知ってるんですか?」




「えっ?だって昨日僕が襲われていたのを見ただろう?僕たちの前を横切っていったじゃないか。」




そう言われて私は思案する。


そういえば、ネコを見つける前にそんなような場面を見た気がする。


逃がすまいと必死になっていたためそのことは頭から抜け落ちていた。


ひとたび思い出すとその光景が頭に浮かんでくる。


あの時男二人に暴行を受けていたのが目の前のマークだった。




「あーあの時の・・」




「忘れていたのかい!?はぁ、まぁいいんだけどさ。」




私が昨日のことをすっかり忘れていたことに肩を落としながら落ち込んでいるマークだったが、思ったよりも気にしてないようだった。


代わりに暴行を受けていた理由を勝手に語りだす。




「僕の妹の薬の材料がね、普通ではなかなか手に入らないものなんだ。マンドラゴラってモンスターの根が必要なんだけどね、彼らがその群生地を知ってるっていうもんだから僕は彼らに個人依頼を出したんだよ、ギルドを通すと手数料を取られて多少高くなるから。ただでさえ高い薬の費用を少しでも抑えたくて・・でも彼らは前金が必要だっていって聞かなくてね。そのお金を集めるために僕は今日森に入って薬草の採取を行っていたんだけど・・レッドボアの住処に足を踏み入れてしまったのに気付かなくてそれで・・・」




「そうだったんですね。」




私にはあまり関係のない話を黙って聞きながら一言だけを返す。


気の毒だとは思うが私だって自分の生活に余裕があるわけでもない。


ましてや魔力を集めるという目的のために余裕がないのは同じだった。


ゆえに人のことを気にしている場合ではないと思い、その件に深くかかわろうとは思わなかった。


興味がないと思ったのか、話を終わらせてマークは謝罪してくる。




「ごめんね、急に変なこと言いだして・・君には関係のないことなのに。」




「いえ、大丈夫です・・誰かに話せば楽になることもあるでしょう・・・・」




私だって全部話して泣きわめけたらどれだけ楽なんだろうと考えたこともあるため、多少は気持ちが分かった。




「ありがとう・・妹と同じくらいの子に諭されるなんて思ってもみなかったよ、君は本当に不思議な子だな・・・」




そういって笑うマークは憑き物が落ちたように晴れやかな顔をしていた。


今まで誰にも話さずに一人で思い詰めていたのだろう、少しでも楽になることができたのならばそれで私のできることは終わった、そう思った。




そうして二人で歩いていると遠くの方で城門が視認できた。


無事に帰れたという安堵とともに、街道の破壊についてなんて説明しようかと考え、胃が痛くなる。


気づけば顔をしかめながら口にも出していた。




「はぁーなんて説明したらいいんだろう・・・・」




「大丈夫だよ!僕も一緒に説明するから!命を助けられたんだ、それくらい任せてよ!」




あまり頼りにならないマークの意気込みを聞いて(どうか穏便に終わりますように)と願って私たちは城門を目指した。



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後書き


すみませんもう少し書きたかったんですけど、今日の夜に少し予定がありまして泣く泣くここで区切らせてもらいました。


全然展開が進んでないんで書ききってから出そうとも思ったんですけど、またサボるのもなと思い切りのいいとこで区切りました。


残りは明日に書ききって投稿します!


もしこの話が面白い!続きが気になると少しでも思っていただけましたらフォローと★での評価よろしくお願いします!、私のモチベーションに繋がります!

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