序章

第1話 家庭内孤立

 …………ダリぃ。


 スマホの目覚まし音に目が覚めた俺は、そう思った。


 目覚ましを止めて時刻を確認すると、ぴったり午前7時を指している。


 退屈だったゴールデンウィークがようやく明け、今日から学校が始まる。


 もちろん俺は「学校が好きだ」などというタイプの人間ではない。


 ただ、家にいるよりは学校の方が百万倍マシというだけ。


 重たい身体を引きずるようにして俺はベッドから這い出ると、寝間着から制服に着替えた。


 着替えが終わると自室を出て、階段を降り、1階のダイニングへ向かう。


 ダイニングには既に朝食を食べ始めている継父ままちちと、キッチンで弁当を作っている母がいた。


 継父の前の席にはお盆に載せられた朝食が用意されている。


 俺は黙ってそれを回収すると、そのまま降りて来たばかりの階段を駆け上がって行く。


 家族らしい会話なんてもうどれくらいしていなかったか、思い出すのも億劫だ。


 挨拶すらまともに交わさない家族であれば無理もない。


 俺が『直孝なおたか』と書かれた自室へ戻ろうとした直前、異父弟おとうとが制服姿でヤツの部屋から出て来た。


 異父弟は俺の存在などまるで眼中にないかのように、階下へ向かって行く。


 俺は異父弟を見送ってから部屋に入ると、デスクの上にお盆を置いて食事を始めた。


 これが異質な家族の形だって事は俺にだってわかる。


 それでもこんな状態ですら昔に比べたら、まだしも救いがあるのだ。


 俺が生まれた時、既に実父の姿は無かった。


 母と離別をしたのか死別をしたのかはわからないが、ともかくそういう状況下で俺が2歳の時に母はあの継父と再婚した。


 継父は殴って子供をしつけるタイプの人間であり、幼少期の俺はよくあざを作っていた。


 その躾は異父弟が生まれるとより激しくなり、遂には虐待容疑で警察沙汰に発展。


 その後、俺だけ児童養護施設に預けられる事になるのだが、その施設でも俺は施設スタッフから教育という名の暴力を受け、同じ施設の子供達からも陰湿ないじめや嫌がらせ、裏切りにあって来た。


 どうして自分だけがこんな目に……


 取り立てて容姿が醜いわけでもなく、心身に障がいがあるわけでもないし、況してやこちらから手を出したわけでもない。


 ただ普通に、そこに存在しているだけで害獣のように扱われる理不尽さ。


 そんな施設の異常さも、俺が中学を卒業する頃には社会の表沙汰になり、結局俺はこの家族のいる家へと戻る事になった。


 戻って来たものの、当然ここに俺の居場所なんてない。


 俺は食事を食べ終えるとお盆を手にして部屋を出ると、ダイニングへ向かう。


 既に継父は家を出たようで、異父弟がテレビを見ながら母と楽しはに食事をしていた。


 俺は彼らの視線に入らない様にお盆をテーブルに戻しておく。


 それから適当に身支度を整えると、黙って家を出た。



 --------------------あとがき---------------------


 この小説は「第9回カクヨムコン 異世界ファンタジー部門」の応募作品です。


 これを書いている時点で70万文字以上(270話以上)が書き終わっており、その先もまだまだ継続する長編小説となっています。


 全体的にゆっくりと話が進んでいく為、主人公が強くなり始めるのが大体60話以降となっています。


「最初から最強」「強くてニューゲーム」を求める方には少々物足りなく感じるかもしれません。


 一方、「少しずつレベルアップ」「徐々に強くなっていく過程が好き」という方はじっくりとお楽しみいただけると思います。


 もし、この小説が面白いと感じて頂けら★やレビュー、応援などして頂けると大変励みになります。


 ちなみにカクヨムコン開催期間中は毎日3話ずつ投稿していきます(7:30、12:00、17:30。開催初日のみ2話投稿。カクヨムコン終了後は1日1話投稿予定)。


 是非、ラストエピソードまでご笑覧いただければ幸いです。


 by ヴォルフガング

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