別れ
「え?ザイオンに行くの??マジかよ!」
珍しくルフィから呼び出され、空中要塞の艦内(基地内?)ラウンジへ向かうと吃驚の告白を受けた。
「ああ、なんでも生前のハマミが俺達、戦争の亡霊を纏めて始末する大規模な作戦・・・巨大事業か?を考えていたらしい」
は?炭に焼かれながら助けた男の始末を考えてた??
「おいおい、別にお前を処分しようとしてたワケじゃねーだろ」
「ああ。・・・ふぅ、だがこれだけ死に別れが積もると・・・な。思う所もあるんだよ」
「アメリアと結婚して家庭をも・・・」
「別れた」
は?!
指輪は?
「もう、失うのはゴメンだ。世の中に落とし前を付けさせてやる・・・とテロに走るのも、な」
ソファから立ち、去ってゆくルフィに伸ばした手が止まる。
・・・俺の所為か?!
ハマミを引き合わせたから・・・いや、違う。
本編で女の死を次々と見送り続け、仇をと口にしつつも死ぬほどの覚悟も無い程度の軽い嫌がらせを主人公に続けながら宙巡ヴァルナの僚艦(名前はまだない)のコラプサーに巻き込まれ消えて行った俺・・・ジュリアンの死に様を思い出す。
「チッ、なぁにが歴戦の覚悟だよ」
圧縮大気にのまれる前の勘違い。
本編の俺は腐った幽霊みたいなモンだったが、ルフィは鬼だ。
自らの近しい人間を悉く奪われてゆき、自分の無力を怒りながら手の届く範囲の他人を殺し続けるしかなくなってしまった、戦争の負債。
指輪は世俗へのアンカーみたいなもんだったのか。
エアコムを取り出す。
アメリアに掛けるしかねえ。
「おい、ルフィの奴が・・・」
『ごめんジュリアン!あたし結婚するから』
は?
『ホワイト大佐とイイ仲になってたんだ・・・フランセットにも謝っといてw招待状はいちお送っとくwww』
ガチャン・・・ツーツー
え?このガチャンツーツーて若い奴等に通じんのか?
つかなんだこの疑問は・・・全宇宙の意思??
つかつかルフィは失恋でヤケクソになってるだけなのか?
・・・一気に全てがわからなくなってしまった。
つかゼッタ、親友に寝取られたのか・・・いや、家の紹介だったハズ・・・げ、奴もコッチ側なのかよ!もう上司上官の部下(家来?)は要らねーんだよ!!!
状況の変化にクラクラしながら年の割にスレてないゼッタに癒されようとエアコムを取り出すと、二件の着信があった。
トップのは・・・ハマミ?!
思わず開く。
『ジュリアン、いまコレを読んでいる頃、私は燃え殻になっ』
閉じる。
続いて二件目は・・・エンリカ、か。
気拙い・・・が、仕方ない。開く。
『ユーミはあなたを絶対殺すと言って出撃しました。あなたがこれを読んでいるということは』
目が滑る・・・
『・・・というわけで、もはや義理も無く情も怨嗟が残るのみとなりました。よってあなたの、恐らくは最愛の女・・・ハマミ殿下のゴリラハゲはわたくしが寝取ります。これは宣戦です(後略、〆』
寝取る?
脳内のことながら、ちょっとカッコいい当て字をしてしまい照れる。
そうか、ハマミが逝ったこと知らんのだよなエンリカ。
・・・ギルベルトが連れてったからそのうち知れるだろ。
しかしエンリカの”女”でも、あのルフィを・・・どうだかな。
俺のように「所詮は女」て意識がある男は抗えないが、
・・・まあ、おれんとこに戻らんのならどうでもいいわ。
何かを忘れているような気がするが、とりあえずゼッタの白紙の部分を塗りつぶさねばと浮き立つ心で彼女の部屋へと向かった。
・
・
・
『・・・あなたは不思議な男です、ジュリアン。美しい顔、体もきっと美しいのでしょう。やはり白人だし、モノはヒザまであるのでしょうか・・・あっ、いけない、あたしったら(恥っ)・・・優生学見地の属性的差別感情から逃れるには地球の重力を脱するより難しい人種、それも差別主義を掲げる大閥の一当主にあるのに・・・様々なレッテル、汚物、悪評のついたあたしへただ一片の嫌悪も現さなかった。行動は子供に対するもの、庇護を義務とするような差別的なものでしたが、会話は常に対等の立ち位置。前々世の、ただ優しかっただけのつまらない男・・・夫でした、を思い出します(慰謝料として貯金と不動財産を頂いて離婚しようとしましたが失敗して刺されましたwww)。あなたの正体を自分なりに考えました・・・ひょっとして、神様?フフ、荒唐無稽・・・と断じるには、今のこの身を疑問せねばなりませんね。とりあえず、感謝のことばを贈らせてください。ありがとう。あたしに、その美しさを見せてくれて。最高の男をくれて。そして、命を救ってくれて。ほんとうに神様なのではないですか?そんなに与えるばかりででは・・・前世、前々世と奪うばかり、与えられるばかりで生きてきましたが、今世では初めて与える・・・ということに挑戦しようと思います。と言っても、相手は絶対守りたい差別ランキング一位の自分の男ですが、初心者ということで許してください。あなたに光あれ(〆』
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