お前へ贈る末期の言葉

『なっ、何を言う!わたしはフランセットではない!ユーリ、ユリアンモレスだ!』


ユリアンはまぁわかるとしてモレス・・・マレス・・・メレス・・・かw


「ひょっとして・・・おっと、わかったぜ。待っててくれ」


人はウソを見抜かれたり正論で否定されると怒る動物だ。

いやー人間に限らんかw


いそいそと乗機に戻り、立ち上がる。

リーゼの生身の体格差で照れ隠しの逆上パンチくらったらミンチじゃんよ。


『フッ、待たせてくれたではないか。我が愛しのゼッタに掛けて・・・ゆくぞ!』


うお!


めたくそ鋭い踏み込みで抜刀してきやがった。

辛くもサイドステップで躱す。


グラビティソードか、何考えてんだ・・・しかし足元はそれなりにイイな。

ジャングルだからか?


つーか抜き付け、なんて真剣のワザだろ。

宇宙世紀でもフツーの女子が実践できるまでの修練なんて積めんのか?


しかし、最初の一刀以後はお粗末なものだった。

めたくそに振り回してくるが、足を掛けてコカす転倒させる


リーゼは70トンに届くか、てくらいの構造物にしちゃあやたら身軽でその重量のほぼ全ては関節に使われているせいかこうして倒れたり転がったり、数話前の俺のようにデブリに激突を繰り返したりしてもなかなか壊れない。


「おまえ、カレシに振られたのか?」


『なっ、何ッ!振られて等いな・・・あっ!』


「イキ声あたりで喋らんと男は騙せんぞ・・・気を付けろよ」


つーかトラの声出したりすんのマジで止めて欲しい。

ゼッタではないが・・・


『ええい、死ね!』


樹木を巻き上げながら立ち上がり、斬りかかってくる。


うーん、これは・・・抜いたほうが危険だな、などと完全舐めプモードに入ってしまう。


振り上げたタイミングで踏み込み、間合いを殺す。

腰を入れて両手で掌底。


剣道で一番強いワザは、って聞いたら体当たりです!とドヤってた友人を思い出す。

そいやホッケー部も殴り合いとか痛くてイライラするだけで全然決着つかないとか言ってたっけ。


怖い・・・


ぼよん、と重いウレタンバリアをド突いた時のような手応えと共に後方へ跳ね、再び倒れるゼッタ機。


うーん、やっぱ大地なら楽だなコレ・・・重力と足場あるだけで全然無敵になれんじゃんよ。

無重力のケンカ(やられっぱ)も糧になってんのかなあ。



「なんで振られたか当ててやろうか?」


実況共に上から目線ですまん・・・ここで逃げたら付きまとわれて埋めるハメになりかねんのよ・・・


『グッ・・・振られてないわ!好きすぎて、互いに好き過ぎて居られなくなったのよ!だから・・・』


コレてフラれ奴の定番セリフだろwww


子供ガキっぽいと振られたか」


『そんな風に思ってたの!?』


・・・・・・・おい。


「・・・エアカレシか」


『』


前世ならうんざりパターンの筈が、このジュリアンは女に対しては底なしの器を持つのか、目の前のフランセット(機乗中ではあるが)をキッチンペーパーで丁寧に包んでやりたくなるような気持ちが湧き上がってくる。


キッチンペーパー・・・で女包む、てなんやねん・・・・宇宙世紀の慣用句かなんかか?食欲に掛けてんのかな。


起き上がってこないフランセット機にコクピットを寄せ、ハッチを開く。

ハイもらったぁあああ!死ね!!・・・などということも無く、向こうもハッチを開けていた。


飛び移り、シート(さっきのハマミ機もそうだったが、なぜ女はシートとモニタを持ち込むんだ?)の上で丸くなり抱いたヒザに伏せた頭からメットを優しく脱がす。



頭と背中を撫でながら引き寄せる。

すんすんと鼻を鳴らしながら涙でべちょべちょの顔を救急ガーゼでぽんぽんと拭う。



「フランセット・・・哀れな女。おまえの男に撃墜されたら『ゼッタに・・・あのとき抱いてやれなくて済まなかったと伝えてくれ』なんてオマエに会う迄ジツは処女でした系の定番かませ退場セリフまで準備してたんだぞ」


「ぐすっ、ふふ・・なにそれ」


「ロボットモノのイチャコラシーンあるあるなんだよ。この作品だと・・・コッチの大佐、ホワイトつったっけ?奴がユーミに撃墜される時のセリフだったなたしか」


なんか鏡餅みたいな変形リーゼに乗ってたんだよな~懐い。


「リリアンさんが紹介してくれたの、彼だった」


確信犯か・・・リリアンめ。

いや、俺の不徳かwww


「あー・・・なんだよ、ベッドには引き込めなかったのか?」


「なんでわかるの?」


「いや、わからんかったけどわかったぜ」


哀しいやつ・・・

それとも庇護欲を誘う芝居なのか?他には抱かれたのはアナタだけ系の・・・


ゼッタは視線を上げ、俺を責めるように見たあと、伏せる。

伸ばした手も、下がり袖を掴むにとどまった。


うーん・・・無いか。



「もうミョーな背伸びはするな。今日みたいに変なことになるだろ」


「だって・・・」


「戻って来い」


「・・・うん」


胸へ抱く。


去った妻と、戻ったおん・・・うーん、前世では居なかったが若いカノジョが出来るとこういう気分になるのか。


・・・いやいや、エンリカの方が若いから。



あぶねえ・・・・



しかし大学に合った江戸時代の風俗日記、もっとまじめに読んどくべきだったぜ。

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