月のうさぎ側

「な、なんだこりゃあ・・・」


ダグザの駐機所に巨大なうさ耳をもつ小型のリーゼが鎮座していた。


え?ああ、そう、おもちゃ屋スポンサーのロボットモノだから期待IPはロボがメインだ。

なので作中の敵側ダナンには新規IP生産工場のように次々と新型と言う名の税金対策やホモロゲ納入資格条件獲得の残り香・・・余剰製品、テストどころか何も考えずにアセンブリだけTUNAGEてみました的な投げ遣りの棺桶相当品が続々と投げ込まれてくる。


そういや劇中ジュリアンはほぼ毎回新型で調子よく出現してきてかませ順当に撃墜されるがそのなかには機体トラブルがかなりあった気がする・・・しかも優勢時には必ずといっていいほどのファンブル発生率を誇っていた。


ちなツァイレグナとかハンビオンとかガムダルてやつですスイマセンまじではやはり作品世界において主人公側の象徴的機体ということなのかひっこめられてしまった・・・ええ~~~めたくそ強かった(最下位奴のおやじが)のに。


まぁ前世でも一般ぴぽーがNSR500とか渡されてそこらカブより速く走れるかつったら・・・いや、原チャよりかは流石に速いだろ・・・いや前世メタはいーんだよ。


「これはメレッセ伯!」


茶髪・・・ブルネットつーの?

なんかナウ〇カみたいな()髪型のキョニュウ美女がやってきた。

無論、顔は見ない。


「ジオテラーでダナンを担当しておりますアニー・ハミルトンです。どうかお見知り置きを」


アニー・・・ダイナマイツだぜ・・・


グリーンの光紛と共に宙空から名刺を取り出し、両手で捧げ視線を遮る。


「ああ・・・ジュリアンメレッセだ」


取る。視界が回復する。


「社より顧問としてダグザ、ヌアザへ乗艦いたします。御用の折はどうか遠慮なく」


「ああ・・・じゃ早速こんば・・・いや」


視線は引きはがせないので仕方なくカンだけで新型(かもしれない)リーゼを指す。


「コンバート用の機体か、アレはなんだ。うさぎのお化けみたいなリーゼだ」


「ハマミ中尉の専用機として、先ずは当社が先鞭をつけるべく用意した特別機ですわ」


専用機??!!?!??!ハマミのクセに?!?!?!??!?!?!!??!?!?


俺は強烈な嫉妬という差別感情に猛り上がった。


専用機・・・そういえばジュリアンには専用機など欠片も用意されなかった・・・な・・・


今、俺は真の意味でジュリアンを憐れんだ。

いままでのなんとな~く後ろ暗いな、といった教育や倫理や宗教観からの支配による虐げられ系の呪縛ではなく、本心からの強烈な嫉妬により形成された巨大な同情としてめたくそ憐んだ。


涙を流しながら。


「泣いておられます・・・」


「ああ・・・アニー、女のおまえにこの涙の意味、わかるまいな・・・」


「はい・・・、しかし、女なればこそ卿の心、お慰めすること能うと感じるのは不遜でしょうか」


「いや、オマエにはその資格も、才能もはちきれんばかりに備わっている・・・行くぞ」


埋まる。


うーん、善き哉。

前世でも、ブラが大きく谷間を開けているのはこのためではないか、と感じるほど谷間と顔のフィッティングは絶妙だ。

この二つのやわらかな球体に挟まれば、男の苦悩のおよそ九割九分五厘八毛は消滅する。


「おいジュリアン、いくぞ!」


誰かが出撃していった。


ブースター無しだからもーみんな適当にダラダラ出ていく。


「ありがとう、ミス」


「アニーと呼んでください」


「おれもジュリアンでいい。もし俺が生きて鬼頭・・・帰投したら、部屋を訪ねて欲しい」


「ご武運を」


チュー。


俺の機体、ゾカ・ツァイに飛んでコクピットから見下ろすと、ハマミがアニーに抱き着いてアタマに胸を乗せていた。


わからん・・・


ハッチを閉じ、発進する。


「出るぞ」


・・・誰もなんも言ってくんない。


ほよ~ん、と飛びながら白と黒、光る月の大地とソラの黒さのツートン世界へ出る。


あー、やだな~・・・現場ついたら敵全滅してたとかねえかな・・・


確かエンリカと歴戦の勇士で守ってんだっけか、向こうは。


「来たか。おそいぞジュリアン!攻撃開始」


はじまってしまった・・・


月は地球と違って全球のRがキツイからこんな低く飛んでると・・・


「うお!」


視界が真っ白に輝いた次の瞬間にはコクピットシェルだけで宇宙空間を突き進んでいた。


体感Gからくるくるむちゃくそ回転してる気がするが、視界は進行方向を前にビシッ!と安定している。


振り向くと、輝く大きな月がどんどん遠ざかってゆく・・・


「美しい・・・」


そおいや二クール目から番組開始のイントロで宇宙空間をパイロットスーツで漂うミイラが毎回出てくるんだよな。

うをーめたくそリアル!とか喜んでいた前世過去の俺よ。

自分がそのリアルになるなんて欠片も考えて無かったろ、幸せな奴め・・・


『こちらダグザ、目標ドックの消滅を確認・・・何が起きた?!』


『ジュリアンが・・・いや、わからん。ジュリアン機がロスト、これより帰艦する』


「こんにちわジュリアンです、誰か助けて」


『どこだ?!なぜ生きている?!』


「生きてちゃ不味いのかよおい!」


『通信できるってことはシェルは無事なんだろ、そのまま飛んでけばダグザに戻る筈だよかったな。切るぞ(ブツッ』


ルフィのやつ・・・なんか冷てーな。

怒ってんのか??



シェルのまま宇宙空間を漂う不安よりも、戦場を離れられることが嬉しかった。

俺はエアコムを取り出し、ライザと飲んでヤった45分後見つけたネット小説サイトをひらきブクマを読み始めた。


しばらくすると、着信に気づく。


「んー?フランセットから??」


女て別れても離婚しても全然フツーに連絡入れてくるのなんなんホント・・・あ、おれもしてるわ・・・


空けると「カレシがコッチにもパーソナルマーク送れってさ!常識だろつって怒ってるよ(怒」とある。


えー・・・・・めんどくっさ・・・三色でフランセットのアニメ風正面顔とゼッタ命っつーテキストを組み合わせた図案を作成しAIにアウトライン仕上げにさせ装甲データ系のフォーマットにコンバートする。


えーと・・・「ユニオンの平面多いデザインにマッチする傑作が出来た。この図案を拒否すれば臆病者として永久に宇宙検索ゴグールに残ると思え」・・・送信、と。


秒で帰ってきた。


えーと、「これは貰うけど別なやつお願い」・・・いや、男にわたせよなんなん・・・


ヤル気を無くしたので茎をアンフィニの形に結んだ水仙の図案を送信した。

今度はおkサインがきた。



なんかこういうの懐かしすぎて気が遠くな・・・


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