カラオケ

「いやーローコード鳴らせるだけだぜ」


じゃら~んじゃら~ん・・・

あー、びっくりした。


「ソレを弾けるって言わない?」


うーん・・・


「・・・例えば、ちんこむりやり押し込んで『このあとどうするんですか?』ていう男と同じ階梯だ」


「このあとどうするんですか!?!?!そんなん会ったことないよ!!!」


めたくそビックリしている。


歌舞伎町のマッカでポテト食いながら隣の席の話を聞いただけだからな・・・実在確率は半々だが。


「このあとどうするんですか・・・ええ・・・・・なにがしたいの・・・・・」


「おいおい、妄想で当事者になるな。戻って来い」


そう、何がしたいの、と聞いたらセックスと言われ、沈黙するしかなかった・・・という内容だった。


女子のあるあるネタじゃあないのか。


おれも初体験は苦労したからな・・・丸めて押し込んでみたり・・・


今振り返ると・・・同じ初心者()なのにめたくそ気ぃ使ってくれてたわ。

せめて今世は女にやさしくしよう・・・・・ん?エアコムに着信・・・ゼッタからだ。


えーと、『彼氏に伝えたら送った図案を機体のパーソナルネームにしておけ、だって☆心置きなく死んでね^^^^^^』




遅かったか・・・・・・



つか失恋だの自殺だのという妄想はなんだったのか。


図案は目・・・イーグルアイ?

おれそんな目良くないんだが・・・えーと『こんな目立つの付けたら多分すぐ死ぬだろうがありがとな・・・見せてもらうぜ、新しい男の甲斐性ってヤツを!』・・・送信、と。


添付ファイルを個人ミッションファイルへ移動。

リーゼの装甲スキン、パーソナルマークフォルダへ放り込む。


はぁ~~~・・・・・


「なにエアコム見てため息ついてんのよ。カラオケブースなんだから歌いなさいよ」


「ん・・・そうだな。じゃあ松任島ゆきみの鋼、と・・・三度、じゃない3フラットで・・・よし」


「キー下げ・・・日和りやがったか・・・」


「日和るてww意味解って言ってんのかwww」


あー、前世のボックスでキー下げるハマミをコケにするときよく言ってたわ・・・


「形勢を見て立場を決めようと退がるとかそんなんでしょ、始まってるわよ」


なんだつまらん。


鼻腔の肉を震わせ歪を乗せた声でまっすぐに朗々と歌い上げる。


もう前世と同じような年齢のハズだが、絹のように滑らかに煌めくディストーションボイスが自分で出していながらめたくそ気持ちよい。


ハマミも自分の曲を選びながらもご満悦のようだ。

聞いてるかどうかは声の抑揚に体がついてくるからよくわかんだよなコイツは。


・・・あ!白人だしパワー系のざっくりディストーションでハリ上げ全力シャウトイケんじゃね?!?!?


いくぞ!!!!!





気絶したハマミを医務室へ輸送中、ルフィに見つかり俺はしこたま殴られた。


すっかり殴られグセがついてしまった・・・


共にハマミをメディックへ預けた後、あえてキュアキュアを掛けず腫れ始めたカオでルフィを睨む。


「・・・?ああ、ちょっとこいよ」


「まだ殴りたんねーのかよ」


「いや、そうじゃない」


ハマミの・・・主のいない部屋へ入る。


俺をチェアへうながし、自分はベッドへ尻を落とすと、ルフィは俺を見て言った。



「おまえ、ハマミのなんなんだ?」



レイジんときもそうだったが、あえてそう聞かれると虚構演出っぽさを強く感じ片口端で笑んでしまう。



「前世の夫だよ。俺の名は鮎崎拝次、ハマミを殺した男だ」



また俺の名は、とか言っちったw


・・・俺は今どんなカオをしているんだろう。



「・・・なぜだ」


「いろんな何故、が見えるぜ」


ルフィはそうだな、と溜息をつくと酒とグラスを取り、俺に注ぐ。



二人でグラスを鳴らし、飲る。


やる、という当て字も前世では無駄な気取りに思えたが、いざ酒を覚えるとそういうものだ、としか感じない。


カテゴリが趣味など感興を得るための行為となるから、かな?


セックスも入れようぜとか挟ませてとか言わんのと同じ・・・かなあ。

やろう、しよう、のが使い易いし誰も気取った言い様とはとらない。


でも酒をしよう、てのは違和感あるな・・・いや、カワイイ女の子がグラスとボトルほっぺたに付けながら「しよっv」・・・いいのでは?



「・・・なぜ殺した」


「俺が弱かったからさ」


「意味が解らん」


「うーん、自分の弱さをクドクドと開陳すんのってどうなん?」


「酒が不味くなるだけ、か」


「お巡りさんとかならわかりそうだし、督戦部とか警備課に聞いてみれば?」


「俺はそのお巡りさんやってたんだが・・・言ったよな?」



はぁ?



「初耳だが」


「そうか?・・・ハマミを引き合わせてもらったとき、SPの真似事をさせられたとアピールした覚えがあるんだが」


「ナミとかつってたじゃねーか。漁師だろ?」


「そこからか・・・」



暗いルームライトに煌めかせながら額を押さえる。



「まあ、お巡りさんやってたんなら痴話喧嘩から殺傷沙汰なんて飽きるほど見てんだろ?同じだよ、同じ。追い詰められ、逆上して殺して通報、逮捕、起訴拘留テレ裁判三分で判決死刑即執行、て流れだったわ」


「出鱈目すぎるな・・・大地の時代の警察、法曹はそんなにも酷かったのか」


「ハマミはいいトコのお嬢だったからな。捕まった当初は前科無いからとか殺意はともかく殺す準備が無いし思うだけなら誰でも無罪wwwとかつってたんだぜ」


「ハマミは知らん、か」


「教えてもいいぜ。ただ・・・」



ハマミや俺はどーなってもいいけど、家が済まんからな・・・あ、でもかーちゃんに”看破されたら?”て聞かれた時ちゃんと”殺されんだろ”て答えた憶えあるし大丈夫な気もしてきた。


ルフィはぐい、とグラスを開け、注ぐ。



「・・・おまえもデカくなっちまったもんだ」


「そうだぞ。こんなぽこじゃか殴ってんじゃねーよ」


「ハマミは小さいんだ。感情の差分はお前が受けろ」


「そう言われれば、嫌な気はしない」



互いのグラスを鳴らし、空けると別れた。




今日もよく眠れそうだぜ・・・



============================


書いててコマ劇場があった時代のあのあたりを思い出してました(爺感

ええ~~~~もうみんなジジイとかババアとか少なくとも同じ年齢になってんのか・・・地上の星歌ってきます!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る