情感優先演出が贈る浅い世界へようこそ

静脈の血だと思うけどカメラだからな・・・

つーか傷痛むのて半分くらい血の所為じゃあなかったっけ。


「あれ、マジに痛てーんじゃね?パイセンどう思う?」


なんか震えてる。

怒りに我を忘れたか・・・パパラッチは芝居の場ではござらぬ!


「あの、怒るほどに・・・奴の術中にハマるだけですよ?」


思わず敬語になってしまう。

覗き見とはいえ、『おまえ・・・みているなッ!』って織り込み済みで煽られたらもう殺し合いしかねーじゃんね。


手の震え止まりました・・・キラッ☆www

被害者からしたらまじ憎悪で遊び倒す気にしか見えんもんな・・・


いまパイセンに核爆弾渡したらヤツの部屋へ飛んでって起爆するであろうことは想像に難くない。


デトキッシュケアケアじゃ無理か?

鎮静系て英語でなんつーのか・・・ケアフル?カーム??



「私は・・・俺はッ、こんな、こんな少女に、全てを・・・すまん」



パイセンは全身を戦慄かせながら自らの顔を覆うと、座り込んだままどっかの海溝へと沈没してゆく潜水艦がごとく嗚咽し圧壊を始めた。



は?



室内を見渡す。


パラパラといる尉官達はそれぞれ目を瞑り、また腕を組み、思い思いに何かの余韻をかみしめるように動かなかった。


俺はあわてて緊張感の抜けていた自分を繕った。



「ハマミのやつ、デカいもん背負いやがって・・・」



何人か女子が吹き出す。


やべえ滑ったか・・・


照れつつ音源を向くと、ヤツ等も如才なく泣き声にすり替えたらしく、隣の異性や同性士官に肩を抱かれていた。



え、嫌だここはやく離れたい・・・






「ジュリアン様、不味いです。上はハマミ中尉の粛清を決定しました」


マチスだ。

休憩室をソッ・・・と脱出した先で現れた。


「マジかよ、事故?失踪??無難に戦犯指定で処刑?」


責任能力系の議論はあえて凍結(いつでも負わせられるように)してるからソレが一番あと腐れ無いわな。


つか、不味いとは?


「その処刑の手を完全にふさがれました。スキャンダル映像見ましたか?」


「あー、アレか・・・」


「アレで世論が公女擁護に沸き立つのは確実です、ここで処刑などしてはオスギデスの件が」


「おい、迂闊だぞ」


ばっかおまえ下手に口滑らせたらダナンが羊になっちまうだろ、自重しろ。

それにあんな三文芝居で世論が変わるかよ・・・いや、変えるのか?

悲劇のヒロインとしてプロデュース・・・歌って踊れる(60代のボ・・)救世の姫君、CD(ろk)とか出して・・・ザイオンから離縁して完全にコッチ側の偶像にしよってのか。


「ハッ、これはとんだ失態を・・・しかし不味いです」


「何がどう不味い」


「ヴェーダに始末を任せようと、ツァイとエンリカ脱走兵を保護している航宙巡洋艦ヴァルナに使者として送り出すつもりです。挑発的な親書を添えて」


親書・・・トップ同士で王様気分かよw


「挑発・・・ああ、窃盗犯の家族てココの入植者か。そういや劇中で人質・・・引き換えてハマミをそっちで殺せ、か」


「あからさま過ぎます!我々はこのままでは世界を救う少女を見殺しにしたと・・・」


「おいおいおいおいおいおいまてまてまてまてまてまて」


佐官が虚構に振り回されんな。

さっき発現した脳力・・・神聖魔法カーミィをマチスにかける。

途端に落ち着く。



「・・・は、失礼したしました。小官はなにを・・・」


「イノセンやエンシェンがハマミを救世くぜ少女としてプロデュース決めたけどダナンはそんなんふざけんな認めない!とヴェーダに殺させようとしているが汚名はダナンにくんだろヤバイ、でおk?」


「はっ、その通りであります」


そんなんどーだっていいじゃん・・・初任務のうんこ漏らしの烙印より重いのかそれ?


「いいか、ハマミを使者に抜擢するのは大衆感情対策的にもまったく合理的だ。自らを犠牲に平和を望む姿。むしろ殺された方が人気がるだろ、そんときゃこっちは洒落た弔辞でもペロリと出しゃ恨みなんて全部ヴェーダに行くって」


哀悼の意とか言いながら祝砲撃ちまくってダナーンズ人気爆上がりよ。

つーかなんで俺が幼年番組向けの悪代官みたいなセリフ喋ってんのよ・・・『ククク・・・望み通り宇宙の為に死ねばよい』


「そうでしょうか・・・小官は不安であります」


「不安はわかる。正直、宇宙の救世主なんて看板を奴に渡したら・・・」


・・・ポイ捨て確実じゃん。


「別にダイジョブじゃね?」



「・・・・」



「とりあえずマチス、おまえはハマミに拘るな。距離を取れ、自分のシゴトを思い出せ」


「は・・・」


「マシューパイセンもそうだったが、ひょっとしたらお前も魅了され取り込まれちまうかもしれんな」


「マシュー大尉でありますか。ダナンの中ではハマミ中尉に対しての敵対心は最上位だったはずですが」


「さっきあっさり転びやがった。いいか、これだけは肝に銘じて置け」


マチスの肩を掴む。


「ハマミの言葉に意味は無い、ガキの癇癪と同じだ。ヤツを見て心がざわついたら子供を思い出せ」


たのむぜ、と言い残し便所に駆けこむ。



あー、ギリギリだったぜ・・・・




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