食い倒れ横丁

俺ら酔っ払い三人はプラセボ飴を噛み潰しながら回復卿神聖白魔法デトキッシュケアケアで酔いを抜き、実機テスト会場・・・まあ、そんなもんか。へと向かう。


パイロットスーツへ着替え、制帽を被り会場()へノロノロ歩いてると、ガニ股でよろろ~~と歩いてるハマミを発見。


「おい、ハマミ!ヤりすぎだろおまえ・・・」


「あぁ、ハイジ!、ちょうどよかった、背中っ、背中貸して!」


はいはい・・・と前に回り背を見せてしゃがむ。

・・・あ!本名言ってんじゃねーよ・・・泣きそう。


「あ~~~~~~~~もう、ひさびさに女に戻れて大満足・・・」


「そうか、よかったな。俺はしばらく男の本業からはおさらばだわ」


耳元のハマミの吐息や背中の体温の心地よさがなんかひたすらに悲しい。

こんな愛しいのに、なぜおまえはあのような・・・


「ルフィはなんで一緒じゃないんだ?」


「なんか別任務があんだって~~~ハァ・・・」


「・・・でもよ、なんでアイツあんな強いの?」


「そいやナミで柔剣道とか言ってたな。ナミてなに?」


「波・・・漁師だろ」


「ああ、それで・・・」


宇宙世紀の漁師は職種が違うのだが。

真の意味での漁師は密猟者しかいなくなってしまった。

三人でハマミを気にしながらルフィを持ち上げつづける実のない会話を楽しむ。


駐機場に到着し、スクリーンの前に雑に並んでるパイプ椅子へと思い思いに座る。


離れたあたりに着座していたエンリカと目が合うが、僅かな笑みを交わし合うだけでどちらからともなく外らす。


うーんこの喪失感・・・殺人や刑死、宇宙戦闘機による実戦を経て尚、こういった穿たれた心の寂寥には耐えられないものがある。


誰もが経験する、心が寒いって比喩表現はほんとマジで胃とか肺のあたりですべての細胞の(割愛)電子の回転が停止したのではと思うくらい暗く冷たく、それでいて虚ろに乾いた飢餓のナニナニが~とかネガティブな修飾表現がひたすらに続いてゆく果てのない寂しさ。


俺に戻れと、みーちゃんの失恋を希わずにはおれな・・・あれ?そういやエンリカて最終的に脱北先のヒゲ船長と仲良くなんじゃなかったっけ?いや、その前にギルベルトとかあっちの総帥のブルーレットとか・・・おいおいヴェーダは男食い倒れ横丁かよ勘弁してくれ・・・



安全運転講習の短いやつみたいなのが終わり、エンリカが二三の質問しておわった。


質疑の内容は


Q「新型見られたらどうすんっすか」


A「気にするな」


Q「居住区域に落ちたらどうすんっすか」


A「落ちるな」


だった。



なんかハマミとエンリカがサバトだかミサだかの約束をしている。


浮き立つような笑顔で横を通り過ぎるハマミの肩を小突く。


「うまくやりやがって」


「ウフ、ありがとw」



ガニ股は回復したのか。

自機のツァイへと向かう。


あーあ、これからどうなんだっけ・・・これテスト中しょんべんしたくなって林に降りて用を足しているとこでユーミにパクられんだよな。


つーかなんで林なんかにいたのあいつ。


女でも埋めてたのか??


ありそうだな・・・高校生なんて男も女も原始人のように自分のだろうが友人のだろうが隙あらば入れたり食ったり・・・無論俺は自分の彼女一筋を守り通したが。


こっちは、て?

なろうあるある、ジュリアンの肉体、脳にひっぱられて・・・てとこかな。

下げチンの化身だから。


ハンガーの搭乗ラダーを掴み、上がる。


あー、憂鬱。


女に黙ってツーリングいく朝のような気分だ。


「ジュリアン様、ハマミが呼んでましたよ」


「はぁ?」


なぜ直接コールしない?


「前世のことで、だそうです」


マジか・・・


伝えましたよ、とエンリカは乗機へ向かう。


のろのろと下り、二つ向こうのハンガーへと向かう。


足が重い。


やっぱ殺されんのか・・・やだなあ。

つかガニ股んときのアレはカマかけだったんだな。


発砲音。


走る。遠い。


ハマミ機の前に、男が倒れている。

ちらりと背の血痕から無力化済みと判断。


再び発砲音。


どこだ・・・降着ハンガーの搭乗ラダーをサルのように駆け上がり、コクピットを覗く。


血の海に倒れているおっさんとハマミ。


整備士らしきおっさんの手はハマミのクビを掴んでいる。


その手を蹴り飛ばし、足で胸を踏みつける。


・・・よし、死んでる。


白目を剥いて寝てるハマミの頬を叩く。


冷たい。


脈は・・・首を触ると、ある。

傷は・・・


「脚か」


スーツの股間付け根あたりに自分の手袋を丸め押し付け、死んでるおっさんが首にかけてた手ぬぐいで縛る。


「よし、コール緊急110、ハマミ少尉負傷、意識がない。大腿の動・・・内股左脚に裂傷。出血あり、担架をたのむ」


動脈なんか見えねーだろやばやば。

報告は正確にせんと。


「出血は?程度は」


「止まっている。が、圧迫で止まったのかはわからん。量はコクピットシェルの床が・・・丸いな」


言い淀んでる間で応答が来る。


『わかった。二分くれ。衛生兵を送る・・・が、戦闘はどうなっている』


「戦闘?テロかわからんが整備中隊のツナギの男なら二人無力化を確認済みだが」


『新兵が新配備のリーゼを・・・いや、わかった』


切れる。


・・・陽動の戦闘があったのか?エンリカは!


思わず立ち上がりかける。


・・・いや、ハマミが襲われるのを知っていた・・・てことだよな、俺をここに誘導・・・助けに向かわせ・・・いや、まとめて殺そうとした?

なぜ?

エンリカもテロに・・・


ああー考えたくねえ。


現実逃避を始めた脳に従い、視線を彷徨わせる。


ハマミの脚をしばった手ぬぐいの端に文字が縫い付けてある。


「お父さんがんばって、リエ・・・か」


そいやリエのとーちゃん行方不明なんだよなあ。


おっさんの名札を見る。


「山田重行。同姓同名じゃん」





え?まじ???


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