初陣

俺は今ヘッドギアに気密服で宇宙戦闘機に乗っている。


通称リーゼ、ドイツ語らしい。


エリーゼなど可憐な女性名を連想する印象だが、巨人とかそんなんらしい。


じゃあエリーゼは大巨・・・背の高い女性という意味なのだろうか?


それはともかく、巨人という通称の通り、この戦闘機は人型をしている。


むろんメタ視つか楽屋ネタとかで言えばおもちゃ産業ありきのスポンサー都合なのだろうが、世界設定的にもそうらしい。


ザイオン公家筆頭にあったドギュン・ザイ公王が歩兵の強化スーツをデカくして古代の騎士や戦車の形状をモチーフにした趣味性の高いカタチに装甲せよと厳命したらしい。


ここまでらしいが何回出たかは数えていないが、ライカンスロープ系に転生したなろう作品に出てきた同じ名前の魔法少女を思い出して非常に和むのでらしいはこのさきもバンバン使ってゆこうと思う。


ともかく、公王の趣味でアーキテクチャ、論理構造というか基本様式というか基礎形状を決められてしまい開発は難航、混迷を極めたらしいがヤマダ理論と四肢による慣性コントロールは無駄に相性が良かったらしく、宇宙の長大な距離をものともせずに重要拠点や施設、工業地帯にふらりと現れてはそれらを完膚なきまでに破壊し制圧、または速やかに去ってゆく上に光等電磁手段の索敵には目視距離に突然出現する、という悪夢のようなミラクル戦力が誕生してしまい、それを擁す軍事国家として地政学つか宙政学他人は全部敵に則り地球圏及び内外惑星系へ侵略戦争を開始してしまったのであった。


しかしそれは古き異能の血をもつ一人の女がユニオンに付いたがため侵略の塗り絵を悉く白地に戻され、国は解体されてしまた。


ヲワタ。


家と、ひとりの少女を残して。



なんのハナシだったか、とにかくその少女は物語中盤くらいにザイオンの亡霊とかつって登場すんだったと思うが今はどうでもいい。



「おいジュリアン、ついてきているか」


「ああ、おまえの右後ろだ」



なんというか映像演出的に楽であろう距離に密集しつつ、俺ら新兵は量産型マスタリングモデルリーゼのハイン・ツァイで宇宙を駆けている。


主役メカのガムダルからかっこいいパーツをはぎとった感じの、いわゆる雑魚メカだ。


ガムダルを売るためにはブランドやシリーズ形成の為雑魚メカも必要といい加減なモックと最小まで工数を削らせた金型で作ったザイオンのゾカというT34みたいなデザインのリーゼがバカ売れして、このトゲとかはなんだったんだ・・・とガムダルが嘆くという漫画を思い出しつい笑ってしまう。



「余裕ね、ハニー」


僚機のフランシーヌ改め、ゼッタからだ。

緊張しているのか、僅かに震えている。

勃起案件だ。


「ああ、ちょっとな」


友人恋人とはいえ公的な付き合いがある二人には前世ぶっちゃけはしていない。

組織を不安に晒す異物として排除される危険が具体的に存在するからだ。


作中、ニュリンク(差別属性)という宇宙に対応しはじめた人類の突然変異種を覚醒してゆくギルベルトとそのハーレム要員にて描かれてゆくのだが、ユニオンやヴェーダ(ユニオン側の企業他財団の出資で運営される思想系武装組織)に現れたニュリーン(単数形)は悉く捕縛、収監されティタン・・・じゃなくてなんだっけ、ホラ、ギリシャじゃないどっかの神話系神族亜目神族科の総称で・・・いいわめんどくさ。ともかくゼットガムダルの敵側の研究機関で実験の素体とされてしまうのである。


「ジュリアン、敵や粒子砲弾は貴族サマだからって気にしちゃくれねえぞ」


「ああ、貴種だつったって泡沫の方だしな・・・っと!」


ヤマダ粒子警戒アラート、直後にGが掛る。

オートパイロットが回避行動。


今まで自分がいた空間を青い光が貫いてゆく。


「接敵だ。・・・えらい遠くから撃ってきたな」


変わらずに落ち着いたルフィの声。

こっちは死んでいたかもと心臓バクバクでビビり上がってんのによ・・・


「見えないな・・・見えなきゃ当たんないんでしょ?あっちは見えてんの?」


ゼッタは緊張がとれて、完全に仕事モードに切り替わった感じだ。


「・・・よし、撮った。機影五、共有した。行くぞ」


「え?ゴキ??」


思わず反復。


「じゃああたしが五つ相手にするからあんたたちは遊んでて」


ゼッタ無双系ヒロインかよ・・・


「四機撃墜、ジュリアン、行ったぞ」


は??まだ三秒くらいしか・・・


オートが二回、回避行動をとったのはわかった。

二条の青い光線に挟まれたところに、目の前に敵性リーゼ、ゾカ。


「はわわ」


オートの、こちらの自動回避行動の間隙を射すように、目の前のゾカが向けるライフルの銃口が光る。


反射的にブースターを最大出力へ、粒子サーベルを引き抜きながらすれ違う。

重力機関の共振か、伝達物質も無い宇宙空間で巨大な質量が遠ざかるのが振動で判る。


「あっっっ、ぶなー!」


ゼッタの声。


視覚系アラートがグリーンに変わる。

変わってから、赤い警告色が瞬いていたのだと気づいた。


「は?やったのか??」


「もう、へんな機動しないでよ。一緒に撃つとこだったじゃない」


ゼッタの物言いが入る。


「ははは、グラビティソードなんて前大戦でもナミエ以外使ってんのみたことなかったぜ」


快活に笑うルフィ。ビーム剣てそういう扱いだったっけか・・・?


「・・・漏らしたかもしれん」


「マジ?」


「大か?小か??どっちにしても、火星廻るまで月へは戻れんぞ。やっちまったな」


「アメリアへ送っちゃった・・・帰ったら人気者だねユーリ」


「ゼッタ。終わったらシャワー前にお前の部屋いくわ・・・」


「汚物は消毒よ!」



この後、間髪入れずにお約束的に表れた第二陣にこいつらがやられ俺だけが生き残るなんつーこともなく、俺はユニオンネイビーでの初任務を最終任務とする決心をひそかに固めたのであった。


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