本編最終回の一シーン

決戦アオバQ

白人文化圏の古城を模した室内に剣撃の音が響き渡る。


「やはり白人の剣術はサイコーですわね!こうしてカンカンキンキン刀身をぶつけ合って斬り合いが出来る。なぜか言葉遣いもお嬢様ぽくなってしまいますわあ!」


「クッ、女の細腕ならばと・・・ゴリラかキサマはッ!」


「わかるわかる、わかりますわよ~~~wあたしに竹刀剣術で負けたルフィなんて未だに『女に負けた』と言い続けてますますハゲてますものw」


どうせ『女』が『ナミエ』に変わることは無いのでしょうけど、と継ぎつつ女の左腕にあるマンゴーシュ短い方が男のエストックに火花を立てながら絡みつくと、右手のレイピア長い方が閃光の嵐となって男のヘッドギアを穴だらけにする。


「あら、さすがに頑丈ですわね・・・剣が潰れ・・・ひゃっ!」


男の膂力まかせの横なぎにより女は絡めとっていたマンゴーシュごと壁に飛ばされてゆく。


「クソッ、キサマさえ・・・キサマさえ殺せば人は宇宙へ飛ぶことが出来る!」


裂帛の気合と共に突き込まれた剣先はナミエの髪を数本切りとばしながらも壁に突き立つに留まった。


「そうね~、別に大地は人間なんて、生命なんてなんとも思ってないけど、あたしは許さない」


女は顔の横に突き立った刃に写る自身を見ながら、平らな刀身の剣を壁飾りから抜き出す。


そのまま上段からの切りおろしを男は刺さったエストックを捻り盾にして防ぐ。

が、腹を蹴られ、部屋の反対のカベまで飛んで行く。


「地球圏を離れて繁殖など、輪廻から抜け出る行為。生命そのものである私が許さない。あたしから孵ったものはあたしに還れ!そしていまは絶好の刈り入れ時。三百兆人の命、ごちそうさまでした!」


「ええい、イカレ巫女が!」


切り結ぶ二人。体格の差はあれど、鍔迫り合いが拮抗する。


「あたし、両刃の剣は初めて。こうして口金で押し合うと片刃がこちらに向いて怖いわ」


「オスギデスの落下もお前の仕業か」


「ウフ、人の世ではあたしは只のパイロット。白人文化に夢を見る黄色人種の少女に過ぎないの」


「戯言を・・・」


拮抗が崩れ、またしても男は壁に向かって弾き飛ばされる。


「あたしにとっちゃそっちのが戯言だっての。サンドボックス砂場の縄張り争いなんて興味ないわ~・・・散った命は有難く頂くけど、ねw」


バイバイ、と手を振りながら女は踵を返した。


「まて、逃げるな!」


「あのさー・・・イイ男のクセにこんなロマンチックな部屋で女として扱うつもりも無いのに引き留めるなよ。殺すよ?」


そう言い女は剣を逆手に持ち、剣先をもう片手の掌へ押し付ける。

剣は紙のようにクタクタと畳まれてゆき、男は唖然となる。


「あっ!・・・すごいコレ、割れも曲がりもせずこんな奇麗にクタクタになるんだ・・・これ名剣だったのかも」


あたしが名剣と思ってればこのままでも名剣だよね、大事にするから・・・と女ブツブツ言いながら去っていった。


「アレは・・・無理、か」


自分如きにどうこうできる存在ではなかった、リーゼの腕比べですっかりと錯覚していたのだ、と男は思い知った。


「何がムリだって?」


「うっ・・・ええい、お前を殺すことだ」


戻ってきた女にたじろぐ男。


「あたしは生命だから殺せるわよ。ヤバイのはあんたらの陣営にいるハマミよ。なんか演説してた子供」


「なにが危険だという・・・」


「あいつ死ぬとき、たぶんこの宇宙が消えるよ。・・・あっさり物理法則を書き換えてたし」


「なにを書き換えたというのだ」


「うーん、この次元の上・・・二次元?代数と幾何で抽象化できる部分だけど、サラッと重力の深さを増やしたでしょ。アレでヒトが掴める距離が大きく増えた・・・巨人化ね」


「ヤマダ理論?あれはヤマダ博士が発見し・・・」


「そりゃ発見したのはそうでしょうよ。今宇宙ではあの子を支えにして文字通り必死なつじつま合わせが行われてるの。フフッ・・・命も感情も無いコンピュータ宇宙が必死にって・・・じゃあね」


今度こそ遠くなってゆく靴音。





「ザイオンの忘れ形見・・・私の・・・敵が?」




頻発する崩壊と爆発に、思わせぶりに浸ってる暇はないと気づく三秒前であった。

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