ケーキィイイイイイ!おまえっ!!!!!!
絹のように薄く引かれたコーヒーの粉を、割れるチョコが僅かに散らしながらフォークが沈んでゆく。
土台のクッキーだかタルトだかを割り、クリームがゴッソリとアマーリエの口に消えていった。
一秒の間もなくガックリとうなだれていたアマーリエの姿が早回しで再生される植物の成長のように活き活きと起き上がり、甘苦の妙からくる官能に表情を蕩けさせる。
そしておもむろにぬらり立ち上がると青い静脈が透ける薄いマブタと色の抜けた長いまつ毛を僅かに開き、口元を緩く笑ませながら横目で俺の両隣に侍る女を見下ろした。
なんだ?突然何を勝ち誇っている?・・・頭がおかしくなったのか??
つか、食えるのかソレ・・・え?
「リィル、あたし悔しい!」
「ジュリアン様、わたくしにも・・・お情けをくださいませ」
縋りつくリエとリリア(ん)が切ない眼差しで見上げてくる。
集団幻覚中毒か・・・怖いんだが。
「おれも食いたい!せんせー!さきっちょだけでいいから!」
「あたしもー!さきっちょだけー!」
誰だ先っちょとか教えたのは。
子ども達がおれもあたしもと騒ぎ出す。
アマーリエがケーキの皿を高く掲げ自由の女神像のごとく勝ち誇っている。
まずい、極限下でのシェルターシーンあるあるスタンピードシーンだ。
たしか某学会の映画では集団セックスさせることにより主人公がたちまちのうちに暴動をおさめていたはず。
しかし子供にセックスしろつっても汚いとこ擦り合わせながら奇声を上げるなんて知能ある人間の行為とは思えない!とキッパリお断りされるだろうことは想像に難くない。
「しかたねーな、デカいケーキだすからおまえら水槽の方寄れよ」
たしか叙・・・・◎苑?で結婚式んときウェディングケーキをティラミスにしろとかつったらクソ長いテーブルに同じ形のクソ長いティラミスが出てきてハマミのやつが『ヤケクソティラミスwww』とか可愛く笑っててむちゃくそちんぽ勃ったんだよなあ悲しい・・・
あれ?叙◎苑は焼肉屋じゃなかったか?・・・まぁちゃんと式場だったしウェディングもやってんだろ(やってません)。
なにかの悪夢のように出現したデカいティラミスを切り分けつつ子供に食わせ、取り合いを仲裁したりペットボトル飲料を配ったり食いながら眠ったのを毛布の上に並べたりなんやかんやの戦争を潜り抜けガキどもの寝息をBGMにドアの前でレイジと死んでいると、突然ドアが開き、通路側に倒れる。
「赤十字救急隊です。救助に来ました」
「ああ・・・え?もう鎮火してんの?」
寝たままで失礼、と立ち上がる。
「いえ、衛星軌道上から強襲揚陸艇で降りてます。重篤な傷病者が無ければとりあえず月か小惑星ピーコデスの救急センターに搬送しますので、ゆっくりとでかまいません、搭乗に向かってください」
「子供が寝たばかりなんだよな・・・」
「十四人ですか。機動担架があるのでそれで運搬します」
「すまんな、救急に我儘を」
「いえ、要救助者に幼年が複数いると聞き・・・正直、しばらくはなにも食えなくなると覚悟してましたので」
「そうか。俺も正直、外の奴らをうらやみながら死ぬことになると思っていた・・・ありがとう」
自身のマヌケさでちょっとだけ味わったけどな。
なんとなく握手を交わし、担架の組み上げを手伝った。
俺らがグダグダ死んだりケーキ食ったりしてる内にザイオンの政権放送という名の犯行表明、ザイオン分家であるカン家の養子から公家へと戻った公女ハマミからの決戦宣言、ザイオンの火星条約を無視した重力機関の自爆攻撃による数多の艦隊と基地、コロニーの破壊、消滅などで一時的にユニオンの軍容が無力化するなどがあったらしい。
ま、あとは空の彼方でナミエとギルベルトが決闘して最終回だ。
俺らは安泰。ダナーンズなんかに入らず家を継いで女囲ってセックスしながら平和に生きるぜ・・・・・
オナ二ーで世界を救うのは、老人になってからでいいだろ。
第一部希望選士ガムダル編 完
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