クリームソーダ
冷たいモノが俺の口にやさしく入れられる。
一気に意識が覚醒する。
「みーちゃ・・・痛っつつ・・・・ああ、頭痛て―」
「こおり、まだ残ってるよ」
ええ、すげえいい子じゃねこの餓鬼。
俺ならぜったい一人で全部食って隣で倒れてるおっさんなんて見殺しにする自信あるわ。
「ん、みーちゃん飲んで」
「でも、おにいちゃん頭痛いんでしょ」
クソガキの気遣いが嬉しすぎて、一気に頭痛が消えて意識が多幸感にドブ漬けにされる。
エンドルフィンか、強烈すぎんだろ脳内麻薬。
妻が言ってたっけ、人は誰でもシャブ中、差別感情に鼻づら引き回されるだけのどうしようもなく愚かで救えない機械的な存在。
どこであんなコトバ覚えたんだろう。少女漫画か?
つくづく転生先が男子系虚構世界でよかったと思うわ。
「みーちゃんがそれ飲んだら、お兄ちゃん元気になれそうなんだけどな~」
なぜ自分が苦境にあっても相手を思いやれる人間は生まれてくるのだろうか。
なぜ俺らのような自分だけの人間に駆逐されない?
「・・・飲んだよ。こっぷもきえちゃった?」
「あー、なんか中身が減るのにあわせて小さくなってったような・・・幻覚だから?」
まぁ、動けるようになったし生き延びる方法を考えるか。
「よし!じゃあこっちのスミのドアっぽい切りかきを押してみよっか」
「うん!・・・開いたね?」
え?
涼風が入ってくる。
「わあ、涼しい~~~」
ああ、涼しいな・・・
背後からの熱風に押されるように、走ってゆくみーちゃんを追い足を進める。
「ジュリアン様!」
冷たく心地よい女に抱擁される。
リリアか。・・・こうして女を抱えてると防火シャッター他隔離系壁にほぼかならず付いてる通り抜けドアを虚構的演出感と自己犠牲により幼い命を守るという陶酔感に酔っぱらってすっかり失念し逆に殺しかけていたという迂闊さを嘆く心が慰められてゆくような気がする。
「みーちゃん!無事だった・・・なにこの血は!」
アマーリエもか。
突き飛ばしたし怒ってねーかな・・・
「んー、これね、おにいちゃんの」
「下着姿・・・あんたも!脱がしてナニしてたのよ!・・・それになにその流血?!」
「ははっ・・・ちょっと、な」
「おちんぽいぽいってクリームソーダ出してくれたんだよ!」
危険な単語を雑につなげるな!
二人の女が無表情になる。
リリア(ん)、おまえもか・・・・・
女的には何かソーダで共感覚できる触感でもあるのだろうか。
「ほんとにあんた何しにきたのよ」
「面目次第もございません」
「通用口に気づかず死にかけるなんてバカじゃないの」
「おっしゃる通りに御座います」
「おまけに、おまけに・・・この変態!」
「前世は全国民が完全変態(昆虫か)の国から参りました」
部屋に入る迄散々悪態をつかれた。
しかしなじるコトバにもなんとなく遠慮を感じる。
・・・フッ、めんどくせえオンナだ。
VIPルームのドアを開けると、開口一番レイジに宣言する。
「おいレイジ、悪いな。アマーリエは俺にホレたそうだ」
どーん、と衝撃があり何故か俺はドアから部屋を横切った反対側のカベに全身を強く打ち付け死亡した。
爆風か?!
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