悪の花束

「・・・これだけは答えてもらう。あなたはどうしてあたしを知っているの。私はただの保育士にすぎない」


コイツ俺のこと嫌いそうなのになんで何回も話しかけてくんの?

白人パワーか?世界全ての女が俺に興味をもっていると錯覚してしまいそうだ。


「おいおいそんな聞き方だと『あたしは悪と戦うセーラー戦士で完璧に庶民に隠れてるのになぜ正体を知っている』とか『実は貴族を抹殺するテロ集団に属してます』つってんのと同じだろ。・・・まあお前も長く生きないんだし教えてやるよ」


「殺害予告?それとも人の運命を操る神にでもなったつもりかしら」


「おいハイ・・・ジュリアン、あまり・・・言うな。ご婦人方が不安になるだろ」


睨むアマーリエと仲良くくっついてるレイジ。

うーん・・・かわいい男とイケメン美女か。

しかしよく敵意全開の女とくっつけるな・・・人徳か?アマーリエも突然手を握られてんのに当然てカオだし、面識があったりすんのだろうか。不満そうなのはレイナくらいだ。


「だってヒマじゃん。それになぜコイツがテロに関わることになるのか読めてきたぜ」


なんかガムダル設定資料集を読んでるときのようにワクワクがとまらない!

レイジは顔を覆う。


「できるだけ穏便にな・・・」


「ハァ?こんな美人が自爆テロに走る動機だぜ?酸鼻極まる臓物に塗れながら全身の体液を血涙として流しつくさなきゃすまんくらいの陰惨も骨頂の超新星爆発的悲劇に決まってんだろ」


両手でバンザイする。バンザーイ!


「ここにコドモがわんさかいるだろ」


「キサマ、やはり」


「ジュリアン、子供を使うな!」


なんでこいつらこんな仲良くなってんの・・・

レイナのほっぺたが爆発しそうなくらい膨らんでんぞ。


「外は建造物全てが一瞬にして蒸発し、大地の岩盤が溶ける間もなく気化してゆく灼熱地獄。当然シェルターの中は蒸し風呂だ。体積比で大人にくらべて小さい子供たちの限界は速い。外側の子供から一人ずつ死んでゆく。『せんせい、あついよ、たすけて』と哀願しながら。それを血の涙を流しながら一人ずつ見送るしかない、どうすることも出来ないアマーリエ。結局全ての子供はアマーリエの命を守る水袋として・・・ええと何人いんだ?いちにーさんしー・・・ん?おいアマリエ、そこの子供がなんか言いたそうだぞ」


チッ、と俺に舌打ちして子供を向いた途端笑顔になるアマーリエ。

殺し屋も脱糞しながら即死するくらいの険が一瞬に霧散し男ならず女までもが「お母様!」と叫びながらパイオツにしゃぶりついてしまう程の慈愛を放つカオが出現していた。


つーか女のがおっぱい好きだろ絶対・・・


「ミッくんどーしたの?トイレならせんせいと行こうか」


「みーちゃんがいない」


空気を叩く音が聞こえるほどの速度で伸びあがり、人数を数えるアマーリエ。


「ひとり足りない!みーちゃん!?」


「おいおいまだ十五分くらいあんだろ、慌てんなよ見てきてやるから」


「あたしが行くわ。あんたはここで子供たちの水袋になってて。これは命令よ」


「ちっ、俺はいまひとつ緊張感無いし連れてくか・・・おいレイジ、ご婦人方をお守りしろよ」


たぶん俺かコイツがいないとここ、VIPルームのドアは開かない。

返事を待たずに既に駆けだしたアマーリエを追いかける。


すぐに追いつき、並ぶ。

若い肉体はいいね~ほんと。


「保育士見るたびに思うんだけどさ、なんでそんな必死なんだ?」


「はぁ?必死じゃないとパスが繋がらないからよ!ひよこの群れだとニコニコしてたら一瞬で数人が消えてたりすんの!全身全霊で相手したってちょっとの私情でコレなんだから・・・いた!」


ミーちゃん、と叫ぶアマーリエを突き飛ばす。

うそだろ、こっち側で閉店ガラガラ~かよ!


なぜかドア向こうでしゃがんでいたみーちゃん(猫かよwww)はドアが閉まり始めたタイミングで立ち上がり、こちらに来ようとして、ころぶ。


ドアのレールに。


全力で加速。


減速しつつそれなりに余裕のあるタイミングでみーちゃんを拾い上げるが、振り返ると同時に重いシェルターのドア(一番内側に居たのがせめてもの救いか)が閉まる。


俺は叫んだ。




「トキィイイイイイイイ!!!!!!!!!!!!!」




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