イノセン

「オヤジにも相談したんだ。姉さんが怖いって」


「ああ・・・」


俺も出現したエスプレッソにザラメを入れながら相槌を打つ。


「そしたら『気づいてないのか?まとも普通人ぶっているのはお前だけだ』だって」


「あー、金持ちとかハイソな人間て変なの多いからな」


「ホワイトイノセンのお前が言うな!」


いのせん?フランス語か??

でもフランス語なら白は・・・ブローシェだっけ、とにかくホワイトじゃないよな。


「なんだよソレ」


レイジは無表情にカップにつかの間視線を向け、俺へと戻す。


「イノセンのメッセンジャーとしてツナギに来たんだと思ってたんだけど」


やっと本題に入れた、てカオだな。


「・・・ああ、そっちはエンシェントなんとかっつー古からの協商連合か!いや、そんなヤクザじみた政治がらみの動機なんてねーよ、ほんとに転生状態なんだから」


作中の地球系の組織や閥割りにホワイトイノセンだのエンシェントフェ・・・フェデラリー??だの色々あったっけ。


「信用させる材料はあるんだろ、まずそれを教えろよハイジ」


「まぁ・・・主人公の隠しエピソードみたいなの教えてもらったし、礼儀は尽くさんといかんよな、わかったぜ」


エスプレッソを吸ったザラメをカップからザラザラ~と口に流し込み、腕を組んで目を瞑りながらポリポリと齧る。


う~んこのメイラード様(女神)を丸ごと味わっている感覚。

視覚を遮断すると二倍くらい美味くなったような気がした。


そこから俺は、この世界が前世のアニメーション作品、虚構世界であること、これからのストーリィ、俺自身・・・ジュリアン・メレッセというキャラクターが辿る噛ませ犬系の運命などを雑に語っていった。


「というワケで俺は自分のオンナを次々と身代わりに殺し続けながらみっともなく生き延びつつも最終話から二話前あたりで虫のようにパッと叩き殺され舞台から消え・・・」


「おい!そんなことよりザイオンが小惑星を落とす?!この地上へか!」


「アッ、ハイ」


あ、そうだったわ。ヤベんじゃね?


「いま宇宙では両首脳同士和平の調印式が行われているんだぞ!中継もされてるハズだ」


あ、ソラではつったwww生ソラ読みじゃん耳福ラッキーだわ。


「そんな戯言、起こりえる筈が・・・」


レイジが件のメニューを操作すると、壁の一面に映像が映し出される。


”・・・ザイオン公爵家からは当主より三男まで全てが出席しております。今、この調印を持ちユニオンとザイオンは手を取り合い歴史という歯車を共に前へと進める・・・・”


「ほら見ろ、ザイオン家の当主が調印に来ているんだぞ、そんな戯言・・・」


”あっ?!・・・なんでしょう今の閃光は?何も映りません、機材の故障でしょうか”


「あー、ちょーど落ちてくるトコじゃん。この会談?式??て小惑星オスギデスでやってんだろ?コレが落ちてくんのよ。ここから第一部最終話まで一気なんだよな~つかドコに落ちんだろ」


つーか成人後適当に世慣れてから見りゃこりゃユニオン系の息がかかったテロシーンじゃんwガムダル深いわwww


落ちるときに母娘が蒸発するシーンがあんだよな、母親がリエ、とか叫んで・・・あ。


あの生足ミニスカエプロンドレス女じゃん。


思わず立ち上がった。




「おいおいここにいる奴らの生活圏に落ちるなら俺ら助かんねーぞ」

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