日常
「おいレイジ!一緒に帰ろうぜ」
速足で出ていくヤツに声を掛けようとした女を「悪いな」と遮り、横に並ぶ。
「気安く呼ぶな!なんのつもりだ」
「はあ?誰だって英雄の弟様とは仲良くしたいだろ」
レイジのカオが歪み、吐き捨てる。
「あんなの、ただの人殺しだ!」
うっ、胸が痛えww
「・・・そうか、実は俺も前世で人を殺しててよ」
「おまえ、おかしいぞ」
うーむ、言葉を選ばんとな。
前世と殺人の吐露、そんなパワーワードを雑に並べたらそりゃ頭の出来も疑われるわ。
レイジが立ち止まり、俺を見る。
「おまえ・・・ほんとうにあのジュリアンか?」
セリフじみた問いかけに虚構感がグイッと上昇しニヤリと唇が歪んでしまう。
「実は別人だ。俺の名は鮎崎拝次、20世紀の地球・・・ここじゃ中世か?から転生して来た。嫁殺して死刑になっちまってよ」
”俺の名は”なんて自己紹介するヤツいるかよ・・・自らの口から出たコトバながら失笑を禁じ得んわw
「大地の時代だと・・・国はどこだよ、言ってみろ」
「フッ、日本さ。黄色人種からなる単一民族の国家。お前らの故郷のハズだし知ってるだろ?つか五摂家とかまだあんの?」
あ、オレ居た時代でもなかっただろ摂家なんて。
まあでもみんなカンリョーとかなってたんだろうし同じだ同じ。
「それくらい調べればすぐ・・・いいよ、付き合ってやる。記憶喪失・・・転生してきたって言うなら土地勘もないんだろ?静かなカフェがあるんだ。ついてこい」
「マンガ喫茶ありゃそっち行きてーな」
「・・・そのマンガ喫茶だ」
「マジかよwww」
「嫌ならついてくるな!」
「嫌なワケねーだろ。場所だけでも絶対確認するからな」
歩きながらレイジの頭の上、青い空を見る。
「なあ、ここは地球なのか?国は?」
「・・・今は地球とは誰も言わない。大地、第三惑星のどちらかだ」
「あ~そういや作中だと”ダイチとソラ”で地球と宇宙にルビ振ってたっけな懐い」
清潔な街並みを歩き、遊歩道やら高架やらと複合的に絡み合った構造のビル群に入っていく。行き交う人々の姿形も7~90年台風でなかなか見飽きないが、やはり目が行くのは女のファッションだ。学校のリエという女もそうだったが、温暖な気候なのか開放的なコーディネートが多い。とくにあそのこキャミ女のぱんつ見えそうなスリット入った巻きスカート・・・レーヨンか?エロすぎる。
「ここは大地のミドラン・・・昔は合衆国と言われていたユーラシアにあるミドランという国のヌーレイナって街だ」
「ミドラン?・・・ああ、中国資本が入ってたからかwミッドランドwwwww」
設定作るときユニオンの母体は中国です的な流れを入れたかったんだろう。
んでスポンサーを降りたんだかパテントに入れなかったか流したかで今度はアメリカユダヤ方面からの経済と軍事の侵攻を受け日本諸共合衆国の一群にされチャイナから晴れて名実ともに中国、ミッドランドにされてしまった、なんて後付け設定をネット掲示板で見た覚えがある。
「中国、か・・・そんな言葉まで調べて役作りしてるのか」
コミカルな文字でマンガ喫茶と看板を出されたテナントへ入る。
「ロープレじゃねえって・・・って、日本語?!で話してる俺らwww」
看板の日本語目にしてから気づいたわ。
「ユニオンの共通言語て日本語なの?」
「日本語なんて言葉は無い。宇宙共通語だ」
「マジかよwwwキャニュピークィングリッ?」
「英語はできない」
「通じてんじゃねーかw」
10畳ほどの個室に入る。
なんのしゃれっ気も無い薄灰色のカベにうすく光る天井、ソファ二脚・・・二台と重そうな一畳ほどのテーブルの上にA4ほどの薄い本()が二冊おいてある。
テーブルを挟んで二人で座ると、本に手を伸ばす俺をレイジがじっと見つめてきた。
「それで、何の話がある」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます