ガッコ
「ふふ、あまり朝にふさわしい音ではありませんね」
挟んでいたハンカチを裏返し、弦とボディに吹き散った松脂を軽く拭いて返す。
「堪能した。新しい弦はなんでも好きなものを買ってくれていい・・・おい」
と、視線を投げるも給仕は眉をおろし曖昧に笑んで首を傾げるだけだった。
「あれwww」
貴族なら「ハッ!」とか「かしこまりました」とか「委細おまかせを」とか「ユアハイネス」とか「マ~~~~~ジェスティ」とかいう万能御用聞きやら下僕やらがいるんじゃねーのかよ誰かなんとかしろ助けて。
「お気遣いなく。変な・・・ステキな曲も聞かせていただけましたし」
「前世で好きだったロボットアニメの演出曲でな。二股主人公が女に揶揄われる度に流れ、少年だった私の心に深い思い出を刻んでくれたのだ」
思いがけずどっ、と楽団が湧く。
ヴァイオルとヴィオラが導入のアルペジオの輪唱をはじめヴァイオリナが胸を押さえ天を仰ぎながらくるりと回った後、マーメイド座りへと倒れ込む。セロも笑いを押さえているのかピクピクと微妙にボウを跳ねさせながらノェエ~~と悲恋の演出に力を貸し、残るセロ2は楽しそうに笑みながらオクターブ下の主旋律をピチカートとハンマリングでトリルしていた。
隙あらばノリかよwww文化が違いすぎるwwwwwwwwww
悲嘆のヴァイオリナに手を差し出し二人でクルクル回った後は転ぶまで楽しく適当に踊った。
出会ったばかりの嫁とよく踊ったことを思い出し、少し泣けた。
「遅刻でございますな」
「貴族の学校にも遅刻などあるのか?」
初老の運転手と爺や&ボンボンのお貴族風トークに挑戦する。
「・・・ジュリアン様はなんの遊びをされておるのですか?」
「そうか、俺はジュリアンというのか」
「記憶喪失でございますかな」
「そうだ・・・と言いたいところだが、乗っ取っているのよ。この少年のカラダをな」
「ハイスクールにもなってそのような遊びを・・・反抗期はもっとスマートに感情に従うべきと忠告しますぞ」
「フーム・・・神っぽい何奴はオネショティとか言ってたが、ウソが付けぬのか」
爺や(仮)は少し大げさにため息をつくと、なんかかっこいいつる草のデカいアーチをくぐり抜けめたくそ広い庭園の先の国会議事堂のエントランスぽいとこで俺を下ろし、去っていった。
「うっ・・・ジュリアン!君も遅刻か」
なんか声優みたいに商業声域(ただ一オクターブ高く腹式呼吸で声を出してるだけ。校長先生とかが演説するときの声)の聞いたことある声で話すヘンなヤツがいるぞとそこに向けば、そこには俺が一方的に知ってる人がいた。
「レイジ・ハムロ?!?!?!」
希望選士ガムダルの主人公、ナミエ・ハムロの弟じゃんすげえwww
着古したジージャンに黄色のトレーナー、ファッションまで完璧かよ・・・こいつ貴族だろたしか・・・藤原氏だっけ?
え?てことはジュリアンて第二部ゼットガムダルにでてくる主人公ユーミのライヴァルという名の噛ませ犬ジュリアン・メレッセかよ!!!!!!
死んだわ
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